紀里谷和明監督のハリウッド進出第一弾となる映画『ラスト・ナイツ』は、忠誠心、名誉、正義といった普遍的なテーマを追求した騎士たちの物語。『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞を受賞した名優モーガン・フリーマンと、英国アカデミー賞受賞とアカデミー賞ノミネートの経歴を持つ『クローサー』『シン・シティ』のクライヴ・オーウェンを主演に迎え、すでに30カ国での公開が決定しています。

その公開を前に、Apple Store,Ginzaにて行われたイベント「Meet the Filmmaker」に紀里谷監督が登壇しました。「Meet the Filmmaker」は第一線で活躍する映画作家の生の声が聞けるApple Storeの人気イベントです。

写真家から映画監督へとキャリアの変遷を遂げていった紀里谷監督は、冒頭、ものづくりを始めた当時、Appleの「Quadra 950」というソフトによるグラフィックの制作、その後動画を作りたいという願望から、アメリカから取り寄せた「Final Cut Pro 1.0」を使いミュージックビデオを作り始めたと、コンピューターと自身のキャリアの始まりについて紹介。結果的にそれが仕事となり映像制作を続けていた中、友人たちと『CASSHERN』の制作を始め、映画監督に至ったと語りました。

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Apple Store, Ginza (c) Kensuke Tomuro
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また「映画は極めて独裁的なメディアですが、僕の場合は監督として最終的な決定をするまでに、ディスカッションをすることは非常にウェルカムなんです。ディスカッションを対立として捉えるのではなく、例え口論になろうが、最終的にしっかりと納得した上で制作をしたいという気持ちが強いため、役者さん相手にも常にディスカッションを通して作品づくりをしています」と自身のスタイルを語りました。さらに「写真家としてグラフィックをやっていたことが、ミュージックビデオの制作に役に立っていたり、過去に音楽をやっていた時の知識があるおかげで映画の音楽についてもディスカッションできたりなど、振り返ってみれば、いま映画を制作している中で、コンピューターのことだけでなく、過去に学んだことや起こった出来事が、全て1本の作品の中に繋がっている気がします」と明かしました。

「忠臣蔵」をテーマに描かれた本作の脚本については「本質の部分、本作でいうと武士道のような精神、命を差し出してでも守らなければいけない大事なものがある、そういった部分がしっかりと描かれていた点にすごく感銘を受けました」と語りながらも、元々の脚本では、日本人キャストが演じる前提で書かれており「この話を日本人でやるより、かつて黒澤明監督が『乱』という作品で、シェイクスピアの戯曲「リア王」をベースに日本人キャストで映画化した、あの逆バージョンで(つまり日本の物語を各国のキャストで)やろうと思いました」と、『ラスト・ナイツ』がどこの国でもない独自の世界観で描くに至った経緯を説明。

また「以前あるインタビューで、『CASSHERN』『GOEMON』『ラスト・ナイツ』と、全ての作品が“父と子の物語”と捉えることができると言われました、きっと僕はファザコンなんでしょうね(笑)」と笑みを浮かべる一幕も。

終盤には「映画の制作というものは、なるべくコントロールしようとは思いますが、ありとあらゆるハプニングやアクシンデントが起こります。でも、そういった部分も終わってみれば『意味があったのだ』と思えるようになりました」と語る監督。完璧に制御できる写真の世界から、予想外のことが起きうる映画の世界へと移行してきた中、「映画制作を始めた11年前は自分はもっと力がある者だと思っていました。それ故に生意気な発言をしてしまったりもしたのですが、11年経ったいま思うのは、いかに自分がちっぽけかということです。謙遜ではなく、周りの方々の支えがあって、これまでやってこれたと強く思います」。
そして最後に「映画というのは僕にとっての子供のようなもので、このために全てを投げ出し、本当に一生懸命作りました。応援していただけたら嬉しいです」と、熱く訴えかけ、イベントは終了しました。
映画『ラスト・ナイツ』は11月14日(土)全国ロードショーです。

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Apple Store, Ginza (c) Kensuke Tomuro
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映画『ラスト・ナイツ』公式サイト: http://lastknights.jp/

■関連リンク
インタビュー 映画『ラスト・ナイツ』監督 紀里谷和明さん
https://www.creativevillage.ne.jp/8395

(2015年10月30日 CREATIVE VILLAGE編集部)