街をただぶらぶらしているだけなのに、さまぁ~ず&狩野恵里アナウンサー本人たちにも予測不能な奇跡の笑いが生まれる『モヤモヤさまぁ~ず2』(毎週日曜夜6:30~)。同番組の総合プロデューサーを務める伊藤隆行さんに、番組作りについてやテレビマンとしての想いなど…お話を伺いました。

自分の99パーセントは凡人でも、1パーセントは天才と信じる

イメージ映像制作に携わる方には「学生の時から志して…」という方も多いですが、僕の場合は“たまたまテレビ東京に入っちゃった”っていう表現が一番正しいです(笑)大学の政治経済学部にいて、流れ的に銀行に行くのかな、という就職活動をしていて。マスコミは日本テレビとテレビ東京だけ、最後まで選考が進んでいた中、試験の日程が重なってしまって。

その時に、何を血迷ったかテレビ東京の試験に来ちゃったんですよ。面接官に寝ているみたいな人がいたり、『浅草橋ヤング洋品店』とか『ギルガメッシュないと』とかの個性的な番組だったり、株式ニュースばかり放送しているとか…変わった局だなぁという印象でした。そこで「経済報道がやりたいです!」と言って、合格してしまいまして…

入社後の配属先は編成でしたが、制作の現場で経験を持つ先輩方が多くて「企画は書け!企画を書かない奴は死んでいるのと一緒だ!」とか言われて「暑苦しいなぁ」って思っていました(笑)で、「何、報道とか言ってんだよ!バカだなぁ」って言われて。編成にいた間中、「バカ、バカ、そんなに言わなくていいじゃない」って思うくらいに言われまして(笑)

でも、その間に言われた言葉で、座右の銘みたいになっていることがあって。「天才なんているわけない。テレビで当てたいという人に、そんな人いないよ。ましてやテレビ東京にいるわけない。でも、プロとしてものを作ろうという人は自分を1パーセントでいいから、天才だと思い込んで作らないとダメだ。自分の99パーセントは凡人でも、1パーセントは天才と信じなさい」という、その言葉はすごく印象に残っています。

自分の見たい番組を作らないと5年先、10年先も自分が見たい番組はここにはない

イメージ編成の部署で「バカだなぁ」って言った先輩たちが制作に戻って行く時、僕も引っ張られて制作に行くことになりました。そこで「制作で企画を通して、ものごとの“0から1を作る”というのが、テレビ局の醍醐味だ」と。「バカって言ったのは語弊があるかもしれないが、いいバカもいるんだ」って異動してから言われて。「最初に言ってくれよ」って話なんですけど。

そこで思ったのは、テレビ番組が、人に評価されて初めて評価になるのと同じように、自分という人間も、バカと言われたり、いいバカと言われたり、結局、自分で決めたことではなくて、引っ張られて求められる方に…自分の評価なんて他人が決めているんだな、と。こうなったら、「番組を作るのが仕事だから、いろいろやっちゃおう」と思うようになりました。

そこからのAD時代は暗黒でしたね。夜な夜な苦しくて泣くこともありましたし、自分の性格が崩壊するくらいの忙しさとか、濃い先輩に囲まれて「何これ?」と思いながら、でも、いつの間にか、悪い意味ではなくて「テレビ東京をぶっ壊してやる」と思うようになりました。それは、僕が見たい番組が一個もないな、と気付いたからです。

その時はゴールデン帯の番組を作っていましたが、50代の人をターゲットにしたもので。20代の等身大の自分が見てゲラゲラ笑えるとか、芸人さんと一緒に向き合って番組を作るという文化が皆無だったので。そこにテレビ東京のやっていないこと…穴があるなぁと気が付いて。「自分の見たい番組を作らないと5年先、10年先も自分が見たい番組はここにはない」って思ったんですよね。

それから、『ゴッドタン』(毎週土曜深夜1:45~・地域によって放送時間が異なります)の前身の『大人のコンソメ』を始めとして“芸人さんと向き合って番組を作ってみよう”という動きが出たので、立て続けに『やりにげコージー』から『やりすぎコージー』、『怒りオヤジ~愛の説教対局~』などを立ち上げていきます。

そういう、土曜のおもしろい感じ…『やりにげコージー』が昔の『ギルガメッシュないと』の枠での放送だったので、たまに「モンロー女優」みたいな、ちょっとエッチな企画にもチャレンジしましたね。AV女優って言っちゃうと、角が立つと言うか、逃げ場がないので、「モンロー女優」って言って。「モンロー」って言えばいいかって…よくないんですけど(笑)

そういうところから始まって、30代前半ではテレビ東京の深夜のやり方を完全に面白がっていましたね。映像制作というよりは“企画”。あさっての方向に向かって、視聴者に直球を投げない、どれもストライクに入らないっていうぐらいの面白がり方をしているような。それは、ある意味では“一人よがり”なものを作る面白さだったと思います。ただ、その先に『モヤモヤさまぁ~ず2』も誕生します。

『モヤモヤさまぁ~ず2』の作り方?!

イメージ『モヤモヤさまぁ~ず2』の作り方や演出について、聞かれることもあるんですが、映像制作を志す人には想像してみて欲しいですね。全てが演出でもあり、全てが演出ではないです。そこまでに至る環境作りそのものが演出と言えるんですよ。たとえば朝一で打ち合わせをして、「今日、こんな感じです」って説明をしますよね。でも、さまぁ~ずの三村さんは忘れるクセがありまして、ありがたいことに…打ち合わせの内容を全部忘れるんですよ(笑)

忘れる三村さん、忘れちゃいけない狩野アナ、意外と、ちょっと覚えている感じを出しながらほとんど覚えていない、さまぁ~ず大竹さんっていう3人に対しての、打ち合わせの仕方そのものも演出なんですよね。

「どれぐらい打ち合わせしましょうか?1時間でもできますし、3分でもできますし」という、そこから演出が始まっているとすれば、全て演出だと僕は思っています。

あとは、たとえばロケのポイントに着く直前までベラベラ喋ってるんです(笑)仕事しろよっていう話ではあるんですが(笑)、直前までくだらない話でゲラゲラ笑っていると、そのニヤニヤした顔のままロケが始まるんですよ。それも演出なんですよね。

瞬時に目の前のネタに対して、どうオチをつけていくかとか、笑いにするかとかいうのを、3人が3人とも…特にさまぁ~ずの2人ですけど、考える力がすごい。つまり大喜利の力がすごいんですよ。それはやっぱり2人の力でもあるし、実はそれを引き出すための環境を作っているスタッフの力でもあります。「モヤさま」の作り方に関してヒントを言うとしたら「ゆるく作るのは、ゆるくちゃできないです」ということですかね。

見たらモヤモヤした気持ちになる?!初めての4ショット飲み会

イメージ今回のDVDの初回限定封入特典・おまけディスクは「さまぁ~ず&狩野アナ&大江アナ初めての4ショット飲み会」です。 タイトルの通り、大江アナがニューヨークの赴任から帰って来たから飲もうよっていうだけです(笑)そしたら、乾杯して何分後かに狩野アナが泣き始めて。狩野アナは感極まってよく涙するんですけど、その泣いている理由がよく分からないんです(笑)見たらモヤモヤした気持ちになると思いますので、ご期待ください。

あの4人が同時にいるのは、番組ファンの方からすると貴重かもしれないですね。大江アナがニューヨークから戻って、初めてのさまぁ~ずとの再会の場でもありました。そこで、大江アナが久々に和食を…お魚が食べたいと言うので、畳の間のあるお魚屋さんにしたのに、あんまり、食べていなかったっていう…。そこもモヤモヤPOINTですかねぇ。

“テレビは一回終わった”という想いで、もう一度やり直す

イメージ今年、テレビ東京は50周年を迎えています。そこで『テレビ東京開局50周年特別企画 50年のモヤモヤ映像大放出! この手の番組初めてやりますSP』(3月2日放送)を我々40代の世代と30代の若手のスタッフとで作りました。ビートたけしさんや所ジョージさんにテレビ東京を紐解いてもらう内容で、SMAPのメンバーにも18年ぶりにテレビ東京に来てもらって、社員食堂で雑に扱って(笑)。

あの番組そのものを社史として捉えて、“テレビ東京らしさ”を考える3時間にするために、過去の番組を振り返ってみたのですが『TVチャンピオン』とか、すごく面白くて。あと、ゴールデンウィークに開催した「テレビ東京フェスティバル」みたいな新たな挑戦をしてみた時に思ったんですね。新しく何かを始める時にも、“テレビ東京らしさ”が必要なんだなと。

僕にとっての“テレビ東京らしい”というのは、“ぶっ飛んだようなナックルボール的な直球じゃないもの”で、“今のテレビにないもの”を作っていかなければいけないと思っています。
それをやっと作ることができて、世の中で愛されたら、初めてそこで自分が「テレビマンとして」というものを得られると思うんですよね。それに10年かかるか15年かかるか分からないですが、これから映像制作に携わりたいという方にも、それぐらいの想いで頑張って欲しいです。

今はデジタルのツールが急激に加速して、面白い動画コンテンツが多く生まれていますし、その状況からすると、テレビ全盛期というよりも、“テレビは一回終わった”という想いで、もう一度やり直しをしたいと思っています。これから業界を目指す方にも、それを強く思って欲しいし、自分の見たいものを自分の世代に向かって等身大で作る勇気を持って欲しいです。

あとは、愛社精神をもって会社の中でいろいろな人と交わって一つのものを仕上げることは、非常に難しくもありますが、それが求められていることでもあるというのを、どこか頭の片隅で考えていて欲しいですね。人に影響して人を動かす、それが、いつしか個人が会社のブランドを作ることになる…それが番組ですから。

「『モヤモヤさまぁ~ず2』を放送しているテレビ東京」という印象は少なからずあると思いますが、そのような“ブランドを作る”…ぐらいの気概。僕はそれを愛社精神という言葉に変えてみようかなと思っていて。自分も大事ですが、ちゃんと人のことも考えられるテレビマンになるのが一番いいと思います。いろいろな人に否定されながら、もみくちゃになりながらも人を巻き込んで…見た方も一緒にやっているスタッフも、みんなが笑っていられるような環境、番組を作る…そんな制作マンであって欲しいです。


■ DVD情報

モヤモヤさまぁ~ず2 DVD-BOX (VOL20&VOL21)

価格 :6,048円(税込)

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© 2014 TV TOKYO

【収録内容】
【Vol.20】(全6エピソード)
北新宿、東中野、原宿、北参道、月島、豊洲
【Vol.21】(全6エピソード)
荻窪(1)(2)、中目黒、三軒茶屋、水天宮、浅草橋

【特典映像】
VOL20:関係者の証言から紐解く!狩野アナとは一体、何者なのか?(前編)
VOL21:関係者の証言から紐解く!狩野アナとは一体、何者なのか?(後編)

【副音声】
Vol20、 Vol21ともに:狩野アナ&北本かつらによるオーディオコメンタリー(話数限定予定)

隠し特典映像
さまぁ~ず2013inLA~失われたインタビュー~

【初回限定封入特典】
おまけディスク
さまぁ~ず&狩野アナ&大江アナ初めての4ショット飲み会

【出演者】
さまぁ~ず、大江麻理子、狩野恵里

【商品基本仕様】(VOL20、21とも)
2014年/カラー/片面2層/16:9/ドルビーデジタルSTEREO/
収録分数 VOL20 約153分・VOL21 約147分+特典映像

■テレビ東京
『モヤモヤさまぁ~ず2』(毎週日曜夜6:30から放送中)
http://www.tv-tokyo.co.jp/samaazu2/

(2014年6月6日更新)