視聴スタイルやデバイスの広がりから、拡大路線にある動画コンテンツ。以前までの動画市場のほとんどがテレビや映画の領域だった時代から、配信先がインターネット上のYouTubeやサブスクリプションサービスのプラットフォーム、InstagramやTikTokなどのSNSなど多様な広がりを見せています。動画コンテンツ自体が増えているということは、当然ながらその制作に携わるクリエイターも増加傾向にあります。
動画制作者・映像編集者ら映像クリエイターは、こうした動画市場の移り変わりに伴い間口を広げている職種です。では現在のような動画全盛の時代において、映像クリエイターとして活躍するにはどんな素養が必要となるでしょうか。気になる年収やスキル、市場の動向とともに紹介します。
映像クリエイターの仕事内容とは?
映像クリエイターの仕事は、テレビ・CM・映画・ネット・ゲームなど、あらゆる領域で使用されるコンテンツを作ることです。バラエティやニュースなどテレビ番組の制作、アーティストのミュージックビデオやゲーム中に流れるCG制作も広義において映像クリエイターの部類に含まれます。高額な撮影や編集機材を使って映像を作るテレビ局や制作会社から、YouTuberに代表されるように個人で制作しているクリエイターまで、幅広い点も特徴です。
映像クリエイターの分業制はなくなりつつある
テレビに関わる映像クリエイターを例に挙げると、映像制作は少し前までは「制作系」と「技術系」に分業されていました。制作系はプロデューサーやディレクターなど、番組作りを統括するうえでの企画に携わる職種です。一方の技術系は、映像の撮影や編集・加工に関わる職種になります。スタジオでカメラを回して撮影をしたうえで、実際に編集用のソフト・ツールなどを利用して映像を作る職種であり、高い専門技術が求められます。
近年では映像編集ソフトが多様化していることもあり、制作系・技術系の垣根がなくなりつつあります。というのも映像=テレビという時代は終焉を迎えており、インターネットによって供給先が多様化。制作も個人単位などの小規模からも可能になり、SNSを中心にスマートフォンだけで制作を行う映像クリエイターすら登場してきています。映像クリエイターという職種も多岐にわたるので、どんなコンテンツを、誰に発信したいのかを明確にしたうえで制作に向き合うことがより重要になってきています。
2021年の動画配信市場規模は4,230億円(前年比114%)にまで成長
出典:一般財団法人デジタルコンテンツ協会「動画配信市場調査レポート2022」
一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)が発表した「動画配信市場調査レポート2022」によると、インターネットを介した動画配信市場が右肩上がりで成長中であり、2021年の動画配信市場規模は4,230億円(前年比114%)でした。その勢いはとどまることをしらず、2026年に5,250億円になると推計されています。
世間一般に動画配信の視聴習慣が定着しており、ユーザーがいつでも、どこでも好きなコンテンツが視聴できる動画配信市場の特性を踏まえ、よりニーズに合ったサービスを受けているというのが現状です。2022年4月には、日本テレビ系、テレビ朝日系、TBS系、テレビ東京系、フジテレビ系の民放キー局5社によるリアルタイム配信も始まったこともあり、動画配信サービス市場は新時代を迎えるでしょう。
映像クリエイターも、プラットフォームに配信をすることを前提に動画制作や映像編集を行う時代になったと言えます。
映像クリエイターの平均年収
厚生労働省が公表している「令和3年賃金構造基本統計調査」では、映像編集者と動画制作者を含む映像クリエイターの平均年収は584.4万円でした。一方でテレビやインターネットなどの媒体を問わず、撮影を担当するカメラマンの平均年収は486.9万円とされています。かつての制作系職種の平均値が高いという結果が出ています。
ただし、映像クリエイターは個人で働くタイプと、企業に所属して働くタイプに分けられる点は留意しましょう。個人で活動している場合、クリエイターとしてのスキルや知識の深さが年収に大きく関係するため、持っている資格や学歴は、映像クリエイターの年収にはあまり関係ありません。スキルが高ければ高いほど、高額な報酬を得ることができるでしょう。企業に所属している場合は、中小企業であれば600万円ほどが平均値であり、非正規のクリエイターとして年収300万円ほどから、スキルを磨いて上を目指して働いている方も少なくありません。
一方で、大手のテレビ局や映像制作会社の場合は、年収700~1,000万円に達する人もいます。さらに福利厚生などの待遇面でも優遇されやすいですが、大卒資格がないとそもそも入社できない狭き門でもあります。入社後は自身のスキルや知識を向上させ、質の良い映像制作に携わることが高収入につながりやすいと言えるでしょう。例外としては、制作を希望するものの、局内の人事異動で制作から離れることも多いため、管理職を経験して評価をあげて出世するというルートもあります。
未経験から映像クリエイターになるには
一口に映像クリエイターと言っても、扱う媒体や規模感によって業務内容が異なることはすでに紹介済みです。ではそういった垣根をなしにしたうえで、未経験の方が映像クリエイターになるうえで重要とされる素養(必要スキル、向いている人、必要な資格)などを紹介します。
必要なスキル
映像クリエイターには、いくつかのスキルが求められます。まずはクライアントの要求に応え、映像を作るためのスキルです。映像コンテンツはアートではないので、顧客満足を果たせる仕事ができるかどうかは大前提となります。また、クリエイティブな仕事なので、デザイン表現や音楽などの芸術的な知見に加えて、個人の持つセンスも重要です。
また、テレビ番組・CM制作、YouTube配信などの場合は、クリエイティブな観点のみならず一般常識や社会情勢、差別的でNGな表現に関しての知識も必要となります。「炎上」という言葉が社会で定着していますが、いわゆる放送禁止用語を含めた人種的・職業的・性別的な差別表現はNGです。そうした視聴者やユーザーと同じ一般的な感覚を作り手が持っていることも重要な素養と言えます。
他にも、コミュニケーション能力やマネジメント能力も必要です。クライアントから依頼を受けて映像を制作する場合、円滑なコミュニケーションが前提としなければ、どんな映像を作りたいのかというニーズを引き出すことすら難しいからです。また、企画の進捗管理を管理してメンバーをまとめるマネジメント力が求められることもあります。これらは円滑にプロジェクトを進めるために必要になるため、案件ごとにリーダーが定められるといったケースもあります。
目指す方法
映像クリエイターを目指す方法の1つとしては、専門学校や美術系の大学などで専門的な知識を学んでから、映像製作会社・テレビ局などに入社する方法があります。ただし、教育機関で専門的な分野を履修していないと、映像業界に入れないということはありません。
映像クリエイターを募集している企業の中には、学歴を重視しないケースもあります。大学や専門学校はあくまでも基礎的な知識やスキルを身につける場所なので、まずは会社に入ってアシスタントをしながら、スキルを身につけていくことも可能です。
また、スキルと知識を身につけた場合、フリーランスとして働く方法もあります。実績や経験がない初めの頃は簡単な仕事しか受けられないでしょう。しかし、少しずつ実力をつけ、クライアントからの信頼を得ていくことで高い収入を得られるクリエイターになることも可能です。経験が浅く自信のない人は、企業へアルバイトとして入社し、ある程度スキルと知識を身につけて独立することも視野に入れておきましょう。
映像クリエイターに向いている人
受け身姿勢ではなく、自ら学んで行動できる人が映像クリエイターには向いています。最近では、スマホやパソコンに映像編集ソフトがあらかじめインストールされていることがほとんどです。専門知識がなくても映像編集に触れられる機会はたくさんあるので、本を読んだりネットで検索したり、自分なりに映像作品を作り上げる熱意と根気強さは活きてくるでしょう。
また、やはり体力が必要なケースも多々あります。働く環境は改善しつつありますが、テレビの現場では撮影が深夜に及ぶことも珍しくありません。編集や加工の仕事であっても、締め切り間際は納期に追われることもあります。それらの状況を乗り越えられる体力がある人は映像クリエイターに向いているでしょう。
映像クリエイターに必要な資格
映像クリエイターに必要な資格はありません。資格を持っていることで優遇されることはほとんどないため、自らのスキル次第と言っていいでしょう。CGに関わる映像クリエイターなら、「CGクリエイター検定」は有利になり得ます。
※C&Rが運営するクリエイティブアカデミーでは、3D/CG/VFXデザイナーを目指す学生の方にオンラインで受講できる、「CGブラッシュアップクラス」を開講しています!
デザインや2次元CGの基礎から、構図やカメラワークなどの映像制作の基本、 モデリングやアニメーションなどの3次元CG制作の手法やワークフローまで、 表現に必要な多様な知識を測ります。
参照:CG-ARTS | 検定(https://www.cgarts.or.jp/kentei/about/creator/)
資格を取得するために体系的に知識を学べ、個人が持つスキルを客観視するてがかりにもなります。
映像クリエイターの職種の可能性や市場規模は広がっている
【映像クリエイター 未経験 市場規模のまとめ】
- インターネットの普及で映像クリエイターの間口は確実に広がっている
- 動画配信市場は2026年には5,250億円にのぼると推計される
- 学歴などにとらわれず、基本的なスキルと知識を身につけることから始めよう
映像制作に関する技術革新のスピードは目まぐるしい速度です。そのため、今後、映像クリエイターの職に就けたとしても、未経験の時と同様に学ぶ姿勢が重要となります。映像編集者・動画制作者などの映像クリエイターは、開発された新しい技術を習得することで仕事の幅を広げられる職種です。将来的に映像クリエイターの道を目指す方は、必要な知識・技術をどんどん吸収して、クリエイターとしての幅を広げていきましょう。