Web動画での表現手法はさまざまであり、実写の他にもアニメーションについても近年、人気が高まっています。もちろん、テレビのような作り込みをするわけではなく、イラストレーターに依頼して簡易的なアニメーションの制作を行うのが一般的です。もちろん、熟練の映像ディレクターだとしてもイラストが描けるというケースは稀なので、制作過程でイラストレーターへのアサインは不可欠になります。

ただ、クライアントが望むアニメーションに仕上げるためには、イメージに合ったイラストに仕上げてくれるイラストレーターを確保する必要があります。映像ディレクターとしては、イラストレーターアサイン時にどんな点に注意すればいいのでしょうか。制作過程で映像ディレクターが感じやすい苦悩、アニメーション動画制作ならではのやりがい・楽しさについて解説します。

アニメーションは絵コンテ制作が鬼門になる理由

動画制作とイラストレーター_イラスト制作

Web動画において実写作品とは異なり、アニメーションの動画制作において映像ディレクターは苦戦する傾向にあると言われています。その理由としては、完パケのイメージが分かるくらいまでコンテを作りこまなければいけないことが挙げられます。かなりの工数がかかるうえ、各カットの尺読みを意識することが求められるなどディレクションの腕前が試されます。そんな鬼門となる絵コンテ制作について紹介します。

Webでのアニメーション動画需要増とその理由

近年、Web動画でもアニメーションの需要が高まっています。なぜアニメーションが注目を集めているのかというと、それはユーザーにとって分かりやすく、商品・サービスを訴求しやすいからです。文字だけのWebサイトの場合、商品説明を読むだけでも時間がかかり、ユーザーはストレスを感じます。次第に飽きてしまいページを閉じる、読み疲れてコンバージョンにつながらないということも珍しくありません。

しかし、アニメーション動画であれば、再生すれば耳からも情報が入るため、ユーザーが読み込む負担を軽減できます。気楽に何か作業をしながらでも視聴でき、面白いシーンがあればしっかり興味を持って見ることもできます。また、視覚・聴覚で情報を得られ、ユーザーはそれらを整理しやすい点もアニメーション動画のメリットです。

絵コンテ作が鬼門となる

需要が高まっている一方で、アニメーション動画の制作現場において鬼門となるのが絵コンテ作りと言われています。なぜなら、アニメーションの制作になるので、完パケのイメージが分かるくらい作り込む必要があるためです。絵コンテは最低限、ナレーションが入る数秒で各カットを構成します。ただ、動かす内容によっては尺が足りなくなり、動きのないナレーションだけの間延びしたカットが出てきてしまうことがあります。

実写の場合は演者に指示を出し、現場で即座に間延び分を補填することも可能です。しかし、アニメーションの場合、動きのある絵を数秒増やすだけでも多くの時間がかかります。そのため、各カットの尺読みを意識し、完パケイメージをイラストレーターと共有できるレベルの絵コンテを作る必要があるのです。

イラストレーターアサインの肝になるポイントとは

動画制作とイラストレーター_イラストレーター

アニメーション動画を制作する場合は、イラストレーターのアサインが欠かせません。その際に注意すべきがイラストレーターのテイストを間違えないことです。クライアントに特徴的なタッチのイラストレーターがピンポイントで刺さるケースもあるなど、そのテイストで採用を判断することが多くなります。単にイラストの上手い下手ではなく、テイストの味わいなどが選定基準となるでしょう。そのため、幅広い絵柄・テイストに対応できるかどうかは重要な判断材料です。

イメージに合うテイストへ対応できるか

イラストレーターを選定する際にもっとも重要なポイントが、顧客の求めるテイストに合った作風であるかどうかです。アニメーション動画は絵がメインコンテンツとなるため、テイストを作品や顧客のイメージに合わせることは必須条件となります。テイストがイメージに近く、候補に入れたいイラストレーターがいる場合、ポートフォリオはもちろんですが、他にも作品がないか確認しましょう。

また、特徴的なタッチで独特なテイストの絵を描くイラストレーターも少数人を抱えておくと良いでしょう。顧客によっては独自性を出したいと考えている場合があり、独特なタッチが刺さるケースもあるためです。映像ディレクターとしては、複数のイラストレーターを候補としてクライアントに提案できるように抱えておくと安心感にもつながります。

Web動画でのアニメーション制作の経験の有無

アニメーション動画は静止画の一枚絵の上手さだけが判断基準とはなりません。前述の通り、上手い下手だけではなく、懐の広いイラストレーターのほうが制作はスムーズに進みやすいでしょう。また、Web動画でのアニメーション制作案件の経験があるイラストレーターのほうが、さまざまなオーダーに柔軟な対応をしてくれるケースもあります。イラストレーター側から提案されることもあり、経験の有無は選定時に1つの選定ポイントとなるでしょう。

「清書後のイラスト修正」をなくすための根回しを

動画制作とイラストレーター_絵コンテ

Webアニメーション動画制作はイラストレーターとの協業になるため、二人三脚で協力することが不可欠です。アサイン段階でイラストレーターを選別するだけでなく、アサイン後、案件を進めていく中でもさまざまなことに注意しなければなりません。イラスト修正や進行管理における注意点について解説します。

清書後のイラスト修正はデメリットばかり

イラストレーターは「下書き→確認→清書」の手順で制作を進めます。納期を徹底してもらうことはもちろんですが、余裕を持ったスケジューリングを立てることも重要です。特にクライアントとの事前打ち合わせまでにイメージを用意しておくことが求められます。具体的なイメージを共有してすることで、「確認」の段階で修正しきれるようになるはずです。

ただし、案件を進めていくうちにクライアント側の事情により、方向性が急に変わることもあります。場合によってはイラストレーターが「清書」を終えたにもかかわらずダメ出しが入り、修正しなければいけないこともあるので注意が必要です。清書後のイラスト修正はほとんどの場合、多くの時間を要します。イラストレーターが次の仕事に取りかかっていて、修正時間を思うように取れないことも懸念されます。また、清書後のイラスト修正は追加費用を請求されることが多く、コスト増加につながる点も注意しましょう。

清書後のイラスト修正は多くのデメリットがあります。極力減らすためにも、クライアントと具体的なイメージを共有したり、余裕を持ったスケジューリングを組んだり、清書後の修正時における費用の確認など、事前の根回しが大切です。

スケジューリングと進行管理を徹底すべし

アニメーション動画制作にはとにかく時間がかかります。前述の通り、Web動画は制作期間が短い傾向にあります。そのため、スケジューリングと進行管理は徹底しなければなりません。また、清書後の修正が入るなどイレギュラーに対処するためには、常に余裕を持ったスケジュール設定が大切です。

たとえば、オリジナルキャラクターのイラストの場合、イラストレーターの選定・アサインを行うのに数日~数週間、そこから初回のイラストが上がってくるのに数週間~1ヶ月はみておくべきでしょう。クライアントの会社規模によってはイメージの確認に時間が取られるケースも少なくありません。結果的にオリジナルキャラクターの作成だけで数ヶ月かかることもあります。

実写動画もキャスティングやロケハン、撮影で時間を取られるため、スケジュールは事前にしっかり立てないと制作期間が間延びします。イラストを使用したWebアニメーション動画も同様で、イラスト制作期間に多くの時間が取られることを理解したうえでスケジューリングしなければいけません。こうした制作状況を理解し、「作業が早い」「柔軟に対応できる」イラストレーターのアサインをおすすめします。そして、進行管理を徹底し、案件をスムーズに進めていきましょう。

動画内のイラストはゼロから作る楽しさがある

動画制作とイラストレーター_まとめ

イラストレーター 動画制作 アサインについてのまとめ】

  • アニメーションの制作は実写動画と性質が異なる
  • イラストレーターはテイストへの対応力が重要
  • イラストレーターとの共同作業はクリエイターならではの楽しさがある

アニメーションはユーザーにとって気軽に視聴でき、内容も頭に入りやすく、情緒的価値を与えやすいコンテンツです。そのため、今後もWeb動画における制作が増える可能性があります。その際にもっとも重要なのはイラストレーターへのアサインです。イラストレーターの作風が企画とマッチしているか、幅広い絵柄に対応できるか、動画案件の経験はあるか、など選定時のポイントは多数あります。

また、アニメーション動画制作はイラストレーターとの協業になるため、実写動画制作とはまた違った難しさがあります。しかし、その分だけやりがいもまた一入です。ゼロからものを作る楽しさも感じられるでしょう。クライアントが満足するアニメーションを作るためには、進行管理を徹底し、イラストレーターとの密な連携が不可欠です。