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専門家に学ぶ!クリエイターのための著作権講座 第8回「音楽の著作権―実践編」

2017/12/22 コラム著作権

前回の「音楽の著作権―知識編」では、多くの楽曲の著作権はJASRACが集中管理していると述べました。しかし、音楽の利用においてはJASRACに利用申請するだけで大丈夫…という訳ではありません。
JASRACが管理しているのはあくまで作家の著作権(いわゆる出版権)のみであって、それ以外の著作隣接権、原盤権については別途対応が必要となる場合があります。

今回は、具体的に音楽をどんなシーンで利用したいのか、そしてそれぞれにどんな権利処理が必要なのか、例を挙げて解説します。
(以下、別段の記載のない限り「法」とは著作権法を意味します。)

JASRAC以外にも権利処理が必要なケース

結婚式で好きなアーティストの曲を使いたい場合~曲を流すだけか、ビデオ等の創作物に利用するのか

CDの音源や配信音源をBGMとして流すには、演奏権(法22条)を管理している者からの許諾が必要です。
一般的にはJASRACが管理している場合が多いため、JASRACに申請して使用料を支払うことが原則ですが、結婚式場の多くはJASRACと包括契約を結んでいるため、新郎新婦などの利用者が個別にJASRACへの手続きを行うことはほぼ無いと思います。

しかし、そのBGMについて次のような利用をする場合はレコード製作者に与えられる著作隣接権の複製権(法96条)が関係してくることから、JASRACへの対応以外に原盤権を有する者(通常はレコード会社やレーベルなど)から許諾を得る必要があります。

  • 披露宴で流す複数の曲をCD-R1枚にまとめるために元のCDからダビング(コピー)する
  • プロフィールビデオやエンドロールムービーの中で利用する
  • BGMが流れている状況をビデオ録画する

ちなみに、原盤権には作家の演奏権に該当するものは無いため、BGMを流すだけであれば原盤権の処理・許諾は不要です。
また、原盤権の処理が必要となるのは、原盤、つまり市販されているCDや配信されている音源そのものを利用する場合に限られ、こういった音源を使わずに、例えば弾き語りで演奏したり余興バンドでコピー演奏したりするような場合も不要となります。

個人でこれらの手続きを行うことはかなりの手間がかかりますが、こうしたニーズの多いブライダルやパーティーなどのシーンにおいては、ブライダル施設や関連機関でもその用途に合わせて対応してくれることもあります。

一例を挙げますと、JASRAC等の著作権管理団体や日本レコード協会への利用申請の代行を行うISUM(一般社団法人音楽特定利用促進機構)と契約している式場などでは式場側が権利処理を行ってくれる場合もありますし、楽曲によってはブライダルでの利用に限り一般社団法人日本レコード協会が申請を受け付けていますので、無断で利用する前にぜひ問い合わせてみてください。

なお、つい先日、人気バンドGLAYが自分たちの曲をブライダルで使う場合に限り原盤権の使用料を徴収しないことを発表しました。
完全に無償利用できる訳では無く、JASRAC(演奏権を管理)やNexTone(複製権を管理)への使用料支払いは必要ですが、原盤権の処理が不要となるだけでも利用者側には大きなメリットとなるのではないでしょうか。

動画投稿サイトやブログでの利用の場合

YouTubeやニコニコ動画、アメブロなどではJASRACと包括契約を結んでいるため、原則的に楽曲や歌詞の利用については特別な許諾は必要ありません。
しかし、市販音源をそのまま利用する場合など原盤権が関係する場合は、ブライダル利用と同様に原盤権者からの許諾が必要となります。
※ニコニコ動画では予め利用許諾されている原盤もあります

最近“恋ダンス”動画の削除が話題になりましたが、これは動画に含まれる音源に対して原盤権を有するレコード会社が動画への利用(=複製および送信可能化)許諾期間を経過したためにとった措置であり、賛否両論ありますが権利行使自体は正当なものであると言えます。

その他JASRAC以外への対応が必要な場合

前回の知識編でも触れましたが、編曲・改変して利用する場合や、広告目的での利用などの場合は、音楽出版社や作詞者・作曲者個人から許諾を得る必要があります。
音楽の著作権というとJASRACのことばかりが取り上げられ、その他の権利(原盤権)の存在や、そもそもJASRACが管理しない権利(編曲権、著作者人格権など)は軽視されがちです。

著名な童謡の訳詞利用についてJASRACから許諾を得ていたとしても、歌詞の一部を変えた“替え歌”としてCD発売することに対して訳詞者が差止請求した事件もありました。
歌詞の変更は翻案権と同一性保持権に関わりますが、これらの権利についてJASRACは管理していませんので、権利者と直接交渉する必要があります。

許諾が無くても利用できる場合

音楽の利用については原則としてJASRACや原盤権者などからの許諾が必要となりますが、法が定める制限規定によって、許諾無く無償で利用できる場合もあります。

よく適用されるのは「私的使用のための複製」(法30条)で、個人で楽しむ範囲内であれば借りてきたCDを別のCD-Rやスマホ、iTunesなどにコピーすることができます。

また「営利を目的としない上演等」(法38条)により、非営利目的で、観客から費用を徴収せず、さらに演奏者などに報酬を支払わない場合は無許諾で演奏することができます。
この規定は意外と知られていないため、活用できるシーンはいろいろあると思います。
なお、無許諾利用ができるのは上演、演奏、上映、口述に限られており、複製や公衆送信はできません。
例えば入場料無料のアマチュア楽団のコンサートであっても、来場者と歌うために歌詞や楽譜を配ったりプロジェクタに投影したりするにはJASRACなど権利者からの許諾が必要ですのでご注意ください。

クラシックの曲には要注意

クラシックの曲であれば多くの曲の著作権保護期間が過ぎているため許諾無しで自由に利用できると思われるかもしれません。しかし、市販CDなどの音源を録音して利用する場合は、著作権は問題無くても原盤権については対応が必要となります。

JASRACに自作曲を管理してもらうには

一定条件を満たして信託契約を結ぶ

JASRACに自分が作詞・作曲した曲を管理してもらう場合、JASRACと信託契約を結ぶことになるのですが、実はこの契約を結ぶには自身の楽曲が「過去1年以内に第三者によって利用されていなければならない」という条件があります。

この第三者による利用とは、入場料が必要なライブ(自主開催を除く)などで演奏された、テレビやラジオで流れた、全国に1000枚以上流通するCD(自主制作を除く)に収録された、などの利用を指します。

条件を満たさない場合でも契約できる?

JASRACと直接の契約を結ぶことはできませんが、信託契約の条件を満たさない場合は、まずは音楽出版社に権利譲渡した上で、その音楽出版社からJASRACに信託譲渡するという流れが一般的です。これにより音楽出版社を間に挟む形となりますが、JASRACに歌詞や曲を管理してもらうことはできます。

なお、JASRACと直接契約した場合は、JASRACが徴収した使用料の分配金(いわゆる印税)が直接支払われますが、音楽出版社経由の場合は、分配金はその音楽出版社に支払われ、自社の取り分が差し引かれてから作家個人に支払われる(再分配)のが通常です。

印税を得られるメリットも

全国流通するCDに収録されるような場合は、音楽出版社の主導でJASRAC等の管理楽曲とする場合が多いため、作家個人の意思でJASRACに権利譲渡するというケースは多くはないと思います。

ただ、近年は自作曲をカラオケで配信するというサービスもあり、多くの場合登録料などを支払うことで配信されますが、JASRAC管理楽曲であれば利用実績に応じて使用料の分配(印税)を受けることもできますので、自作曲をJASRAC管理楽曲にしたいと考える方もいらっしゃるかと思います。上記条件などを満たすようであれば検討してみても良いかと思います。

適正な利用を心がけよう

所有しているCDなどの音源を許諾無くBGMとして使用していた美容院などに対し、JASRACが法的手続きをとったというニュースもありました。

自分が所有しているCDを流して何が問題なのか?と思うかもしれませんが、演奏権については「音源を利用した」という行為のみが検討され、音源を所有しているか否かは全く関係ありません。
また、美容院は営利目的のために存在しますので、先述の38条は適用できません。

厳しく感じられますが、実はBGM利用に対する使用料は決して高額ではなく、包括利用契約であれば店舗面積500㎡までで年間6,000円(※原稿執筆時点)です。
JASRACの分配は不透明だという批判もあり、それは改善すべきではありますが、利用許諾の必要性は法律の規定により求められていることであり、この批判をもって使用料の不払いが許容されるわけではありません。

音楽を利用する際には、JASRACやレコード会社など関係各所からの許諾を得て、正しく利用するようにしましょう。
そうして権利者が十分な利益を得られるようになることが、著作権法の目的でもある“文化の発展に寄与”するものではないでしょうか。

【過去記事一覧】
第1回「今日から向き合う、自分のための著作権」
第2回「権利侵害への対処と留意点」
第3回「引用・転載の条件と注意点」
第4回「Webメディア制作に関連する著作権」
第5回「オープンソースソフトウェアライセンスの基本と注意点」
第6回「クリエイティブ・コモンズとパブリック・ライセンス」
第7回「音楽の著作権―知識編」

遠藤 正樹(えんどう・まさき)

音楽専門学校を卒業後、マニピュレーターや作編曲家として、あるいはウェブデザイナーとしてコンテンツの創作と利用に関する仕事に従事。その中で著作権法の重要性を感じ、行政書士資格を取得。2014年9月に東京・錦糸町にて行政書士事務所を開設し、著作権に関するものを筆頭に、各種契約書の作成やその相談など法人・個人を問わず様々な書類作成をサポートしている。
◆ビーンズ行政書士事務所 http://beans-g.jp/
◆著作権のネタ帳 http://copyright-topics.jp/