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WOWOW『連続ドラマW しんがり~山一證券 最後の聖戦~』プロデューサー 岡野真紀子さん

WOWOWオリジナルのドラマ製作プロジェクト「連続ドラマW」にて『罪人の嘘』『テミスの求刑』など重厚ながらもエンターテインメントとして魅力的な作品を多く手掛けてきた岡野真紀子さん。9月20日よりスタートする『しんがり 山一證券 最後の聖戦』では、1997年、突然の自主廃業を発表した山一證券で、会社消滅の時まで、仲間と共に闘い続けた熱き社員たちの姿を描きます。原作者・清武英利さんへの映像化権の交渉から携わった岡野さんに、ドラマ作りに込めた想いなどを伺いました。

 

■ 初めて通った企画のテーマは、“結婚10年目に人は何を思うか”

eyecatch2_rev小学校6年生の時にドラマ『家なき子』(日本テレビ)を見て以来、ずっとドラマを見るのが好きでした。演劇部に所属して、非現実なものを皆で作ることに喜びを感じてもいましたが、就職活動では、どうしてもテレビ局、という強い想いを持っていたわけではなくて。テレビ局を受けようか迷っている間に時間が過ぎていて、そういえばドラマ『週末婚』(TBS)が好きだったなぁと思い出して、そのエンドクレジットに記載があったテレパックという制作会社を受けました。テレビの仕事をするために、こんな努力をしてきました、というよりは、その道を志していなかった分、いろいろな人と出会ったり、いろいろな本を読んだりして、人との出会いを大切に大学時代を過ごしてきたことが、今に繋がっていると思います。

テレパックでは、助監督として仕事を始めましたが、かなりのハードスケジュールでしたね。その分、相当凝縮された一年を過ごしていたと思います。そんな中、24歳くらいの時から、企画を書いて各テレビ局に持っていくようになりました。そこで昼ドラの企画『愛の劇場 スイート10 ~最後の恋人~』(TBS)が通って、プロデューサーになり、今に至ります。

『愛の劇場 スイート10 ~最後の恋人~』は三浦理恵子さん主演のドラマで、主婦の不倫の話です。当時、自分がちょうど結婚を意識する年齢になって、純粋に結婚に夢を見るのではない、現実を見てみたい気持ちもあって、“結婚10年目に人は何を思うか”というテーマで企画を出したものです。その頃からずっと自分で企画を出すことは続けています。

 

■ 地上波のドラマ制作で感じた想い

okano_03_rev『愛の劇場 スイート10 ~最後の恋人~』の他にも、同じ「花王 愛の劇場」<TBS系列昼の帯テレビドラマシリーズ枠>や「ナショナル劇場」<TBS系列毎週月曜日20:00 ドラマ枠>を何本も担当しました。
例えば「ナショナル劇場」で『浅草ふくまる旅館』などのアシスタントプロデューサーをしていると、スポンサー対応も仕事の一つになります。そうするとお借りした冷蔵庫やパソコン、デジカメなどをいかにちゃんとシナリオに入れて、役者さんにちゃんと使ってもらえるかというのが大切になります。でも、それは面白いものに繋がるかというとまた別の話で、そこに違和感がありました。
地上波がスポンサーで仕事をしている以上、当たり前のことではあるのですが、実際のドラマを観る人の顔が見えないという想いに、知らず知らずのうちにフラストレーションが溜まっていた部分はあったと思います。

そのような想いを抱えた中で、初めてWOWOWの『パンドラ』という連続ドラマを見た時に、私たちの中でのタブーを堂々とやっているシリーズだなと思いました。交通事故で人を死なせたり、薬品を堂々と犯罪に使ったり…基本的には考えられない部分だったので。そこで、企画を持って営業しようかと思ったのですが、そこまで自分にも実績がない状態で、企画も通り辛いだろうと思い、自分が行った方が早いかと思って、中途採用を受けてWOWOWにプロデューサーとして入社することになりました。

 

■ 倉本聰さんの「ドラマ作りは糖衣錠だ」という言葉

okano_02_revWOWOWに入社してから何本もドラマを制作してきましたが、通して大切にしていることは、どうやって人間を描くか、どうやったら感情移入していただけるか、どうやったら自分自身も感動できるか、という観点です。毎回の話の中でしっかり心に響くシーンがあるか、観終わった後に、観た方に意味を感じてもらえるかを、企画制作するかどうかの明確な判断基準にしています。企画意図を聞かれた時に、これをテーマに描きたいというのを明確に一言で言えないものはやりたくないと思っています。そういう意味で『罪人の嘘』や『テミスの求刑』のようなリーガルサスペンスなど、似たテーマが多いのかもしれないですね。

そのように、重厚ながらもエンターテインメントとして魅力的なドラマ作りを考える時に、倉本聰さんとご一緒した時に印象的だった言葉が浮かびます。それは、「ドラマ作りは糖衣錠だ」と。苦い薬を子供たちが飲めないから砂糖で包んで甘くして飲ませる、苦い部分だけ見せようとしてもドラマは見てもらえないけれど、砂糖に包んでエンターテインメントとして提供すれば飲んだ後で苦みが伝わる、というのを倉本さんに教わっていたので、その言葉は心に留めています。面白いですよ、感動できるんですよ、というエンターテインメントに仕上げて、でも実はちゃんとテーマがあるという作り方を目指していますね。

 

■ 出版社の講談社や原作者の清武英利さんに伝えた、
 制作にあたっての覚悟

(C)WOWOW

(C)WOWOW

今回の『しんがり 山一證券 最後の聖戦』ドラマ化の始まりは、尊敬する80代の女性プロデューサーが勧めてくれた、原作(清武英利著「しんがり 山一證券 最後の12人」)との出会いでした。
読んでみて、これはぜひドラマ化したいと思い、交渉に入った時に、「山一證券」という実在の会社名について「どうお考えですか?」と原作サイドに尋ねられた時に「そのまま山一證券の名前でやらせて欲しい」と話したら「ぜひ」と言っていただけました。

『なぜ君は絶望と闘えたのか』という、山口県光市の母子殺害事件をテーマにしたドラマの制作時にも、当時係争中だったこともあり、放送のタイミングをどうするのか、という話になりました。どうしても映像化させて欲しくて、上層部と相談して裁判が終わる前に今すぐやりたいという意思を示したら、原作者の方が信用してくれました。このタイミングで放送を決意した局がWOWOWだけだったようでした。覚悟を持って本を書かれているジャーナリストに対して、こちらが怖気づくと「そんな覚悟か」と思われますが、今回山一證券の名前で堂々とやりますという私たちの覚悟が伝わったことが、清武さんが原作権をくださった理由だと思っています。

今回に関しては、原作を読んだ時から山一證券の名前でやらなければ意味はないと思っていました。皆、あの社長の会見や山一證券の会社名は記憶にあると思うので、誰もが知っている山一證券でこんなことがあったんだ、と導入すれば、観てもらえると思ったので、そのために固めた覚悟でもありますね。

ドラマ化にあたっては、若松節朗さんに監督をお願いしました。起きている事象は常に緊張感を持っていますが、ドラマの中では、緊迫の出来事の合間に登場人物たちが泥酔しているようなシーンとか、キャラクターが良く見える人間らしい一面を秀逸に描いていて、監督の手腕を実感しています。

 

■ たまたま出会ってきた人たちが全部、今の作品に繋がっている

(C)WOWOW

(C)WOWOW

この『しんがり 山一證券 最後の聖戦』では、「会社の破綻なんて人生の通過点に過ぎない」とか「会社の不正に物分かりの良い人間になる気はない」等のセリフが登場します。企業の中で、会社のためだと自分自身に言い聞かせ、当たり前のように不正を犯して良いのではなくて、個々の意志を大切にする勇気を持とう、というテーマなんです。
このドラマを見たら、会社に不満を持っている人が、明日、勇気を出して上司に話してみようかなとか、逆に部下に何かを感じている上司が明日部下と話してみようかなとか、会社内でコミュニケーションをとれるきっかけになる作品にしたくて、セリフにはこだわりました。

やはりコミュニケーションは大切なことで、私自身、今回の『しんがり 山一證券 最後の聖戦』を作るにあたって原作者の清武さんと出会っていろいろなことを学び、出版社を通して実在の方々と出会い、いろいろな感動を覚え、さらに監督とスタッフ、キャストと話し合いながら撮影を進める中で、人と出会うことの素晴らしさ、コミュニケーションの大切さを実感しています。

今まで運よく人との繋がりに恵まれて、ここまで来ることができた原点は、大学時代の自分の生活だと思っています。人よりも映画も見ていないし、映像制作を学んでいたわけではないですが、大学生の間にとにかく私は興味のある人、全員に会ってきたんです。最近は、既に大学生の頃から、映像制作のノウハウを知っている学生もいますが、それは社会人になってからでも学べることなので、人との出会いやコミュニケーションの方を大切にして欲しいですね。

私の場合、たまたま出会ってきた人たちが全て、今の作品に繋がっていると思います。若松監督もよく「人との出会いに支えられた」とおっしゃっていますが、本当に、それがすべてと言っても過言でないかもしれません。その都度出会ったエキストラさんたちからもどんなヒントを頂けるか分からないし、繋がっていくことは強みになっていくと思います。


■作品情報

日曜オリジナルドラマ『連続ドラマW しんがり~山一證券 最後の聖戦~』
9月20日(日)放送開始 ≪※第1話無料放送≫

毎週日曜22:00~WOWOWプライムチャンネル

60分枠×6話(6週)

(C)WOWOW

(C)WOWOW

江口洋介 萩原聖人 林遣都 真飛聖 / 勝村政信 佐藤B作 矢島健一 
三浦誠己 霧島れいか 板垣瑞生 大河内浩 品川徹 田中健 / 佐野史郎 光石研 平田満 岸部一徳

原作:清武英利『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社+α文庫刊)
監督:若松節朗(『沈まぬ太陽』『柘榴坂の仇討』「ドラマW チキンレース」)、村谷嘉則
脚本:戸田山雅司(「相棒」シリーズ)
音楽:住友紀人(『テルマエ・ロマエ』)
製作著作:WOWOW 制作協力:共同テレビジョン

■オフィシャルサイト

http://www.wowow.co.jp/dramaw/shingari/

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岡野真紀子(おかの・まきこ)

1982年生まれ。神奈川県出身。学習院大学文学部英米文学科卒業後、2004年テレビドラマ制作会社テレパックに入社。2008年、愛の劇場「スイート10」を初プロデュース。その後、2009年株式会社WOWOWに転職。制作局ドラマ制作部にてドラマWプロデュース業務を担当。


WOWOWプロデュース作品
≪2010年放送ドラマ≫
ドラマWスペシャル「なぜ君は絶望と闘えたのか」
監督:石橋冠/脚本:長谷川康夫/出演:江口洋介、眞島秀和 他
受賞歴:2010年文化庁芸術祭テレビドラマ部門・大賞
:ギャラクシー月間賞
ATP優秀賞
:ドラマアワード優秀賞


≪2011年放送ドラマ≫
連続ドラマW「CO移植コーディネーター」
監督:生野慈郎/脚本:秦建彦/出演:吉岡秀隆 他


≪2012年放送ドラマ≫
ドラマWスペシャル倉本聰「學」
脚本:倉本聰/監督:雨宮望/出演:仲代達矢 他
受賞歴:アジアテレビジョンアワード単発ドラマ部門 グランプリ


ドラマWスペシャル「尾根のかなたに ~父と息子の日航機墜落事故~」
脚本:岡田惠和/監督:若松節朗/出演:伊勢谷友介、松坂桃李、玉山鉄二他
受賞歴:2012年文化庁芸術祭テレビドラマ部門・優秀賞
:ギャラクシー月間賞


≪2013年放送ドラマ≫
連続ドラマW「女と男の熱帯」
原案:野沢尚/監督:生野慈郎/脚本:相沢友子/出演:藤原紀香、渡部篤郎他


ドラマW「チキンレース」
脚本:岡田惠和 監督:若松節朗 出演:寺尾聰、岡田将生、松坂桃李 他
受賞歴:2013年文化庁芸術祭テレビドラマ部門・優秀賞
:ギャラクシー月間賞
:民放連賞・優秀
:東京ドラマアワード・優秀賞


≪2014年放送ドラマ≫
連続ドラマW「私という運命について」
脚本:岡田惠和 監督:瀧本智行 出演:永作博美、江口洋介、宮本信子 他
受賞歴:ギャラクシー月間賞
:ATP賞ドラマ部門最優秀賞


連続ドラマW「モザイクジャパン」
脚本:坂元裕二 監督:水田伸生 出演:永山絢斗、高橋一生 他


連続ドラマW「罪人の嘘」
監督:瀬々敬久 脚本:金子ありさ 出演:伊藤英明、滝藤賢一、木村佳乃、仲代達矢 他


≪2015年放送ドラマ≫
連続ドラマW「翳りゆく夏」
監督:波多野貴文 脚本:吉本昌弘 出演:渡部篤郎、時任三郎、門脇麦、橋爪功 他


連続ドラマW「テミスの求刑」
脚本:久松真一 監督:権野元 出演:仲里依紗、岸谷五朗、杉本哲太 他


連続ドラマW「しんがり~山一證券 最後の聖戦~」
監督:若松節朗、村谷嘉則 脚本:戸田山雅司
出演:江口洋介、萩原聖人、岸部一徳 他


連続ドラマW「海に降る」
脚本:徳永友一 山浦雅大 他
監督:山本剛義 出演:有村架純、井上芳雄、時任三郎、原田知世、遠藤憲一 他


 

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