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映画『こどもつかい』の清水崇監督に聞くー未来の映画監督へのアドバイスは「何を撮りたいのか」を明確にすること

ジャパニーズ・ホラーを象徴する『呪怨』シリーズなどの清水崇監督がメガホンを手に、オリジナル・ストーリーで奏でるホラー作品『こどもつかい』が公開に! 謎めいた存在の“こどもつかい”によって子どもがさらわれ、やがて帰ってくる子どもと関りのある大人が3日後に死ぬという怪事件を描く恐怖映画で、子どもの霊を操って大人に呪いをかける“こどもつかい”を映画初主演の滝沢秀明さんがダークに熱演していることでも話題です。

実はホラー映画が苦手だった少年時代にある名作との出会いで映画監督を目指すようになったというエピソードをはじめ、映画業界に飛び込み仕事を始めた際の秘話、最新作の『こどもつかい』で敢行したというチャレンジや映像業界でクリエイターを目指す未来の映画監督へのアドバイスなどさまざまなお話を伺いました。

10歳の時の衝撃の『E.T.』(82)! 映画を作る側を意識した最初の体験――

小学校4年生、10歳の時に『E.T.』(82)を映画館で観まして、日本語字幕も初めてでした。当時の僕は怖いものが苦手だったので、最初は気味の悪い宇宙人の映画だと思っていたんですよ(笑)。それが思いがけず感動してしまって、つまりギャップが激しかったんですよね。

たった2時間足らずの映画で気味が悪いと思っていた宇宙人を、自分も友達になりたいと思わせてしまう映画の力ってすごいなって。今思えば親に隠れて捨て犬と共に過ごすみたいな話で、主人公のエリオットも10歳の少年だから、そこにスポッとはまった。それで買ってもらったパンフレットを見ると、映画にまったく関係ないヒゲのおじさんの写真があって(笑)。それが監督で、スピルバーグだったわけですが、あ、こういう人が映画を作っているんだと、それが映画を作る側を意識した最初の体験でしたね。

その後、ジャッキー・チェンやテレビドラマなど何でもかんでも観るようになっていって、映像作品を観まくっていました。一方で、外でかけずり回るような遊びも大好きで、近所の子を集めては肝試しを命令して自分はしないという、今思うと監督みたいなことをしていました(笑)。

一人の時は画を描いたり、物語を作ったりすることも好きな子だったので、それが今おそらく両方できている仕事なんですよね。『E.T.』(82)も最初はおばさんに連れられて観ましたが、その後何度も別の大人たちを捕まえては、観ていないと言って連れて行ってもらい、メモしたセリフを元に脚本を日本語で起こそうとしてみたり、印象的な場面を画で描いたり映画作りの真似事も今思うと早くにしていたと思います。

ある日突然映画業界へ飛び込み! 現場で怒鳴られ叩かれの状況で向かった先は――

大学では演劇を専攻しました。シェイクスピアとかブレヒトとかベケットとかを学び、僕はベケットが特に好きで。『ゴドーを待ちながら』(52)で有名ですよね。そういうものに触れながら、お芝居の基礎や演じる側の方のことも学びました。もちろん演出に興味を持っていたので、たまに自主映画みたいなものも作っていました。

次第に、どうやって映画の世界に入ろうかと思うようになって、京都の撮影所に行ったんですよ。「何でもやりますから仕事ください」みたいな感じで突然おじゃまして。でも「人出は足りてる」と言われ、紹介された映画館でバイトしてました。とにかく映画に関われれば何でもいいやって本気で思っていたので(笑)。

ある日、地元の新聞記事で群馬県が全額出資する映画のボランティアを募集していたんです。同郷の小栗康平監督の『眠る男』(96)です。

早速連絡して監督の面接を受けて、「何でもやります」で入ったことが最初。そこから徐々にきっかけを得て、先輩や業界の人と知り合って東京に出て。本当は助監督とか演出にすぐ行きたかったのですが、すぐには入れず小道具などをやりながら、日々を過ごしていました。

現場に入ってからは怒鳴られ叩かれの状態で、監督を目指したいなら技術的なことを学べと言われ、悔しくて今の映画美学校に通いました。そこでは主婦や学生やサラリーマンの皆さんがいる中、僕は助監督をしながら勉強しました。そこでの課題が、自分の脚本の見せ場を3分にまとめてVHSに編集して提出しないさいと。キャスト、スタッフ、全部自分のルートで集めて、機材も無いから編集も自宅の2台のデッキでのダビングだけで作りました。

それを黒沢清さんと高橋洋さんが絶賛してくれて、すぐ映画を撮るべきだと。それが『呪怨』(99)の元になっています。入口がホラーだったので今まで来ていますが、まさか苦手だったホラーの作り手になるとは未だに驚きです(笑)。

『こどもつかい』で試行した新しいチャレンジ――それが主演の滝沢秀明さん

© 2017「こどもつかい」製作委員会

© 2017「こどもつかい」製作委員会

デビューしたてで撮った『呪怨』(99)を、いまだに言われることって悔しいんですよね。自分の中で壁になっているので越えたいといつも思っていて、同じホラーを撮るにしても、自分の中に新鮮味がないと面白くないので毎回、違うテーマで臨んでいるつもりです。

そもそも僕はアナログ人間なので、それに甘んじていたら退化してしまうと思うこともあって3Dや4DXなどにも取り組んできました。それで『こどもつかい』みたいな新しい機会をいただいた時、無駄にしちゃいけないという想いが強くて、最近では新しいことに積極的に挑戦しています。だって滝沢秀明さん初主演のホラー映画なんて、彼本人も僕も想像もしなかったチャレンジですから。

彼は“こどもつかい”の役で大人の姿をしてはいますが、何者か分からず、人間かどうかも分からないんです。あまり語るとネタバレになってしまいがちですが、真新しい作品に仕上がっていると思います。きっと“こどもつかい”を観ていると、世代や性別、個人が各々に違って感じるものがあると思うんですよ。だから若い世代だけではなく、中高年の大人の方にも観てほしいです。彼に対して感じ方が違うはずなんです。

未来の映画監督へアドバイス 一番大事なことって<何を撮りたいか?>

こういうことを言うと怒られるかもしれないけれど、僕にとってはいまだに映画って贅沢な“ごっこ”というイメージがあって、それは他人に向けて笑わせようとか、怖がらせようとか、共感してほしい想いにつながっているのですが、“ごっこ”と言いながらも、映画を通じて伝えたいメッセージや共に考えたいテーマテーマはあるんです。

僕は子どもを題材にすることが多く、一緒にやっている助監督に「また子どもですか?」と言われることもしばしば(笑)。子役との仕事は大変なので、彼らにとって切実な問題でもあるわけですが、どうしてもそうなるんですよね。ただ、振り返ってみると、『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』(09)も最初は子どもが出てくる話ではなかったんです。でも僕の中に少年時代のある憧憬があって、それが自分の中で消化しきれていないのかもしれません。大人になりきれないというか。周りに言われて意識したことですが、そういう想いがあるんです。

そんな僕が偉そうにアドバイスできる立場ではないのですが、僕の経験で言うと監督になりたい人って、いっぱいいると思うんですよね。実際、そういう人をたくさん観て、会って来ましたし。でも一番大事なことって<何を撮りたいか?>だと思うんです。

いざ、監督をやらせてあげるって言われた時に、どうしよう?何を作ろう?って、なる人が実は多いんです。映画監督になりたいだけで、撮りたいものが分からない本末転倒な人が非常に多い。何が自分にとって一番で、誰に何を言われてもこういう映画を撮る、作ってみせるという意識をなるべく明確に持っていたほうが得です。得というか、そこが無い人に任せてはもらえないし、見つかるまで自問自答しながら動くべきです。明確な根拠なんか無くても、理屈やテーマなんか度外視でも、こういう作品を自分が作るべき!っていう勢いは、人生を左右する若い力だと思います。

作品情報

© 2017「こどもつかい」製作委員会

© 2017「こどもつかい」製作委員会

『こどもつかい』6月17日(土) 、全国ロードショー

物語

新人記者の駿也は、郊外で起こった連続不審死事件を追ううちに奇妙な偶然に辿りつく。
子どもが失踪した3日後に、その周りの大人が死んでいるのだ。死んだ大人たちは子どもに怨まれていたという。街の人々の間に広がる、「こどもの呪い」の噂。
これは人の手による殺人なのか?それとも呪いなのか?
失踪し、戻ってきたこどもたちが口ずさむ歌に事件解決の糸口を見出した駿也は先輩記者からの忠告も聞かず、取材にのめり込んでいく。

監督:清水崇(『呪怨』)
脚本:ブラジリィー・アン・山田、清水崇
出演:滝沢秀明、有岡大貴、 門脇麦 、尾上寛之、、西田尚美
配給:松竹

オフィシャルサイト

http://kodomo-tsukai.jp/

清水崇(しみず・たかし)

1972年7月27日生まれ、群馬県出身。シャイカー所属。
大学で演劇を専攻し、脚本家・石堂淑朗氏に師事。小道具、助監督を経て、3分間の自主映像を機に黒澤清・高橋洋監督の推薦を受け、監督デビュー。ホラー映画『呪怨』が大ヒットし、2004年にはサム・ライミ監督によるプロデュースのもと、USリメイク版『The Grudge』(邦題:THE JUON/呪怨)で、ハリウッドデビュー。日本人監督としての初の全米興行成績No.1を記録。
『戦慄迷宮』、『ラビット・ホラー』などの3D映画、日本科学未来館の3Dドーム短編『9次元からきた男』、初の4DX限定映画『雨女』(ともに16年)など、新技術を活用した企画でも活躍。近年ではプロデュース業も兼任しながら、児童文学のファンタジー『魔女の宅急便』(14年/実写版)なども手がけ、ホラーを中心にファンタジーやコメディ、ミステリー、SF、青春恋愛ドラマなど様々なジャンルに取り組んでいる。今年は本作のほか『ブルーハーツが聞こえる/少年の詩』やエグゼクティブ・プロデューサーを務める『バイオハザード:ヴェンデッタ』も発表。常に新しい作品を生みだし、幅広く観客を魅了し続けている