Webプロデューサーは、Webサイト制作の計画立案者であり、Web施策における総責任者です。プロジェクトの上流工程を担当するので、顧客と経営視点で協議する機会も多いでしょう。そのため顧客ニーズを的確に把握し、目的達成に向けた最適な提案を行うことが求められます。

ではWebプロデューサーが、顧客満足度をより高めるためには、どんな施策が必要なのでしょうか。その答えは経営視点を持ち、顧客課題を自分事として考えること。そして、部分最適ではなく全体最適を意識することになるでしょう。Webプロデューサーとして大成するために重要な経営思考と全体最適の重要性、顧客信頼を勝ち取る秘訣を紹介します。

Webプロデューサーが経営的視点を持つべき理由

経営思考と全体最適_Webプロデューサーのイメージ

Web提案における総責任者であるWebプロデューサーは、経営層との顧客折衝が多い傾向にあります。そのため、相手のレイヤーに合わせるためにも経営視点を持つ必要があるでしょう。Webプロデューサーが経営視点を持つことでどんなメリットがあるのか、顧客とのコミュニケーションや提案の視点から解説します。

メリット:1顧客とのコミュニケーションが円滑になる

Webプロデューサーが経営的思考で顧客と向き合うためには、おのずと顧客の業界理解が必要になります。Webプロデューサーは、顧客に対してデジタルの総合的な提案ができることが必須です。1つの施策がダメだったら、他の施策というように、提案の引き出しや選択肢を複数持っていることが求められます。

経営視点が備わっていれば、顧客の視点に立って「収益を出すためには何の施策が必要なのか」というクリティカルな提案をより考えやすくなります。そして、それがさらなる学びを生み、必要な情報・知識を身につけることで、顧客・業界理解を深める礎になるでしょう。業界理解が深まれば顧客とのコミュニケーションも自然と弾むはずです。円滑なコミュニケーションができる関係性になることで、顧客が抱えている課題や目指しているゴールに対する理解深度が高まり、より良い提案につながります。

メリット2:提案の引き出しが増えて質も高まる

経営視点を持ち顧客・業界理解が深まることは提案力アップにもつながります。たとえば、クリエイター視点でWebサイト制作を考えると、見栄えやクオリティに目が行きがちです。しかし、経営視点で考えるとより顧客の収益性などにも目を向けやすくなるので、質の高い提案につながります。

もちろん、場合によっては顧客の希望に応えられないケースも出てきます。そのまま「できません」と断ることは簡単です。しかし、それでは顧客からの信頼は得にくいと言えます。経営視点があるとより多角的に顧客ビジネスを捉えることができるので、別の切り口での「それならこういう別案があります」と代替案の提示もよりスムーズになるでしょう。経営視点を持って顧客課題の本質を捉えていれば、提案の引き出しも質もおのずと高まります。

メリット3:仮説思考で物事を考えられる機会が多い

多岐にわたる知見を持つWebプロデューサーだとしても、関わりの少ない業界の知識は乏しいかもしれません。その場合、「分からないので教えてください」と質問することはできるでしょう。しかし、商談相手が経営層や代表クラスが多い中で、その質問の仕方は最適とは言えません。

相手が経営層ないしそれに近い場合は、「こうした仮説をもとに提案いたしましたが、実際のところはいかがでしょうか」と質問しましょう。経営視点を持って掘り下げた仮説と提案であれば「本質は理解してくれている、こちらの立場を考えてくれている」と顧客からの信頼を得られるきっかけになるためです。

Webプロデューサーが「部分最適」ではなく「全体最適」を意識すべき理由

経営思考と全体最適_全体最適のイメージ

Webプロデューサーの手前の立場であるWebディレクターは、より制作現場に特化した考え方が求められます。その点がプロデューサーとディレクターの違いと言えます。その役割の違いを分かりやすく理解しやすいのが「全体最適」と「部分最適」の考え方です。Webプロデューサーは全体最適の能力が求められます。

「全体最適」と「部分最適」の決定的な違い

全体最適はWebプロデューサーの領域であり、部分最適はWebディレクターの領域だと言えます。
たとえば、荒れかけている森の再生を行う場合、1本1本の木への応急処置を行ったり、苗木を植えたりするのが部分最適です。一方で森や周囲の状況を俯瞰で見て荒れるそもそもの原因を探り、その改善を行おうとするのが全体最適となります。

この考えはWeb施策にも置き換えられます。
顧客と業界を俯瞰で捉え、目的達成のために必要なことや改善すべき課題をハッキリさせるのが「全体最適」のWebプロデューサーです。
そして、クオリティを維持しつつ効率良く制作の計画を立てるのが「部分最適」のWebディレクターとなります。
このように全体最適と部分最適は領域と役割が異なるのです。

顧客に合わせた最適解をサポートする

Web施策における大前提、それは顧客の目指すゴールへの到達をサポートすることです。
見た目が良くて体裁の整っているWebサイトは質が高く使いやすいかもしれません。しかし、出来が良いだけで本質が捉えられていなければ、収益を上げられないお飾りのサイトとなってしまう恐れがあるのです。また、それぞれの企業によって、リテラシーもリソースも異なります。たとえば、「SEOで有利になるのでブログを書きましょう」と伝えても、顧客側にライティングできる人材がいなければ、その提案は全く意味のないものとなります。

Webプロデューサーは顧客が求めている本質を理解し、各企業の状況も踏まえたうえで最適解をサポートすることが仕事です。経営視点を持ちWebを通してビジネスを成功へ導くコンサルティングができれば、顧客満足度も大きく高まることでしょう。本質的な課題を解決し、顧客が満足できる結果を生み出すためにも、Webプロデューサーは部分最適ではなく全体最適を意識すべきです。

顧客の経営を「自分事」で捉えるのが信頼されるプロデューサー

経営思考と全体最適_顧客に向き合うイメージ

Webプロデューサーという立場は、顧客により向き合える存在になる必要があります。もはやプロジェクトを一緒に進めるパートナー以上の存在となり、顧客のWeb担当(会社の一員)としての気概で仕事に臨むと中長期的視野、経営視点での判断力なども自然と身につくでしょう。つまり、顧客から全幅の信頼を得るためには、「顧客の経営を自分事として捉えること」が大切です。

向き合う姿勢で顧客から信頼を得られる

経営視点を持つことは顧客や業界について深く学ぶきっかけになります。さらに深く、顧客の抱える課題や本質を理解するためには、「自分事」として捉える気持ちも必要です。Web制作という1つのタスクだけを請け負っているだと、どうしても表面的な課題しか見えてきません。しかし、顧客とコミュニケーションを重ね、顧客ビジネスに入り込むことで、経営や事業方針について自分事として捉えられるようになってきます。

「顧客にはその業界で頑張ってもらいたい」と思えるような意識はWebプロデューサーにとって大切です。顧客を好きになりファンとなり、自分事のように企業の課題と向き合えば、より真剣になってプロデュースすることができるはずです。そして、その姿勢や態度は確実に顧客の信頼へつながります。

将来を見据えたプロデュースが可能になる

Webプロデューサーは顧客理解が大切とよく言われますが、それでも十分とは言えないでしょう。プロジェクトを一緒に進めるパートナーではなく、顧客側の社員であり、Web担当を担う人材であるくらいの意識があることが望ましいでしょう。

自分事として捉えられれば、外部の人間としての客観的視点とWeb担当としての主観的視点の両方を持てるため、顧客や業界を多角的に俯瞰して理解できるはずです。結果的に企業が抱える課題の改善や目標達成に必要な施策も見えやすくなります。そうすれば本当の意味で経営視点を身につけることができ、中長期的視野でどのようにプロデュースすべきか見えてくるはずです。

顧客の視点に立って全体最適する姿勢が大切

経営思考と全体最適_まとめ

【経営思考 全体最適のまとめ】

  • 経営的思考を持てば業界理解や顧客理解が深まり提案の質も高まる
  • 本質を理解し顧客ビジネスの最適解をサポートするのが「全体最適」である
  • 信頼されるプロデューサーは顧客のビジネスを自分事として考えられる

WebプロデューサーはWeb施策における企画立案はもちろん、デジタルを通して顧客のビジネスを成功させる重要な役割を持ちます。そのため、Webに関する知識はもちろん、顧客や業界理解に対する広く深い知識も持ち合わせなくてはいけません。そして、顧客ビジネスを成功させることが目的である以上、その業務の方向性は表面的な部分最適ではなく、本質を捉えた全体最適を行うべきです。

もちろん、顧客の業界に精通しているとは限らないため、分からないこともあるでしょう。だからこそ、顧客のビジネスを自分事として捉え、積極的にコミュニケーションを取りましょう。生の声を聞く機会が多ければ自然と道は拓けますし、その真摯な姿勢がWebプロデューサーとして顧客からの信頼を勝ち取るきっかけになります。