人気番組を数多く手がける「イースト・グループ」から今年1月に新たに誕生した「イースト・ファクトリー」。地上波から映画、インターネット番組などあらゆるジャンルに携わる、個性派クリエイターの集団です。代表取締役社長を務める佐久間 大介さんは、数多くのメディアの制作・プロデュースを経てイースト・ファクトリーを立ち上げました。
今回は佐久間さんのキャリアスタートのキッカケから今後のメディアの可能性について伺いました。

佐久間 大介(さくま・だいすけ)
株式会社イースト・ファクトリー 代表取締役社長
1974年東京都生まれ。明治大学政治経済部卒業。
1997年、株式会社イースト(現 株式会社イースト・グループ・ホールディングス)入社。「福山エンヂニヤリング」(KTV)、「ayu ready?」(CX)などを担当。
2006年、株式会社avexとの合弁会社、株式会社avex&EASTに転籍し、2009年、取締役に就任。
2010年、株式会社イースト・エンタテインメントの常務取締役に就任。その後、デジタルコンテンツ室を立ち上げ、インターネット番組やWebコンテンツ等への事業展開を図る。
そして、2018年に株式会社イースト・ファクトリーを設立、代表取締役社長に就任。

時代を読み、一足早くテレビからニューメディアへ

――映像業界を志したキッカケを教えてください。

父が広告代理店でテレビ関係の営業をしていたり、親戚の叔父と叔母も大手広告代理店で働いていたので、何となくマスコミに近い世界で育ったんですよね。あとはやっぱりテレビ番組が好きでよく見ていました。僕の年代だと『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』とか。華やかなテレビ業界に憧れ、将来は番組を作る仕事に携わりたいというのはなんとなく幼い頃からあったんです。
そして就活するときにもう一度真剣に考えて、やっぱりテレビ制作以外考えられなかったので、制作会社イーストに入社しました。

最初は『奇跡体験!アンビリバボー』のADから始まり、バラエティ、報道系などのディレクターを経て、『福山エンヂニヤリング』という福山雅治さんのレギュラー番組や『ayu ready?』という浜崎あゆみさんがMCを務める番組を中心に担当するようになりました。

――音楽番組が中心になっていったんですね。

はい。元々音楽番組がやりたいということではなかったんですけど、アーティストさんと近い距離感で向き合って一緒に番組を作るっていうのがすごくおもしろくて。

丁度、そのタイミングで、「エイベックス&イースト」というエイベックスとイーストの合弁会社が設立され、僕はそこに転籍して6年程いました。

――制作会社として立ち上げられたんですか?

そうですね。今の時代もう当たり前になりましたけど、地上波以外のWebメディアとか各企業のオウンドメディアとか、そういうところもメディア化できるんじゃないか、というポリシーから立ち上げて。メディアに捉われず企画ありきでいろんなことにチャレンジしていこうということでやらせてもらいましたね。

ただ、メディア環境の変化と共に、母体のイーストもそれまではテレビ制作会社として地上波メインだったのがWebメディアとかもやり始めて。エイベックス&イーストとイーストがやってることも重なってきたので、それならまた一緒にやった方が人的リソースも含めて集約されるしシンプルだよね、ということでエイベックス&イーストを解散して、一同イーストに移りました。それと同じくしてイーストもホールディングス化し、イースト・エンタテインメントという映像制作会社として生まれ変わったところに僕は常務取締役としてジョインしました。

――そしてさらに今年の1月から「イースト・ファクトリー」を立ち上げられたんですね。

はい、会長の富永(正人)と半年ぐらいかけてブレストして立ち上げました。
元々はイースト・エンタテインメント内で「デジタルコンテンツ室」というのを立ち上げて、AbemaTVなど地上波以外のニューメディアを担当する部署を作ったんですが、あまり機動性がよくなくて。

イースト全体としては地上波をメインでやっているので、新しいメディアで勝負しようと思ってもなかなかリソースを割けない状況だったんです。NetflixやAmazonを含めた市場を見据える中で、そこでスピード感が鈍るのは良くない。法人化してもう少しフットワーク軽くいろんなことにチャレンジしたほうがイーストグループ全体としてもシナジーもあるしいいんじゃないかということで。

今は立ち上がったばかりの会社なので、自分も先頭に立って営業して、企画を作って各所に話に行って。案件が決まったら軌道に乗るまではプロデュースワークをして、どこかの段階で現場に渡すっていうことを繰り返してますね。

ユーザーがメディアを選べる時代だからこそ企画ファーストの制作が大事

――これまでテレビや映画、Webコンテンツやインターネット放送などあらゆるジャンルをご担当されてきた中で、メディアの可能性についてどうお考えですか。

「元々、“テレビ”ってなんだろう?」と思っていて。若い子と話して「テレビ見てる?」って聞くと「見てない」って言うんだけど、よくよく聞くとYouTubeでバラエティ番組を見てたりするんですよ。僕はそれって“テレビ”だと思うんですよね。逆に、お茶の間にあるテレビでAmazonやNetflixを見ていても、それは“テレビ”と言えば“テレビ”だし。

つまり間違いなく昔の地上波一強主義ではないし、メディアの境界線ってもう溶けてきてるんじゃないかと。ユーザーがストレスを感じずにスマホだろうがお茶の間だろうが好きなときに色んな映像を見られる時代なので、そうなってくると一番強いのは「どういうコンテンツが流れてるか」ってことになるんですよね。

ユーザーがメディアを選べる時代になるにしたがって、まずはやっぱり自分が何を作りたいか何を届けたいかという企画が大切で、この企画はどのメディアが最適かっていうのをクリエイターが考える時代になってきてると思うんです。

今までは「テレビ局が年末年始に流す特番を募集してるから、その締め切りに合わせて企画を一生懸命考えて出します」っていうのが割と主流でした。でも今は企画ファーストで自分たちがやりたいものを選びながら作っていくことを大事にしています。

結果として映画を作りたい奴が映画作ってるし、地上波はあまり見ずにAbemaTVに可能性を感じてる人はそこに向けて企画出して作ってる。地上波のゴールデンでなるべく多くの人に見てもらいたいんだっていう人は地上波に企画出してるし、というように個々のやりたいことが実現して今の形になっている感じです。

売り上げの構成比率でもバランスとれたら経営的にも最高ですけど(笑)、クリエイターの個性を二の次に短期的な数字目線を重視してシフトを組んでしまうと、その人の可能性を狭めてしまうので。そこは若い会社ですし中長期的な目線で個人の能力とか可能性っていうのを尊重してチャレンジさせてあげたいなっていう気持ちですね。怖い部分もありますけど。(笑)

変化を恐れずトライアンドエラーできる人が活躍できる時代

――今後チャレンジしてみたいことなどはありますか?

やりたい企画はジャンル問わずあります。社員にもいろんな目標を持ってる人たちがいるので、経営者目線かもしれないですけど、とにかくその人達の可能性を広げる為にいろんなバッターボックスに立たせたいです。失敗を恐れずやりたいことをできるだけやらせてあげるっていう。それで失敗したら自分にも返ってくるだろうし、色々考えることもあると思うので。

そこはある種、ある程度の失敗も許容できるイーストグループというブランド力と体力がある組織に守られたベンチャー企業という強みを生かしたいですね。

――では最後に今後活躍できるクリエイターとはどんな人だと思われますか?

変化を恐れない人。それは絶対重要だと思っていて、まずはやってみないと勉強しないし、机上の空論ではしょうがない。やりながら学んでやり抜いて、失敗したらまた考えればいい。多分その変化を恐れずどんどんチャレンジしていくクリエイターっていうのは、今の時代特に大事な気がしますね。

いろんなメディア環境が変わってきて個人がメディアを持つこともできるようになってきてる中で、僕たちはプロとしてどういう映像を作り、どうやってお金を稼ぐかっていうふうに考えると、旧来の仕事の仕方だけでは難しくなってきているのも事実です。そういう意味でも「変わること、勉強すること」によって日々アップデートしていくっていうのはすごく大事かなと思っています。

――ありがとうございました。

インタビュー・テキスト:上野 真由香/撮影:大門 徹/編集:CREATIVE VILLAGE編集部
取材協力:株式会社イースト・ファクトリー

企業プロフィール

「イースト・ファクトリー」は、2018年1月にイーストグループから誕生した映像制作会社です。テレビ番組やインターネット番組、劇場映画といったメディアを定義しないボーダーレスな事業を展開しています。

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