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映画『テラフォーマーズ』監督 三池崇史さん

鬼才・三池崇史。鬼才と聞くと、アート系の強い個性派監督を思い浮かべますが、三池崇史監督は、鬼才にしてマルチな作品が撮れる、最強のフィルムメーカーです。アクションから時代劇、コメディ、人間ドラマまで、幅広い作風で映画ファンをうならせてきた三池監督ですが、今回メガホンをとった人気コミックの映画化作品『テラフォーマーズ』は、規格外というべきスケールのSFアクションに仕上がっています。

_N021302本作は近未来の火星を舞台にした、すさまじいスペクタクル巨編です。三池監督が、このビッグプロジェクトにどう挑んだのか? そもそも映画監督の道を目指したきっかけは何だったのか? そして、オリジナルでも原作ものでも、必ず個性の際立つ “三池印”の作品に仕上げる秘訣はあるのか?三池監督の素顔に迫ります!

 

■ 目指したのは映画監督ではなく、ブルース・リー!

元々、僕は映画監督ではなく、ブルース・リーになりたかったんです。というか、今でもなれるものならなりたいというか(笑)。中1の時、強烈にブルース・リーになりたいと思ったのですが、もちろんなれっこないですよね。

_N021323その次になりたいと思ったのは、二輪のレーサーでした。ただ、実際にサーキットを走ってみたら怖いと感じたので、この程度でそう思う人間は、才能がないんだと諦めました。それなら、メカニックになるかとも思ったけど、僕は理数系がさっぱりダメで。それも諦め、そこからたまたま映画の専門学校へ行きました。映画の学校なら、苦手な計算もしなくていいし、楽そうだったので、大人になる前の時間稼ぎをしたかったんです。

もちろん、監督をやるからには、こうやって撮らないといけないとか、普段もっている自分の力よりも才能があるように見せたいという気持ちは多少あったと思います。ところが、実際、現場に入ってみると、そんなことを考えている暇がない。僕は助監督時代が長かったのですが、いつもあたふたしていて、無我夢中でした。

でも、表現者として考える自分とか、自分そのものって、本当は作品にとっては邪魔なだけなんです。映画監督というものの一番の欠点は、映画そのものよりも、映画監督でいることが好きな人が多いことかなと。こういう監督になりたいとか、こういう作品を撮って評価されたいと思う。でも、それは才能があるなしの話じゃなくて、単なるあなたの願いですよね?と。願いというのは、ないものを欲しがるものなんです。

僕は監督というものに憧れたことは一度もない。我を忘れて子どものように楽しんで映画を撮っているだけ。今日やっていることに追われちゃうから、そんなことを考える余裕なんて、もともとないんです。

 

■ 大事なのは、無責任であることと、原作へのリスペクト

_N013827監督する作品のプロジェクトが大きければ大きくなるほど、低予算のVシネマや映画で身につけたものが役に立つんです。なぜなら、常に映画は、与えられたもの以上のスケールを求められますから。予算は常に潤沢にあるわけではないので。

Vシネマの頃は、たとえば4000万で作るように言われた作品なのに、台本を読んでみると、8000万はかかるということがよくありました。そこを、スタッフの知恵や工夫を集めて、やっていくわけです。スタッフが20~30人集まれば、4000万円くらいの知恵はしぼれるから。大作になると、それが何倍、いや何十倍にもなる。それはそれで大変で、普通は責任とかプレッシャーとかいう話になるんだけど、実際、そんなことを言っている場合じゃないし、そんな暇もないんです(笑)。

原作ものの映画化に関して言えば、何を感じて何を映画化するかは、我々の自由なんです。また、自分でお金を出しているわけじゃないので、成功しようが失敗しようがあまり関係ない。ある意味、無責任でいないといけないとも思う。それよりも必要なのは、原作に対するリスペクトや愛情なんです。読者やファンと同じくらい、その思いをもっていないとダメです。

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

『テラフォーマーズ』に関しても、原作が大好きなみなさんと同じくらい、原作をリスペクトしています。そこが伝われば楽しんでもらえるんじゃないかなと思う。媚びるような映画を作っても仕方ないし、媚びようがない。原作ファンが100人いたら100人とも好きなところは微妙に違ったりするし。では、なぜ映画を作るのか?というと、『テラフォーマーズ』という漫画が面白いからですよ。

原作ものの映画では、原作者ともめて製作途中で壊れたり、企画自体がダメになったりすることは日常茶飯事です。でも、僕は自分がやって、具体的に動き出してから、壊れたことは一度もないですね。むしろ壊れそうな時に、呼ばれたりします。

「監督が降りちゃったんだよね」と言われて、「え?大変ですね。撮影まで、あと2ヶ月しかないのに、どうやって入るんですか?」と返す。すると「だから頼みに来たんです」と言われ、「え?俺?それ無理でしょう?」と言いながら、相手の顔を見ると、冗談じゃないことがわかる(苦笑)。それで「まあ、やってみましょうか」となるんです。

 

■ 監督は教育者ではないから、スタッフやキャストは厳選する

怒って映画が面白くなるんだったら、いくらでも怒ります。僕は実際、現場でずっと助監督をしてから監督になったので、そのことを経験的に知っているわけです。僕らが助監督として入った30何年か前は、巨匠たちが普通に映画やドラマを撮っていました。監督は威厳があり、確かに怒る人もいましたが、それはあの時代ならではの監督としての立ち居振る舞いというか、演出方法だったんじゃないかな。怒ることで緊張感が生まれ、作品が確かに面白くなったりしていたんです。でも、いまは時代が変わりましたから。

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

大作を撮るにあたり、途中で壊れないように、スタッフやキャストはやはり選びます。僕らは教育者じゃないから、できない人に集まってもらい、できるようにするということに、何の意味も見い出せない。できる人たちを集めて、いつも以上にやってもらう。可能性があると感じている人たちに、もっと自分の感受性を広げる場を作ってもらうのが演出で、それが監督の仕事だと思う。

毎日の撮影のなかで、「本番に行こう」となった時、それぞれの目的が明確にあれば、それがモチベーションになります。でも、それを計算ずくでやると、テクニックになっちゃいますが、そうではなくて。みんなすごく良いんだけど、もっと良くなる状況を作る。もっと違う表情が絶対にできるはずだと信じて、期待するわけです。ただ、子どもの頃から「期待してるよ」と面と向かって言われると、窮屈でしょ。だから言わない。そうではなく、その役者が、自分のセリフを言う意味を現場で感じてもらうこと、そういう空気が生まれるかどうかが、いちばん大事なんです。

 

■ 映画としての成功、失敗の評価は重要視しない

_N013846映画は作ってしまうと、もう我々のものではなくて、評価は観る方々に委ねられるわけです。そういう意味で、自分は失敗したり、成功したり、まあまあだったり、全然ダメだったりといった波があるというのが前提ですが、それでも、「これをやらないですか?」と今でも声をかけてくださるんです。消去法的に考えると、あまり優秀なやつが出てきてないんだとも思う。

実際には、いろいろな才能があるやつがいるんだと思うけど、彼らを使う能力が今の映画界にない。才能を見つけ出して、人を育てるという感覚がもうなくなってるんです。映画会社が新人スタッフとしての監督を入れないわけですから。

ただ、社員になっても良し悪しがあるわけです。社員になって群れてしまったり、撮影行為そのものが労働になってしまい、社員である権利を主張する。それは、悪いことじゃないけど、だからと言って、映画が面白くなるわけじゃない。そうなると、僕らがフリーでやって、なんでもやるような人間がたまたま生き残れるわけです。

映画として成功しているとか、ちゃんとできているから良いという評価よりも、たとえ破綻していても、決して上手な映画ではなくても、すごく好きだと言ってもらえる評価の方が、自分のなかでは理想です。なんだかわからないけど面白い、好きだ!と言ってもらえる方がうれしい。自分がやろうとした行為の中から生まれた想像もつかないことが、映画館という空間をもっと刺激的なものにしてくれる可能性があるんじゃないかなと、いつも思っています。


■作品情報

『テラフォーマーズ』
4月29日(金) 全国ロードショー

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

【物語】
21世紀、人口爆発を迎えた人類が、火星移住計画を実行する。まずは、火星にコケと“ある生物”を送り、火星を地球化させようとした。それから500年が経ち、小町小吉(伊藤英明)や幼馴染の奈々緒(武井咲)ら隊員15人は、その生物を駆除するというミッションを受け、火星へ送り込まれる。簡単な仕事で高額なギャラを得られるという話だったが、火星に着いてみると、とんでもない事態が発生!ある生物は人型に進化した驚愕生物=テラフォーマーへと姿を変え、隊員たちを次から次へと襲っていく!

原作:貴家悠 橘賢一(集英社刊)
監督:三池崇史『悪の教典』
出演:伊藤英明 武井咲 山下智久 山田孝之 ケイン・コスギ 菊地凛子 加藤雅也 小池栄子 篠田麻里子 滝藤賢一 太田莉菜 福島リラ 小栗旬
配給:ワーナー・ブラザース映画

■オフィシャルサイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/terraformars/

profile

三池崇史(みいけ・たかし)

1960824日生まれ、大阪府八尾市出身。今村昌平監督、恩地日出夫監督らの助監督を経て、『新宿黒社会』(1995年)で劇場映画監督デビュー。主な監督作に『極道戦国志 不動』(1996年)、『岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇』(1997年)、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999年)、『オーディション』(2000年)、『ゼブラーマン』(2003年)、『着信アリ』(2004年)、『クローズZERO』(2007年)、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007年)、『ヤッターマン』(2009年)、『クローズZERO Ⅱ』(2009年)、『悪の教典』2012年)、『極道大戦争』(2015年)など。本作の後、『無限の住人』が2017年公開予定。

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