社員みんなでブレストしながらアイデアを出し、楽しめるコンテンツをつくりあげる。
時代のニーズに合わせ、常に斬新な視点からのクリエイティブなモノづくりに取り組み、各業界から注目されているWebプロダクション『SHIFTBRAIN』。

設立10周年を迎え、“働き方の実験”と題したプロジェクトを発足。活躍の場を国内に留まらず海外でも展開し続けるシフトブレインのCEOである加藤琢磨さんに、コンテンツを介して第三者へ伝えるために必要なことや今後新たに取り組んでいきたいことなど、お話を伺いました。

一番大学にいなかった人間が、一番大学に居るようになった

幼い頃から音楽が好きでピアノやエレクトーンをしていたからか、子供の頃に描いていた夢というと指揮者になることでした。今となっては全く違う仕事をしていますが、その時から自分で何かをコントロールするのが好きだったのかもしれませんね。

絵を描いたり何かものをつくることが昔から得意だったので、デザイン系の学校へ進学したものの、大学には全然行っていなかったんです。(笑)
大学3年目で流石に焦り出して、翌年に入った研究室に、長藤寛和さんという当時FLASHが出始めた頃に有名な方が自分よりも一年先輩で居たことを知り、長藤さんが残してくれた作品にすごく影響を受けて、Webの世界に興味を持ち始めました。

当時テキストや画像だけの静的なサイトから動きのある表現豊かなサイトに変わった時期でしたが、まずはHTMLから勉強して次にFLASHと、本を見ながら必死に覚える日々で、それまでは一番大学にいなかった人間が、気がついたら一番大学に居るようになりましたね。

研究室の中に資料やコンピュータが山積みになっている倉庫みたいなところがあって、掃除して綺麗にする代わりにそこにあるものを全部好きなように使わしてもらえないかと先生にお願いをしたんです。
そこで同じ研究室にいた仲間と一緒にいろいろな作品をつくっていたところ、2001年にソニー・ミュージックエンタテインメントとソニーコミュニケーションネットワークが共同主催したDEP2001という、デジタルクリエイターの発掘と育成を目的としたオーディションが開催されていたので、FLASHを使った作品を出展しました。結果、DEP賞という初めての賞を獲れた時はやっぱり嬉しかったです。

それを機にネットワークが広がって、いろんなメディアを通して同じクリエイター同士の繋がりもできていったので、軽いノリで個人事業を始めて在学中に起業しちゃったんです。いま振り返ってみると、「若いって素晴らしいな」と思いますね。

印象に残っている仕事について

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©Sony Computer Entertainment Inc

10年も経つと、どれも思い出深い仕事が多いですが、デザイナーとして印象に残っている案件は、数年前にソニー・コンピュータエンタテインメントからいただいたPS3のゲームソフト『グランツーリスモ5』というソフトのプロモーションサイト制作です。
“WE LOVE CARS”をスローガンに、これまではゲームが好きな人を対象にしていたゲームを、車が好きな人にも広めていこうというコンセプトで初めて大手の有名なクリエイターの方々と一緒に仕事ができることでモチベーションもあがりました。

また求められるクオリティやスピード感が、それまでやってきた仕事と比べるとレベルが違い、自分の仕事の仕方を見直す起点になったという意味でも印象に残っています。

少し変わったものだと、一昨年に手がけたauのエイプリルフールサイトで、「大リーグボール養成スマートフォン『MAKYU01』を発表します。」というウソのサイトを作りました。

当初はイラストでみせる方向でしたが、本当に発売されるかのようにみせた方が面白いんじゃないかと考え、デザイナーを『巨人の星』の登場人物である星一徹という設定にし、実物のモックを作った上で、サイトを制作しました。

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©Lexus International

実物モックを作る過程でも相当なブレストを繰り返し、例えば、メールや着信が溜まってくると重くなる“ダンベルフォン”や、通話やカメラ、電子マネーなどの基本アプリを指の動作だけで起動してコントロールすることができる”スプリングフォン”など、世の中に大リーグボール養成スマートフォンなるものが本当に存在したらということをみんなでブレストしながら本気で考えてつくりましたね。

最近の実績では、LEXUSのブランドコンテンツ、『BEYOND BY LEXUS Magazine 』というコンテンツをチームでつくりました。LEXUSオーナー向けの会報誌を、ヨーロッパのタブレットユーザーに向けてWebならではのスクロールした際の演出や動きのある表現を使って表現しています。
本格的にグローバルを意識したサイト制作はこれが初めてだったので、新しい展開にモチベーションも高まり、コンテンツとしての今後の見せ方において大きく影響することになったプロジェクトです。

ソーシャルメディアを通して顕在化してきたこと

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©KDDI corporation

(前述の)エイプリルフールサイトを手掛けた頃から、ソーシャルメディアが盛んになってきたので、auのエイプリルフール企画の話題がTwitterで一気に拡散されて、受け手側の反応をリアルタイムで実感することができました。これまではWebサイトを制作して公開しても、見ている方にどれだけ伝わっているかの温度差がわからなかったものが、みんなが話し合いどんどん拡散し合って目に見える形で顕在化していくことがソーシャルメディアの面白いところだと思いました。

ただトレンドの移り変わりがとても早く、少し前まではTwitterとの連動企画案件ばかりだったのが、Facebookが急速に普及したことで、ある日からFacebookに変わり、今やソーシャルメディアを絡めた企画から離れてオウンドメディアでどれだけ魅力的なコンテンツが展開できるかに重点を置くようになりました。トレンドを追い求めることは重要ですが、大切なのはやはりコンテンツです。
ユーザーが感動してくれて、生活が豊かになる、そういったコンセプトがしっかりとしたコンテンツがあり、それを最大限魅力的に見せるためにはどうするべきなのかを常に考えるようにしています。

その反面、容易に連絡をとるツールとしてソーシャルメディアは本当に最適なもので、最近は仕事の問い合わせの殆どが、メールではなくFacebookのメッセージから問い合わせをいただきます。今後は「お世話になっております」から始まる、かしこまリ過ぎて意外にも非効率なメールのやり取りが次第に省かれていって、FacebookやLINEのように会話を放り投げるようなやり取りができるように変わっていくのではと肌で感じているところがありますね。

場所や時間に捕われない働き方

イメージ今年に入って、『働き方の実験』と題したプロジェクトを立ち上げました。
サテライトオフィスをロンドンに作り、働く環境を変える試みをしたにはいくつかの理由がありました。
一つは、当社にひどい花粉症のスタッフが何人かいて、2月から4月にかけてはパフォーマンスが落ちてしまうので、花粉の時期だけでも日本ではない別の場所で仕事をしたほうが良いと考え、花粉が飛ばないと噂のあったロンドンが候補にあがりました。

二つ目は、最近になって、『BEYOND BY LEXUS』のようなグローバルの案件が増えてきたので、社員の英語に対する意識向上というのも一つの理由です。英会話を学ぶよりも、実際に現地に行って、海外の文化を肌身で感じて仕事をするほうが意識も変わるのではと考えました。

最も大きな理由は、『働き方の実験』です。
インターネットが普及し始めた頃に、「これからは自分の好きな場所で働けるんじゃないか」と誰でも思い描いたことがあると思います。とはいえ特に日本だと実際に会って話すことが大前提ですし、何より回線スピードやツールの問題で絵空事でした。それが最近のgoogleを筆頭としたクラウドツールの機能向上や、ネット回線速度の向上を考えると、いよいよ場所や時間に捕われない働き方が変わってきそうだと考え、その変化に対応していくためには、自分たちが経験してみることが一番だと考えました。そして半ば強引に障害のある環境を作るため、社員全員がロンドンに行けるように一軒家を借りて、2週間ごと4チームが交代制で2週間毎、海外で仕事をする環境を作りました。

実際にロンドンにあるエージェンシーやプロダクションへ挨拶に伺った時に、どこの会社も効率化に重点を置いた働き方をしているのを見て、「日本人はよく働く」と言われていたことが、まさにその通りなんだなと身を持って実感しました。日本では当たり前だと思っていた徹夜で仕事をする文化が異様で特殊なことだとリアルに感じることができたり、様々なカルチャーショックを覚えましたね。今後もいろんな場所にサテライトオフィスを作ることを計画しています。

また実際にロンドンへ行ってみて、ヨーロッパはWebのクリエイティブな場所としては予想していた以上のクリエイティブのトレンドを作っていることを感じました。アートやファッション業界では当たり前ですが、IT業界においても、特に北欧の方では国家規模でインターネットに取り組んでいて、あらゆるトレンドを早めにキャッチするためにもヨーロッパに拠点を作りたいなと考えています。

おもしろく思えることが洗練されたアウトプットに繋がっていく

イメージ今の僕の役割はプロジェクトの全体を見ながらプロデュースする立場なので、作り手側もクライアント側も、そしてユーザーにも、どれだけワクワクさせられるようなものができるか、またそういった空気感をつくれるかを重点に置いて仕事をしています。

これまでは、クライアントがすでに頭の中でイメージしているものに近付けるため、ヒアリングをして、他社事例を見せて、少しマネしたり、追加したり削っていくようなことが多かったのですが、最近は逆に面白いアイデアをこちら側から提示して、クライアントを巻き込んで進めていくことが増えてきました。
面白いアイデアであればあるほど、関わるスタッフが一丸となってより良くするために、プラスで前向きな議論を繰り返すことができるので、その結果が最終的に洗練されたアウトプットに繋がっていくと信じています。

また、Webサイトの制作やプロモーションに携わることによって、いろんなクライアントと関わることがきます。それが化粧品の仕事だったりシューズメーカーの仕事だったり、かたや銀行の仕事だったり。
文化も価値観も全く異なる業界の方々とそれぞれ真剣になってひとつのものをつくっていくことができて、仕事の数だけ自分がそれらの仕事に就いたような疑似体験ができるので、そういった意味でもWeb業界は面白いなと思います。

その反面、インターネットは次々と新しいものが公開されるので怖い一面もあります。昨日まで盛り上がったものが一瞬にして古くなってしまったり、でも逆に捉えると一歩早めに動いていれば、パイオニアになれる面白さがあって、僕は本来は飽き性の性格なのですが、この仕事については一切飽きないですね。

世の中が豊かになるものを本気で考える

僕がクリエイティブにおいて大切だと思っていることは、物事をルーティン化させないことです。定期的に一巡するものだと捉えてしまうと、それ以上の新しいことには踏み込めません。
革新性を意識したモノづくりを目指すためには、常に新しい刺激に触れながら仕事ができる環境がとても重要になってくると考えています。だから今後もいろんな国へ行って新しい文化に触れ影響されながら、取り組んでいきたいです。

また、これからの世の中はテクノロジーによって劇的に変化していくと思うんですよ。PCが開発されてWebができて、スマートフォンが発売されてタブレットも普及して、その次はGoogle Glassが発表されてと、この勢いはもっともっと加速していくと思っています。10年後には僕らの脳にチップ的なものが埋め込む時代が来ると、本気で思っています。

いま世界最小といわれているコンピューターが、1mmという次元のものではなく、原子や粒子レベルの小さいものまで開発されています。そういった世界がかなり身近にきているんだなと思うと、最先端のテクノロジーを使ってものづくりをするクリエイターとしては、世の中が豊かになるものを本気で考え、使命感を持って取り組まなければいけないなと感じています。

最後にクリエイターへのアドバイスをお願いします。

これからは、あらゆる情報が一瞬で繋がる世の中になっていくと考えています。そういった中でコミュニケーションにおけるやりとりだとか、情報をキャッチしたり発信するスピード感というのはすごく大切になってくると思いますね。

いかにスピーディーに行動し、結果を出していくことが求められる時代を想定してみると、「これからやってみようと思います。」だと、既に遅くて、「これをやってみたけど、どう思いますか?」という一歩目のスピードをどれだけ早く動けるかが勝負だと思っています。
だからもし自分が興味のあることがあれば、明日からやろうとか来年までにやってみようとかではなく、まずやってみて、それをネタに誰かに相談してみると、道を開きやすいんじゃないかなぁと思います。


SHIFTBRAIN

世の中は、色んな人たちの想いであふれています。

想いは伝え方次第で、つまらなくも、楽しくもなる。
「モノは言いよう」だなんて、昔の人はよく言ったものです。

だから、伝えたい想いを少しでも楽しく、素敵にシフトする。

「SHIFTBRAIN」という社名にはそんなモノづくりのできる
会社を目指すというビジョンが込められています。

株式会社シフトブレインコーポレートサイト
http://www.shiftbrain.co.jp/