生田斗真主演で、清水玲子の人気コミックを映画化した『秘密 THE TOP SECRET』。警察庁の特殊脳内捜査チーム、通称“第九”が、被害者の脳をスキャンして生前の記憶を映像化し、迷宮入り事件の真相を暴いていく。巧みなストーリーテリングにうなる衝撃的なミステリーを、エッジの効いた映像で魅せるエンターテインメント大作に仕上げたのが『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督です。

倫理観を揺さぶるタブーにまで斬り込んだ原作の世界観を、近未来のリアルな人間ドラマとして具現化した手腕はさすがです。本作の後も『ミュージアム』や『3月のライオン』と、話題のコミックの映像化作品が続く大友監督に、独自のアプローチの仕方やご自身のルーツについて伺いました。大友監督の口から出たキーワードは、「挑戦」と「覚悟」でした。

■ 死者の脳内を映像化することへの挑戦

原作は、人の死後の脳を覗きこむという話です。本来お墓までもっていくはずの他人の秘密を、見せたくない人と、見なければいけない人たちがいて、そのせめぎ合いの中で、思いがけないものを発見していく。そこが物語の着眼点としてすごく面白いと思いました。「秘密」というタイトルが示す通り、当然そこを掘っていけばタブーに踏み込まざるをえないし、人の感情を丸裸にしなければいけないけれど、人間の不思議、まさに「秘密」というものにたどりつける。そういうテーマに到達している漫画だなと思いました。

(C)2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会
(C)2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会

夢や記憶はこれまでにも映画やドラマで描かれていますが、死者の脳内映像というのはあまり見たことがなくて。それは、人を美化したり、時には悪魔にも見せたりと、個人の主観でいかようにも演出されるもので、覗けば覗くほど本当のことがわからなくなっていくんですよね。まさに脳の迷宮に入り込んでしまうというか。

原作では脳そのものを引っ張り出していますが、物理的には脊髄から離れた瞬間に脳細胞自体が死んでしまうから無理かなと。いろんなリサーチをした結果、脳を体から切り離せないとなったので、生きている人間が自分の脳細胞を借りて、脳内で死者の体験を追っていく、その結果思いがけず他者の感情を共有していくという形にしました。そうすることで、ドラマとしても強靭なものが立ち現れてくるんじゃないかと思ったので。

いざやってみると、人間の視界が広くてかなり難しかったです。ワイドレンズで撮ると歪みが出るから、歪まないレンズを探しましたし、その人の視点に近い小さいカメラを使って役者自身に撮ってもらったりもしました。相当リサーチをしましたが、その作業自体もエキサイティングでしたね。

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