Sony Music Entertainment在籍時から多数のミュージックビデオを手掛け、移籍後はショートムービー、ドラマ、CM等にも活躍の場を広げてきた三木孝浩監督。長編5作目となる『ホットロード』(出演:能年玲奈 登坂広臣)は、単行本の累計発行部数が700万部を突破した紡木たくの人気少女コミックの実写映画化。その公開を前に、三木監督にお話を伺いました。

■ 大学の演劇サークル、多彩な役者陣が大きな刺激に!

img01高校生の頃から演劇部で活動していて、大学も早稲田の第一文学部・演劇専修に進みました。映画・演劇の歴史も含めて、幅広く学べる学部でしたが、早稲田は学ぶというよりはサークルの魅力が大きかったですね(笑)
早稲田出身の映画監督や劇作家が多くいらっしゃるので、その学風への憧れが強かったです。

入学後は映画サークルに入って、自主映画の制作も始めました。映画と演劇、両方のサークルに入っていた中で、特に演劇サークルでいろいろな役者の芝居を見て学んだことは大きかったです。演劇サークルで知り合った役者に、自分の映画に出てもらったこともありましたし、当時の仲間からは多くの刺激を受けました。

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■ 原作が何を描きたかったのか”核”の部分を大切に

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© 2014「ホットロード」製作委員会 © 紡木たく/集英社

今回の映画化にあたって、原作と向かい合ってみると”今だからこそ新鮮に感じる部分”がありました。それは例えば、携帯もなく、コミュニケーションが取り辛い時代だからこその、相手を思う気持ちの強さです。携帯やLINEなど、コミュニケーションの手段が発達している今だからこそ、逆にコミュニケーションの濃度は薄まっているような気がして、そういう意味でも、今だからこそ作るべき映画だな、と思いましたね。

そうは思いながらも、母親との関係に悩みを抱える和希と、不良グループの中で刹那的な生き方をしている春山を演じるのは、すごく難しいだろうな、と感じていました。でも、能年玲奈さん、登坂広臣さんの2人がキャスティング案に挙がっていると聞いて、2人に和希と春山を感じとったことが、すごいと思いましたね。映像化の過程では、2人が持っている和希と春山を思わせる部分を、いかに掘り当てていくかを意識しながら撮影していきました。

原作を映像化する時に大切なのは、原作が何を描きたかったのかという”核”の部分だと思います。時間の限られた映画というメディアに落とし込む中で、ストーリーラインはある程度、再構成が必要ですが、物語の核となる”一番描きたいもの”は何なのかを探る作業は、外してはいけないと思います。

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■ 相手を見つめる”眼差し”を意識した演出

(C)2014「ホットロード」製作委員会 (C)紡木たく/集英社
© 2014「ホットロード」製作委員会 © 紡木たく/集英社

今回の演出で意識したのは2人の”眼差し”です。
2人がセリフなく相手を見つめる眼差しだけで、想像を膨らませることができる…「この時、和希は春山を見つめながら、どういう想いに至ったのだろう」とか、こちらが引き込まれて想像したくなる表情を2人とも見せるんですよね。そこを特に丁寧に…セリフが終わっても、相手を見つめる眼差しを、その都度、すごく丁寧に撮っていきました。

そして、見つめる間は、瞬きが多いと意識が切れてしまうので、「瞬きは少な目にお願いします」と伝えたり、あとは、目線を外さず見つめる間を、普段はやらないくらい長くしたりと、その都度、2人には伝えて演出をしていきました。

その2人の心情は、風景のショットにも表れていると思います。特に江の島の風景は原作にも多く出てくるのですが、一番、心情が出るシーンで、原作でも引きの画が多いんです。湘南・藤沢近辺の風景を拠り所にしていた2人だったので…やっぱり彼・彼女が見ている風景にそれぞれの心情をのせていたのだろうな、という想いがあって。ただ、場所説明の風景にならないように気を遣いましたね。

それぞれの気持ちが表現される風景…特に、この2人の居場所は夜でもなく、朝でもない狭間にある…それは、彼らの状況も現していると思うのですが、”夜明け前の青い空間にいる2人”というのが映像でも印象づけられたら良いなと思いました。

■ 10代、20代の未成熟なキャラクターの葛藤や、一瞬の表情を切り取りたい

(C)2014「ホットロード」製作委員会 (C)紡木たく/集英社
(C)2014「ホットロード」製作委員会
(C)紡木たく/集英社

例えば女優さんの表情を撮っている時に、ただ笑っている表情よりも、自分の中で葛藤している、憂いている…その一瞬の表情に、すごく感動します。特に10代、20代で自分の方向性が定まりきらずに、未成熟なままで葛藤している姿、その表情を捕えたくて撮っているような気がしますね。

自分自身の道が定まっていなかった人が、自分なりの答えを出すまでのストロークを、やはり僕は愛おしく思って…答えを探してもがいている姿を応援したくなったり、感情移入する部分があるのだと思います。

この物語でいう和希だと、母親とのコミュニケーションの取り方を彼女なりに必死で探ってもがいている姿を見ると、愛おしさを感じます。
それは、自分が成熟していないからかもしれませんが(笑)成熟していない自分が成熟していない人たちを撮っているので、それが青春と呼ばれているような気もします(笑)

■ 映像制作ならではの”コミュニケーションから生まれるもの”を大切に

img05今は、自分で撮って編集して…という映像制作の工程が一人でミニマムな形で可能になっているので、映像制作に携わりやすい環境になっていると思います。
でも、実はそれで失われつつある部分が、いろいろなスタッフとの関わりの中で生まれるものです。

特に映画の場合はキャストが醸し出すものと、監督の演出と、照明、美術など…それぞれが持ち寄って、磨き上げて作るものが大きくて、コミュニケーションの中から生まれるものに面白さがあります。
それぞれとコミュニケーションを取りながら、そこに摩擦があったり、意思疎通がうまくいかない部分もありますが、でも”相手はこれを良いと思って言っているんだ”と、それを受け入れることで、自分が想像し得なかった良いものが生まれるのが、映像表現の醍醐味だと思います。

これから映像制作の世界を目指す人は、自主映画などで人数の少ないところで制作をしている場合も多いと思いますが、その中でも人とのコミュニケーションから生まれるものを大事にして欲しいですね。 実際に、そのコミュニケーションの中から演出が生まれることもあります。演出ありきと言うよりは、役者とのコミュニケーションの中でこういう演出の方が良いかな、と変える部分もあるので、そこは大事にして欲しいし、僕自身も、そこを楽しみながら制作を続けています。


■作品情報

『ホットロード』
8月16日(土) 全国ロードショー

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© 2014「ホットロード」製作委員会 © 紡木たく/集英社

出演:
能年玲奈/登坂広臣/木村佳乃/小澤征悦/鈴木亮平/太田莉菜/竹富聖花/落合モトキ/山田裕貴/鷲尾真知子/野間口徹/利重剛/松田美由紀

監督:三木孝浩
原作:紡木たく「ホットロード」集英社文庫<コミック版>
脚本:吉田智子
主題歌:尾崎豊「OH MY LITTLE GIRL」 ソニー・ミュージックレコーズ
配給:松竹

■オフィシャルサイト
http://hotroad-movie.jp/