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布で“雲”をつくる、MUJI無印良品にて「Handscape展」開催中

9月1日(金)~10月29日(日)の2ヶ月間、東京・有楽町のMUJI無印良品店内にある『ATELIER MUJI(アトリエMUJI)』にて「Handscape展」が開催されています。“雲”をつくる、をテーマに、無印良品の端材をつかって大きなアート作品の創作に誰でも参加できます。

買い物に訪れた人たちは「あれなに?」と覗き込み、写真を撮ったり、作品づくりに参加したりしています。2ヶ月かけて少しずつできあがっていく“雲”。日々姿を変える様子は、まるで本物の雲のようです。スウェーデンのアーティストが1週間の滞在制作をして6メートルもの大きな作品を仕上げ、展示しています。

企画者の鈴木潤子さんは、「人間にしかできないことは何なんだろうと考え、『手』に関係する企画をしたい」とHandscape展を発案したとのこと。会場では、天井からスウェーデン製のガーデンネットがぶら下がっていて、そこに白・グレー・ブルーの端材を手作業で結びつけていきます。布も、綿や麻などさまざまな素材があり、その手触りを感じながら作品をつくっていきます。

鈴木さんは、「作品をじっくり観るだけでなく、みんなで一緒に手作業したものを、風景を見るように眺めたかったんです」と企画への思いを語ります。「素材って、触ってみると布によってぜんぜん違う。ちょっとした違いのなかに普段の生活で見逃しているようなものを発見すると、自分の知らない自分が見えてきて、日常が少しだけ豊かで楽しくなります」。

“雲”の前に腰掛け、日頃なにげなく手にしている布にじっくりと触れてみることで、「ああ、こういう感触だったのか」とあらためて実感できます。

会期のはじまりに、2人のアーティストと一緒に作品をつくるワークショップが開催されました。カタリーナ・ブリーディティスさんとカタリーナ・エヴァンスさんによるユニット『Studio Brieditis & Evans』は、主な活動として、一般的には「無価値」であると見なされた素材(織物業の端材、捨てられてしまう運命にあったTシャツやセーターなど)のみを使って、丈夫なラグ(敷物)を作っている。「無価値な」素材を「価値のある」ものへ。今回会場内には、そうやって制作された彼女たちの作品も展示されています。

ワークショップでは、ふたりと一緒に“雲”をつくっていきます。作品を見るだけでなく、アーティストとお客さんが作品作りを通して直接コミュニケーションしたら面白いのではないかという試みです。そのためワークショップに通訳者はおらず、アーティストと参加者が英語や日本語、身振り手振りでコミュニケーションします。言葉が通じなくても、手の動きを真似したりと一緒に布をネットに結んでいきます。

『Studio Brieditis & Evans』のふたりは、無印良品の端材をみて“雲”をイメージしたといいます。「MUJIの特徴は白や無彩色。サンプルを見せてもらい、水、雲、空を連想した。空を飛んでいる感覚になればいいな」とふたりして微笑んでいました。

布は使われなくなった端材で、布を結びつけるネットも特別なものではありません。特別ではないもので特別なものをつくるのがとても上手い、というのが、鈴木さんが彼女たちに企画を依頼した理由だそうです。

毎日、通りかがった方の手により、少しずつ“雲”が大きくなっていきます。布独特の立体感がまるで本物の“雲”のようで、その間を歩いていると空の中にいるような感覚になります。

有楽町のMUJIには、日本人だけでなく世界中の人が訪れ、多い時には月30万人も来店するそうです。鈴木さんは「買い物のついでに見てくれれば嬉しい」と話します。「端材をこんなふうに活かせるんだ、と感じて、家でもやっていただければ楽しいはず。捨てちゃう布をぞうきんにする前にラグ(敷物)にしてみるのも素敵」と提案します。

ハンドメイドだからこそ、機械でつくるように同じものはできない。世界唯一でユニークなものができるのが手作りの魅力であり、価値です。しかも安く材料を買ってきてつくるのではなく、ゴミになるものを利用して価値あるものをつくる。近年DIYが流行りましたが、そのさらに先を行くサステナブル(持続可能)なアイテム作りでもあります。製品を売るだけでなく、『ものの素の良さに向き合う』無印良品らしいコンセプトだと感じました。

会場では、凸版印刷に勤めるサラリーマンによる「自分のシャツでエプロンを作ろう」というワークショップもおこなわれるそうです。普通のサラリーマンがある日突然思いつきでシャツをリメイクしてみた様子に、鈴木さんが惚れ込んでスカウトしたとのこと。

鈴木さんは、プロのデザイナーによる優れた作品だけに価値があるのではなく、たとえば自分の手をかけたり、思い出があったりと、新品にはない美しさを大事にしたかったそうです。「自分にも美しいものが作れる可能性がある。エコだし、なによりただ楽しいんです」。

展覧会は10月29日(日)まで開催された後、11月には完成した6m幅の“雲”がスウェーデン大使館に展示されます。企画初日は天井から吊るされたネットだけだった会場が、まるで生き物みたいに姿を変え、少しずつ雲に覆われていきます。最後まで植物のように手をかけて作られる作品の成長の過程にぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

(取材・ライティング:河野 桃子/編集:CREATIVE VILLAGE編集部/
撮影:TAKASHI KISHINAMI)