クリエイティブ業界の注目情報や求人情報などを発信する、クリエイターのための総合情報サイトです。
eyecatch

大きな嘘にリアルをちりばめたドラマ作り 『ドクターX ~外科医・大門未知子~』内山聖子ゼネラルプロデューサー

「いたしません」、「私、失敗しないので」という名セリフでおなじみの、米倉涼子さん演じる“異色・孤高・反骨の天才外科医”を描いた『ドクターX ~外科医・大門未知子~』シリーズ。本シリーズを手掛ける内山聖子ゼネラルプロデューサーは、これまで100本近くのドラマに携わり、その活き活きとしたキャラクターの描き方で、魅力的な作品を多数送り出してきました。内山さん流の、日常で見つけるリアルをちりばめたキャラクターの描き方とは?大ヒットドラマシリーズの誕生秘話や、ドラマ作りに込めた想いに迫ります。

 

■ 松本清張原作『黒革の手帖』で米倉涼子さんとの初タッグ

小さい頃からテレビを見るのは好きで、どう作っているのかな、という興味もありましたが、友達に引っ張られてテレビ朝日の入社試験を受けるまでは、ドラマに関わる仕事に就くとは思いもしませんでした。

好きで見ていたのは、アニメ、ドラマ、海外ドラマが多かったです。小さい頃はテレビが急成長期で、ランチタイムの話題もドラマが中心な学生時代でしたね。山田太一さん脚本の『岸辺のアルバム』や、TBSの『金曜日の妻たちへ』等の大人っぽいドラマは印象的で、自分が大人になってからのフジテレビのトレンディドラマはだいたい語れますし、朝ドラから大河まで、本当にドラマにはまっていました。

松本清張原作の映画『疑惑』で岩下志麻さんと桃井かおりさんの凄まじい女の対決を見て感銘を受けていたこともあって、ドラマを作る時には、松本清張作品にぜひ挑戦したいと思っていました。

0930中でも『黒革の手帖』は、大人の怖い寓話みたいなものに惹かれていて。ただ、松本清張作品は1年に1回しか映像化の許可が出ないので、初めてのチャンスをもらえた時にはぜひ『黒革の手帖』をドラマ化したかったんです。そこで原作権をおさえて、実現できるタイミングで、キャストは米倉涼子さんでどうでしょう?というお話が来たので、その役柄に、社会へ反骨心を抱く女性像を当てはめていくことになりました。

それが米倉さんとの初タッグとなり、当時の米倉さんの役柄のイメージにない“悪女”のキャラクターがはまり役となりました。当時はまだ男社会で、男性上司がOLさんの目を見て話さないような…彼女たちは事務作業要員で、クリエイティブなんて任せられない、という名残がある時期で、そういう上司と対等に話すには犯罪しかないっていうぐらいの(笑)反骨精神を反映させた原口元子というキャラクターを作って、それを米倉さんが見事に演じてくれました。

『黒革の手帖』は、米倉さんから発想したというよりは、こういう女性を描きたい、というものでしたが、2012年からスタートした『ドクターX ~外科医・大門未知子~』シリーズでは、逆に米倉さんをよく知った上で、似合うキャラクターを作りながら、自分や周りの女性社員の本音をできるだけ吐かせる、という作りになっています。

会社や組織の中では「御意」って言った方が生きやすいんですよね。自分の頭で考えたり、反骨精神を持っていたらくじけることも多いし、心が折れることは避けたくなります。でも努力を重ねて力をつければ「いたしません」と言えるという…自分もそうありたい、そうなりたいという想いを米倉さんのキャラクターに背負わせているような感じですね。米倉さんにとってはありがた迷惑かもしれませんが(笑)米倉さんのヴィジュアルと年齢とに上手く合ってきているのだと思います。

 

■ 大人気シリーズ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』は2で完結するはずだった?!

『ドクターX ~外科医・大門未知子~』は2012年に始まり、2016年10月から第4弾がスタートします。ただ、先を見据えて作っていたわけではなくて、ずっと「今しかない」と思って作っています。

米倉さんとは10年近くお仕事を共にしていますが、『ドクターX 』まではシリーズ化を嫌ってきました。新しいことに挑戦できるうちは、挑戦することが好きなのですが、『ドクターX 』はあまりに反響が大きくて、米倉さんもはまり役という声が多く、原作ものでもなくオリジナルなので、続けようと思えば続けられる…それらが重なって「やらざるを得ない」感じになりました(笑)ただ、3で終わろうと。米倉さんともそう話していました。

やはりクリエイティブは最初に一番エネルギーが出るもので。自由だし…それがある既定路線に乗ると、当たったこと、受け入れられたことに保険をかけていく、考え方や発想が錆びていく、想像力に贅肉がついていく感じがするんです。なので、それが嫌で毎回クラッシュして新しいものを、と考えていたのですが、2016年の夏にスペシャルを作ることになった時に少し考えが変わりました。

と言うのも、スペシャルとして1夜だけの放送でも、発表の瞬間から想像を超えるほど多くのリアクションがありまして。そこで米倉さんとも、こんなに待たれているのに、自分たちが続ける自信がないって逃げるのもいかがなものか?という話をして、どうやって続けていくかを、そこから模索し始めました。

ただ、今の時点で次のシリーズは全く頭にないですし、10年後なんて、この仕事をしているかも分からない、くらいの刹那な中で、毎回、これが最後と思って作っています。他のドラマでも、来年はもうプロデューサーをやっていないかもと思いながら作っています。自分の人生もそうなんですが、あまり先を意識しない方が瞬発力というか、力が出るんです。そうして続けていたら、結果的に長くなりましたね。

 

■ 大きな嘘の話でありながら、細かいところがリアル

『ドクターX 』シリーズはフリーランス、はぐれ医者の物語なので、毎回いろいろな組織に行きます。医者ものでありながらサラリーマンものでもあり、ヒロインが様々な既得権益とか古い体質と闘って、それを壊していく痛快さがあります。

第4弾でもそのベースは変わらず、日本のトップ病院での格付とかブランディングとかに心を奪われがちな医療人が多い中で、自分のやるべきことを突きつける一人の職人の話になっています。今回は新たな敵として泉ピン子さんが登場します。実力がありながら、女性だったため組織からはじかれていたのが、因縁の復讐のために大学病院に戻ってくる。病院はブランドとか格付けではなくて、目の前の患者を自分の腕一本で救うものだと、とてもシンプルなことを、その女の闘いの中で見せていきます。

今回の泉ピン子さんの役柄もそうですが、やはり『ドクターX 』シリーズで大切なのはキャラクターです。社内外にモデルがたくさんいます(笑)結局、ドラマは「人」なので、リアルな人間を見ていると、様々なキャラクターが出てくるんです。

IMG_7409-2『ドクターX 』の魅力は、大きな嘘の話でありながら、細かいところがリアルなところだと思います。こんな上司いるなぁ、とか、こんな人、会社で隣に座っているなぁとか…そこが面白い。唯一の大きな嘘があるとすれば、それは大門未知子で。でも大門未知子自身もすごく努力をして、生意気でもあるけれど、私生活では駄目な人っていう。そのリアルも大事にしています。キャラクターの面白さは、日常で見つけてきたリアルがちりばめられているからだと思います。

『ドクターX 』のシリーズ1から登場する「御意」も飲み会で聞いた「うちの会社には“御意3兄弟がいる”」というエピソードが面白くて、使った言葉です。そういう、リアルなところが一番面白いですよね。
遠藤憲一さん演じる海老名の中間管理職の悲哀も、私自身でもあるし、組織の中で息づいている人たちを見ていて作られたキャラクターでもあります。

 

■ ものを作るのは本当にやりたいと思った人の勝ち

私が異動してきた当時は、テレビ朝日で初めてのドラマ女性プロデューサーでした。バラエティや情報などの他部署にはいらっしゃいましたが、ドラマの部署では初めてだったそうです。でも、今やテレビ朝日は女性プロデューサーが一番多いみたいです。

IMG_7451精神的にも体力的にもきつい時もある現場なので、周りが心配して女性をなかなか入れなかったり、結婚や出産で現場に立ち続けられないケースもあったかと思うんですが、私が何年か続いたことで、後にもたくさん入ってくることになりました。今、本当に女性が多くて『ドクターX 』チームにも多くいます。監督は男性ですが、他のチームでは女性監督ともお仕事しますし。機材も軽くなったので技術パートも女性が増えて、案外やりやすい環境で女性に向いている部分もあるのかもしれません。

と言うのも、台所事情を抱えながらの細かい仕事が得意な女性も多いですし、バラエティのように何年も続くものより、ワンクール、半年なら半年と集中して制作できるところも向いているのかもしれません。

あと、クリエイティブな仕事をやらせてもらえなかった歴史があるから、やれるだけで嬉しくて女性は頑張ったんだと思います。私はそのことをあまり意識しないで来てしまいましたが、逆に言うと、制作をやりたかったのに、機会に恵まれずにいた人が、ようやくできる、となったら凄いエネルギーが発揮されますよね。制作の仕事ができて当たり前と思ったら、クリエイティブなんてすぐに力がなくなるので、ものを作るのは本当にやりたいと思った人の勝ちですね。
いろんな壁があって、やりたいことなんて通らないことがほとんどで、それをどう破るかを覚えるのに時間はかかりますが、その間に折れずに想い続けた人が面白いものを作ると思います。

そして、経験や学習ほどクリエイティブに邪魔になるものはなくて。発想の一番邪魔になるものは、下手な学習だと思います。技術的な学習は必要ですが、発想はできるだけ経験や学習を忘れて自由にイメージするのが良いと思っています。


■番組情報

テレビ朝日『ドクターX ~外科医・大門未知子~』

毎週木曜 よる9:00放送
2016年10月13日(木)スタート
http://www.tv-asahi.co.jp/doctor-x/

s_main

米倉 涼子 生瀬 勝久 内田 有紀 勝村 政信 滝藤 賢一
草刈 民代 田中 道子 岸部 一徳 吉田 鋼太郎 泉 ピン子 西田 敏行

脚本
中園 ミホ、林 誠人、寺田 敏雄
音楽
沢田 完
企画協力
古賀 誠一(オスカープロモーション)
ゼネラルプロデューサー
内山 聖子(テレビ朝日)
プロデューサー
大江 達樹(テレビ朝日)、都築 歩(テレビ朝日)、霜田 一寿(ザ・ワークス)、池田 禎子(ザ・ワークス)、大垣 一穂(ザ・ワークス)
演出
田村 直己(テレビ朝日)、松田 秀知
制作協力
ザ・ワークス
制作著作
テレビ朝日

シリーズ初のスピンオフ作品『ドクターY~外科医・加地秀樹』
au動画配信サービス「ビデオパス」「テレ朝動画」にて配信中

http://www.tv-asahi.co.jp/doctor-y/

profile

内山 聖子(うちやま・さとこ)

テレビ朝日総合編成局ドラマ制作部ゼネラルプロデューサー
65年福岡生まれ。88年テレビ朝日入社。94年からドラマ制作に携わる。
代表作に「黒革の手帖」(04年)「交渉人 THE NEGOTIATOR」(08年)「ナサケの女~国税局査察官~」(10年)「ドクターX~外科医・大門未知子~」(12年~14年・16年)など数々のドラマを手掛け、ヒットに導いてきた。

テレビ朝日 プロデューサーインタビュー

関連記事