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テレビドラマ『JIN-仁-』シリーズ、『天皇の料理番』など数多くの作品を、丁寧な演出でヒットに導いてきた平川雄一朗さん。細かな演出は「見ている人に分かって欲しいという想いの強さの現れ」と語る平川さんの最新作は、映画『僕だけがいない街』。
<リバイバル>という<時間が巻き戻る>不思議な現象に巻き込まれた主人公の悟が、現在(2006年)と過去(1988年)の2つの世界を行き来しながら、自身が無実の罪を着せられ、犯人として指名手配中の2006年の<母親殺害事件>と18年前の<連続児童誘拐殺人事件>の謎と真犯人に迫るミステリーです。映画オリジナルのエンディングに至るまでの想いや、制作にあたって大切にしていたこととは…?!

 

■ テレビドラマの仕事での“縁”と“運”

IMG_4995映像制作の仕事に興味を持ったきっかけは、高校生の時に感動した映画『スタンド・バイ・ミー』です。そういう感動を届けられる仕事に憧れて、専門学校卒業後はドラマの制作会社に進みました。

当時、フジテレビの大多亮プロデューサーの手掛ける月9を中心に、キラキラしたドラマがたくさんあって、そういうのを作りたいと思って入社した制作会社では、TBSのドラマを多く作っていました。その制作会社に在籍しながら、ADとしてTBSに行くことになり、2000年にTBSサイドのスタッフとして堤幸彦さんに会いました。堤さんに「うちの会社に来たらすぐにディレクターになれるよ」と嘘をつかれて(笑)オフィスクレッシェンドに移る決心をしたのですが、それから3年はディレクターになれず(笑)。でも、3年目でTBSのプロデューサーの石丸彰彦さんとの出会いが縁で、ディレクターになることができました。

2003年の初演出作品『Stand Up!!』では、堤さんと共に演出に参加しました。嵐の主題歌「言葉より大切なもの」を劇中に流したくて、曲を延々と聞きながらセリフに合わせてカット割り(このカットはこのセリフで…という割り振りを考えること)をしていたことは、今でも印象に残っています。ディレクターになりたいという想いを3年持ち続けていたので、やりたいことだらけで、やる気に満ち溢れていましたね。

後に、初チーフディレクターとして携わった2006年の『白夜行』も『Stand Up!!』と同じく石丸プロデューサーとご一緒した作品です。石丸さんがチーフディレクターに引き上げてくれたので、今振り返っても、本当に“縁”と“運”に恵まれていたと思います。

さらに、その後『白夜行』を見た春名慶プロデューサーが「映画を撮りませんか?」と声をかけてくれて、映画監督1作目『そのときは彼によろしく』を撮ることになりました。今回の映画『僕だけがいない街』も、その春名プロデューサーに声をかけてもらったので、改めて“縁”で仕事が繋がっていることを実感しますね。

 

■ ゼロから作り出す、原作者へのリスペクト

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

三部けいさんの原作コミックス「僕だけがいない街」は、「このマンガがすごい!」3年連続ランクイン、「マンガ大賞」3年連続ノミネート、「これ読んで漫画RANKING」1位獲得を始め、著名人や書店員からも傑作との呼び声が高いものでした。

実際に読んでみて、本当に面白かったですね。リバイバルというタイムリープの仕掛けの謎と、過去に飛んだ時の1988年の設定が僕らの子ども時代とも重なるので、親近感を覚えました。世の中に起きている悲惨な事件も出てきますが、日常生活で忘れてしまいがちな大切なことや、印象的な言葉が散りばめられていて共感したので、映画として伝えたいと思いました。

僕は原作ものの映画化に携わることが多いのですが、原作者の方が葛藤の末にゼロから物語を生み出すのは本当に凄いことだと実感しています。映像化などの派生するものにも、さらに成長させなければいけない、広がりを持たせなくてはいけないというプレッシャーはありますが、ゼロから作り出す作業は一番大変だと思うので、リスペクトしていますし、原作を大事にしたいと思いながら映画やドラマを作るようにしています。

 

■ 映画のラストシーン

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

原作コミックス「僕だけがいない街」が連載途中だったので、制作にあたっては、映画オリジナルのラストにどう着地させるか、が大きな課題でした。
原作者の三部さんから大きな流れは提示してもらって、そこに映画独自の『僕だけがいない街』を探そうと、主に春名プロデューサーと進めていきました。春名プロデューサーの「悲劇でもいいんじゃないか」という言葉は道標になりましたね。

タイムリープものでは、過去を変えると未来が変わります。過去の過ちを良い方向に変換して得られるものがあるならば、代償として失うものがないといけない…。でも失ったものにも、どこか別のところで縁があって、繋がっていると素敵だよね、というようなディスカッションを重ねて、映画オリジナルのラストシーンに至ったのだと思います。
2つの世界を行き来しながら謎に迫る、というストーリー上、かなり緊迫感のあるシーンも多いので、やはり、楽しんでもらうための演出の工夫は凝らしましたね。
2つの時代、どちらにも登場する“正義の味方ポーズ”が、まさにそうです。それぞれのキャラクターの持っているものを強く打ち出したいというか、何と闘っていて、どうして生きているかというのを分かりやすく表現するために、ポーズを取り入れました。

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

タイムリープものという、あり得ない世界ではありますが、根本に流れる、そこに生きている人の呼吸を作ることが演出する上では重要と思っていました。2006年と1988年で、時代を行き来はしますが、そこにいるのは1人の、現在29歳の藤沼悟(藤原竜也)だということを念頭に置いていましたね。1988年の悟を演じた中川翼くんには無理を言いました。「29歳の男の人がお前の中にいるんだ」と言われても何も想像できないと思うし。29歳の男の人が何を考え、何を思っているのか…ただ、やっぱり与えられた試練を乗り越えて生きている、というキャラクターは明確なので、そこは翼くんがうまく表現してくれたと思います。子役には、大人ほどの集中力はありませんが、欠けた時にはちゃんと声をかければ、想像を超えた演技を出してくれますよね。

 

■ 細かな演出は、見ている人に分かって欲しいという想いの強さの現れ

IMG_49862015年は、演出を担当したTBSドラマ『天皇の料理番』が、世界最大規模の国際テレビ番組見本市であるMIPCOMで、バイヤーズアワード、グランプリを受賞しました。壮大なスケールながら時代を丁寧に描写したと評され、今振り返ってみても、制作時のスタッフ・キャストの熱が国境や言語を越えて伝わったことを実感しています。
番組を作るには皆、一生懸命やっているとは思いますが、その度合いで画面を通して伝わる熱が変わってくると信じて、とにかく一生懸命に作っています。

丁寧な人物描写、というのも、賞を獲るためではなくて、テレビでも映画でも一番は見てくれる人のためです。その人たちに楽しんでもらうため、を常に考えていると、結果として描写が細かくなって、それは分かって欲しいという想いの強さの現れだと思います。

“想いの強さ”は、これから映像制作に携わりたいという方にとっても、一番大切なものです。なりたいもの、やりたいことがあったら、そこにどれだけ情熱を注げるかが全てですし、与えられたことに対してどれだけ真摯に向き合えるかが大切だと思います。当たり前のことかもしれないけれど、一生懸命やっていれば誰かが見てくれていると思うので、諦めないで続けて欲しいですね。自分自身も、人との縁や繋がりで、作品を見てくれた人から、次の作品の話をもらうことが多かったので、熱量、やりたいという気持ちが強ければ強いほど叶うんじゃないかと思います。


■作品情報

『僕だけがいない街』
3月19日(土) 全国ロードショー

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

原作:「僕だけがいない街」三部けい(KADOKAWA/角川コミックス・エース)
監督:平川雄一朗
脚本:後藤法子
プロデューサー:春名慶
キャスト:藤原竜也 有村架純 及川光博 杉本哲太/石田ゆり子 ほか

配給:ワーナー・ブラザース映画

■オフィシャルサイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/bokumachi/

平川雄一朗(ひらかわ・ゆういちろう)

1972年生まれ、大分県出身。映画監督・ドラマ演出家。TVドラマ「ROOKIES ルーキーズ」(08)や「JIN --」(09/11)シリーズなどを大ヒットに導いたヒットメイカー。2007年に『そのときは彼によろしく』で映画監督デビューを果たす。その他の作品に『陰日向に咲く』(08)『ROOKIESー卒業ー』(09)、『ラブコメ』(10)、脚本も手掛けた『ツナグ』(12)、『想いのこし』(14)など。青春ものからラブコメディ、泣ける人間ドラマまで幅広いジャンルを得意とする気鋭の監督。他のTVドラマ演出作に、「Stand Up!!」(03)、「世界の中心で、愛をさけぶ」(04)、「あいくるしい」(05)、「白夜行」(06)、「セーラー服と機関銃」(06)、「佐々木夫婦の仁義なき戦い」(08)、「とんび」(13)、「天皇の料理番」(15)、「わたしを離さないで」(16)がある。


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