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株式会社KUFU 取締役/最高開発責任者(CDO) 内藤 研介さん

自社サービス『SmartHR』で、TechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルや、Open Network Lab 第10期 Demo Day、B Dash Camp 2016 Spring in Fukuokaのピッチアリーナなどで立て続けに優勝を手にし話題になった、株式会社KUFU。その共同創業者として『SmartHR』の開発・技術面を支える内藤研介さんに、エンジニアとしてのお客様との向き合い方、成長の秘訣を伺いました。

 

■ 「どんな仕組みなんだろう」好奇心を追い、アメリカの大学へ

「エンジニアになりたい!」と思ったことはなかったんですよ。コンピューターに興味があったから、大学で勉強して、そのまま仕事でもいいかなあ…という軽い気持ちでした。

小さな頃からパソコンゲームやLEGOが好きで、組み立てたり動かしたりするのが楽しかったんです。小学校6年生くらいの時に自分のパソコンを買ってもらって、ずっと遊んでいました。「どんな仕組みなんだろう」と気になってしまうんですよ。ちょっと前のパソコンってよく動かなくなったんです。そういう時は楽しかったですね。分解して、組み立てて、良く分からない英語の画面が出てきて、問題を解決して。コンピューターがどうやって動いているのかに興味を持つうちに、自然とコンピューターの勉強をしたいなと考えるようになりました。

大学進路を決める時、コンピューターに関わることを学べないかなといろいろ調べてみました。どうやら「情報学部」というところがそれに当たるようなのですが、なにを勉強できるのかいまいちイメージができない。そんなときに、アメリカの大学に『コンピューターサイエンス』という学部があるのを見つけ「これだ」と思いました。正直、ただ好きで勉強してみたいというだけだったので、コンピューターサイエンスという分野に進んでいいものか迷いはあったんです。でもアメリカの大学なら、途中で簡単に専攻を変えられるらしいと知って、進学を決めました。結局専攻を変えることなくそのまま卒業しましたが、結果的にこの選択が今でも非常に役に立っています。

大学ではコンピュータに関するソフト・ハード両面から専門的な勉強ができて、すごく楽しかったです。最初はシステムとも呼べないような、画面に字が出る程度の小さなプログラムを作るんです。それを積み重ねて少しずつ複雑になり、ステップアップしていく。やっぱり、作ったものが動くのは楽しいです。

就職先の選定基準は、給料のいい仕事でした。国内外問わず探したら、コンサルタントという仕事が儲かるらしい。しかもITコンサルタントという職業があって、いろんな業界に関われて面白そうだぞと思い、フューチャーアーキテクト株式会社に入社しました。

ITコンサルタント(SIer)は、お客様にヒアリングをして、ITを駆使し、経営の課題を解決する仕事です。コンサルティングだけの会社やシステム開発だけの会社は沢山あるのですが、フューチャーアーキテクトは両方やっていて「コンサルティングからシステム開発まですべて面倒見ますよ」というコンセプトがユニークでした。僕自身は初めは研究開発部門に配属され、先輩方から技術者としての働き方を学んだあと、地銀や証券などの金融系のプロジェクトでシステム開発に携わってきました。動くものを作るのはとてもやりがいのある仕事でしたし、働いていく中で、エンジニアの楽しさ、みたいなものを実感するようになりました。

 

■ 各賞を総なめにした「SmartHR」の誕生

6年ほど勤めると、そろそろ自分でなにかしたいなと思うようになりました。会社の名前を借りずにどこまでやれるのかチャレンジしてみたかったんです。そのタイミングで友人に「一緒に会社をやらないか」と声をかけてもらいました。絶対に収入が下がることもわかっていたけれど、好奇心の方が勝ちました。そして2012年、友人と3人で株式会社KUFUを立ち上げました。

それからは試行錯誤の繰り返しでした。創業してから今まで、受託業務をしながら3つのサービスを試しているんですよ。最初はウェブクリエイターのスキルを比較するサービスを作ったけれど上手くいかなくて、次はBtoB向けのサービスのマッチングサービスを作ったけれど、それも上手くいきませんでした。その時に、なんとかしなければとOpen Network Lab(オープンネットワークラボ)というベンチャーを支援するプログラムに入ったんです。

でも、どんなサービスを開発するのかなかなか決まらない。とにかくたくさんの会社にヒアリングしました。「こういうサービスがあったら嬉しいですか?」「こういうお困り事はありませんか?」と2ヶ月で100社以上に聞いてまわるなかで、バックオフィスの分野で困っている人が多そうだというのはわかってきました。その中でも社会保険や雇用保険については困っている人の割合が高く、競合になりそうなサービスがあまりないと感じました。結果、社会保険や雇用保険、年金などの労務手続きを自動化するソフトウェア「SmartHR」を開発しました。

「SmartHR」は現在900社以上の企業に導入され、いろんな賞をいただいていますが、最初は成功するイメージはありませんでした。今でも、この先どうなるかわからないと思っています。ただただお客様のリアクションを確認しながら、「この方向で良さそうだね」と日々改善を繰り返しています。問題を正しく捉え、解決するかどうか、お客様が喜んでくれるのかどうか、がサービス開発の基準です。

 

■ システムは、シンプルであること

サービスにとって大事なのは、まず、お客様が誰なのかを明確にすることです。「SmartHR」の開発に当たって、最初は人事や労務の未経験者を対象にヒアリングをしていたんです。でも未経験だから専門用語も書類の見方もわからない。そういう方達に対して画面上に解説文を表示するのか、それともそもそもの想定ユーザーを変更して労務の知識がある人向けのサービスにするのか迷いました。どんな方が利用するのかで、画面に表示する項目が変わります。ヒアリングを重ねながらユーザー像をすり合せていく。そして定めたユーザーに対して、彼らがシンプルだと感じる作りにしなければいけません。

シンプルさは、システムにおいてもっとも大事なことです。基本的にはシンプルなものほど良い。とくに企業の業務システムのUIは使いづらいことが多いです。画面上に項目がたくさん表示されていて、どれが重要なのか分からないなんてことはありがちなパターンです。そうならないために、なるべくシンプルであることを心掛けています。何が大切な情報かを考えて、デザインします。

もうひとつ大事なことが、セキュリティーです。外からの攻撃はもちろん防がなければいけないし、社内からお客様のデータが漏れないようにもしなければいけない。

シンプルさとセキュリティーの強さ。SmartHRの開発ではこの2点を重視しています。

 

■ “お困り事”を聞くのがエンジニアとしてのヒアリング

お客様へのヒアリングにあたっては、エンジニアとディレクターとでは注目することが違います。僕はエンジニアですから、まず「どうやったらできるんだろう」と考えがちです。物理的に実現可能かどうかを考えてしまうので、難しい要望だと「それはできないなあ」と思ってしまうのが、良くも悪くもエンジニアでしょう。だから聞き方として、お客様には「何に困っているのか」を聞くようにしています。もしお客様から「こういうことがしたい」という実現方法を聞いてしまうと、こちらもYESかNOの答えになってしまいます。そうではなく「何に困っているのか」を聞き、その悩みを改善するためにどうしたらいいのかをこちらから提案するのが、本質的に求められているサービスだと思います。

ヒアリングで大事なことは、お客様の課題が何かをちゃんと聞いて、深堀りすること。コンサルの要素が入っているかもしれませんね。エンジニアとしてもコードを書いていればいいだけじゃなく、相手が何を求めているのかを探りサービスに活かすことが大事だと思います。最初の会社でも「本質を考えろ」とすごく言われました。可能な限りお客様の悩みを解決できるように、ヒアリングの場では「こうした方がいいです」「これはちょっと難しいです」という結論はあまり口にしません。できないと思ったことでも、時間をかけて考えたらできるかもしれませんから。

お困り事への改善策の仮説を立てたら、お客様へは「こういうふうにすると嬉しいですか?」と聞きます。イメージを共有するためには、よく表示画面の絵を描きますね。比較的大きな開発の場合はデモも作ります。実際の使用画面とあまり変わらない状況を作って、「このボタンを押したらこんな動きをするね」と見せることで、お客様やチームメンバーにも理解してもらえます。絵ではなく文章で伝えるのは、「こういう目的でやりますよ」「これを解決するためにやりますよ」と共通認識を持つ時だけですね。

 

■ “英語”と“アクション”がエンジニアの成長

エンジニアは英語を読めた方がいいですね。書けるとなおいいです。というのも、プログラミングの最新情報はほとんど英語しかないんですよ。「画面上でこういう動きをさせたいけど、どんなコードを書けばいいの?」と検索すると、だいたい英語のページに飛ぶんです。それを苦なく読めれば、今後の成長の梃になります。英語については、アメリカに行って今でも役に立っていることの一つですね。

あとは、やっぱりクリエイターは手を動かすこと。興味があったら小さなことからでも始めてみるのは非常に重要です。とりあえず書く、違ったらやり直す。完璧を目指さなくていいんです。プログラムでよくあるのは、すごく綺麗な設計を考えて考えて考え続けて決まらない……ということ。着手してみれば方向性が固まってくることは多いので、なんでもいいからプログラムを書いてみるといいですね。


 
株式会社KUFU

 
労務手続きを自動化するクラウド型ソフトウェア「SmartHR(スマートエイチアール)」の開発・運営を行っており、近年では『TechCrunch Tokyo 2015』『Open Network Lab 第10期 DemoDay』『B Dash Camp 2016 Spring in Fukuoka』にて優勝。私たちは価値ある仕事に集中できるように、煩雑でアナログな労務手続きを、テクノロジーを駆使してシンプルに変えていきたいと考えています。
http://kufuinc.com/

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内藤 研介(ないとう・けんすけ)

株式会社KUFU
取締役/最高開発責任者(CDO)


カリフォルニア州立大学でコンピュータサイエンスを専攻。卒業後に帰国し、ITコンサルティングのフューチャーアーキテクト株式会社へ入社。研究開発部門に配属となり、銀行や証券などの金融系のプロジェクトにて開発・設計などに携わる。6年ほど勤務したのち、2013年、株式会社KUFUを設立。2016年に最高開発責任者に就任した。

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