累計発行部数5,100万部を突破している空知英秋氏の超人気漫画を原作に、小栗旬主演で実写映画化した『銀魂』が公開! この作品を脚本と共にメガホンを取ったのは福田雄一監督。「勇者ヨシヒコ」シリーズなどで不条理ギャグの天才との最高評価を得ている福田監督以外に、『銀魂』の実写化はあり得ないとの声も多く、実際の仕上がりは“完全なる福田ワールド”が炸裂しています! そんな福田監督の作品作りにかける想いについて伺いました。

原作のファンであれば自分の解釈を加える必要はないのではないか?

©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」制作委員会
©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」制作委員会

『銀魂』実写化でのこだわりと言うと、そもそも「自分なりの解釈で」とかなかったんです。そうすることで悪い方向にいってしまう気がしたんです。原作に愛を持たずに監督することって良くないことだと思います。そういうことをしている人がいるなんて信じたくないんですけど、結果的にそう見えてしまえば同じことじゃないですか。だから自分もファンである漫画『銀魂』を、いかに忠実に再現するか、しかなかったんですよね。

コスチュームにしろ、キャラクターの造形にしろ、『銀魂』の面白味をなんとか実写で実現しようとしました。それしか考えなかったですね。その大前提があった上で、いろいろな欲求も考慮して反映します。たとえば真選組、もっと出てくれば楽しいのになあと考えている人が多いだろうと思ったので、入れました。漫画『銀魂』の大ファンという観点に立って、思ったことをどんどん入れていく。そういう考え方で、まずは『銀魂』とは接していこうと。

究極のフリーター 自分の目指す“笑い”を分野を問わずにやっている

僕は、そもそも職業意識が低い人間なんだと思います。たとえば『銀魂』が上映されるじゃないですか。でも今年の仕事は、舞台しかないんですよ。仲が良い山崎貴監督に「『銀魂』がヒットすれば、次々と大作のお話が舞い込むよ」と言われましたが、「でも、舞台でスケジュールが埋まっちゃってるんですよね」と(笑)。

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自分でも究極のフリーターだなって思うのは単純にやりたいことを、分野を問わずやっているから。で、やりたいことは単純に“笑い”。そこからは絶対にブレない。それが映画であってもドラマであっても舞台であってもよくって、それが深夜であってもゴールデンであってもいい、そういう考え方なんです。

ただ、ちょっと前までゴールデンはしがらみが多そうなので、嫌だなって思ったことはありました。単純に、やりたいことがやれなくなるという危険性がまずありました。ゴールデンを何回かやって苦い思いをしたことも何度かあったので、いくばくかの抵抗はありましたけど、「どうぞどうぞ好きなことをやっていいですよ」という条件があれば、やりたいことがやれる環境が整っていれば、それはもう深夜だろうがゴールデンだろうが関係ないんです。

ただ、ゴールデンだった「スーパーサラリーマン左江内氏」に比較的抵抗がなくスルッと撮影に入れた理由は、『銀魂』のおかげだったと思っています。『銀魂』に入る時って、これほど豪華なキャストで、こんなにでっかいカネかかっちゃってる、ってのがありましたからね。

リミッターを外したのは妻の一言 『銀魂』は「撮影初日からふざけていけました」

©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」制作委員会
©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」制作委員会

自分はいいんですよね。どうなっても。ただ、これだけの作品を預かってもしも失敗しようものなら、まず『銀魂』に泥を塗る。信じて集まってくれたこれだけのキャストさんに申し訳ないなって思い、めずらしくインの前日に眠れなくてどうしようと。大作だから、ちゃんとやらなきゃって思って、現場に行きたくないとさえ思ってしまったんですけど、そうしたら妻に「原作者の空知さんが『勇者ヨシヒコ』好きだったんでしょ? だったらそう重く考えすぎずに、撮ってみたら」と。「そもそも似てるんだから、ふざけた感じで撮ってくれば?」と言われたんですね。そうしたら肩の力が抜けてふわっと解放されて、そうだよなと。うちの妻のおかげで初日からふざけた感じのテンションで行けたんで、大きなバジェットの映画ですが、最後まで引っ張れたんです。

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「スーパーサラリーマン左江内氏」の撮影がその後にあったのですが、この経験があったので、ゴールデンだからって重くなることもなく入れました。それは『銀魂』のおかげなんですよね。だから僕のリミッターを外したのは妻です。おかげでやれるところまでやれたし、主演の小栗君もびっくりしたって聞きました。鼻をほじって歌まで歌っているわけで、本当にやるとは思ってなかった人が多かったみたいです。

一緒に仕事をしたいクリエイターは「僕の脚本を面白くしてくれる監督」

山崎貴監督が大好きで一番尊敬しているのですが、実は先日、いま実写化したいアニメーションがあって、僕が脚本を書いて監督をお願いしたいと伝えたら3秒後に「断る」と返信が来まして。どうも山崎監督は、僕とはやりたくないみたいです。山崎貴監督は客観的に僕を観ていて笑っていることが好きなんだなってことがそこで判明したんで、彼との共作は一生あきらめようと思っているところなんです。
あとは、フジテレビの武内英樹監督が大好きなんです。『のだめカンタービレ』とか『テルマエ・ロマエ』の監督さんです。あのテイストがすごく好きで武内監督の何がすごいかって、「基本的に常にマジ」ってところなんです。阿部さんが風呂を出て牛乳飲んで「うまい」と言うシーンを観た時に、目指している笑いの手法が合うなあって思いましたね。


最近すごく言われるのは、「脚本と監督両方お願いしないとダメですか?」と。それが僕にとって一番イライラする質問で、僕はそもそも自分のことを「監督」だと思ってないんです。これを言うと怒られるかもしれないですけど、基本、監督という職業が得意ではなくて。朝が早いし、撮影で2か月朝が早いとか信じられない(笑)。

いまだに、監督をしなくていいならそっちのほうがいいなあという思いが、ぶっちゃけあります! 僕の理想は脚本だけお渡しして、他の人に監督をしていただくことですが、たいていの場合、思っていたものと違うものができあがることが多い。とはいえ僕は寂しがり屋なので、声をかけられたら喜んで監督を引き受けてはいますが、ずっと探しているんです。僕の脚本を面白くしてくれる監督さんって、どこかにいないかなって。それが武内監督なんじゃないかなって思っているんです。壮大な、僕の勘違いかもしれませんが(笑)。

(取材・ライティング:鴇田 崇/編集・撮影:CREATIVE VILLAGE編集部)

作品情報

©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」制作委員会
©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」制作委員会

7月14日(金)、全国ロードショー

物語

侍の国…この国がそう呼ばれたのも今は昔の話。江戸時代末期、宇宙からやってきた「天人(あまんと)」の台頭と廃刀令により、侍は衰退の一途をたどっていた。かつては攘夷志士として天人と最後まで戦い「白夜叉」と恐れられた坂田銀時も、今は腰の刀を木刀に持ち替え、かぶき町の便利屋<万事屋(よろずや)銀ちゃん>を呑気に営む日々。そんな彼の元に、かつての同志である桂小太郎が消息不明になり、高杉晋助が挙兵し幕府の転覆を企んでいるという知らせが入る。事件の調査に乗り出した万事屋メンバーの新八、神楽の身に危険が迫ったとき、銀時は再び剣をとる。進む道、戦う意味を違えたかつての同志と対峙し、己の魂と大切な仲間を護るために―。

スタッフ・キャスト

監督・脚本:福田雄一
出演:小栗旬 菅田将暉 橋本環奈 柳楽優弥 新井浩文 吉沢亮 早見あかり ムロツヨシ 長澤まさみ 岡田将生 佐藤二朗 菜々緒 安田顕 中村勘九郎 堂本剛

配給:ワーナー・ブラザーズ映画

オフィシャルサイト

gintama-film.com