インターネットがマスメディアを飲み込む勢いで成長する中、巨大プラットフォームとして世界中で市民権を獲得したサービスがYouTubeです。映像・動画クリエイターはもちろん、3DCGデザイナーにとっても、世界中のユーザーに親しまれているマーケットは参入価値が高いと言えます。なぜならば、YouTube内の3Dアバターとして、VTuberが人気を博しているからです。

VTuberについては当然知ってはいるものの、自身がその領域に参入することを明確にイメージできない方もいるでしょう。しかし、4年以上のキャリアがある3DCGデザイナーであれば、十分にVTuberモデリングに参画できる可能性があります。3DCGデザイナーに新たな可能性を見出すVTuber市場の状況やVTuberモデリングの将来性について解説します。

日本におけるYouTubeは巨大市場でVTuberも拡大路線

VTuberモデリング_VTuberのイメージ

最近では、VTuberという言葉が当たり前のように聞かれるようになりました。実際、多くのYouTubeチャンネルがVTuberによって配信されている状況です。まずはVTuberとは何かを改めて紹介したうえで、拡大するYouTube市場の現状を検証します。

そもそもVTuberとは

VTuberとは「Virtual YouTuber」の略語で、2Dや3DのCGキャラクターの姿で番組を配信するYouTuberのことです。そのため、アニメのようなキャラだけに限らず、動物やモノなど、あらゆるものを擬人化できる点がVTuberの特徴と言えるでしょう。また、VTuberのキャラクターは、Webカメラやアプリなどのサービスを活用することで、配信者の動きや会話による口の動きを簡単にトレースすることも可能です。

VTuberは配信者本人の姿をさらす必要がないため、これまで顔出しすることをためらっていた方の参入の障壁をなくしました。さらに姿だけでなく声を変えて配信する方も多いので、ジェンダーすら分からないVTuberも散見されます。

日本でのYouTube市場は3,500億円以上の経済効果

VTuberモデリング_Youtube市場

出典:オックスフォード・エコノミクス「YouTube Impact Report」

VTuberの台頭もあり、日本でのYouTube市場は拡大の一途を辿っています。イギリスの独立系コンサルタント会社であるOxford Economics(オックスフォード・エコノミクス)が発表した「YouTube Impact Report」によると、YouTube のエコシステムが2021年に日本で3,500 億円以上の経済効果をもたらしたと推計しています。また、YouTuberやVTuber ら10 万人を超えるフルタイム相当の雇用を創出したと算出しています。

一方、Googleは2020年に開催されたマーケッターの祭典「Brandcast」において、新型コロナウイルス感染症の影響によって、YouTube利用者の74%が「利用が増えた」と回答したと発表しました。さらに、18~64歳という幅広い年齢層のユーザーが「なくなったらもっとも寂しいプラットフォーム」をYouTubeだと答えたそうです。このようにYouTube市場は拡大傾向にあり、VTuberなどの3DCGを制作するデザイナーにとっても、参入価値の高い市場として期待されています。

3DCGデザイナーの活躍の場「VTuberモデリング」

VTuberモデリング_VTuberデザインのイメージ

拡大を続けるYouTube、さらに認知度を増しているVTuberのモデリングは、3DCGデザイナーにとって活躍のチャンスであることは間違いないでしょう。制作したVTuberが人気を獲得できれば、3Dモデラーとして名を馳せることも夢ではありません。YouTube市場で成功するための基礎となるVTuberモデリングの概要と制作ツールについて紹介します。

3DCGデザイナーの好機と言えるVTuberモデリングとは

VTuberモデリングとは、平たく言えば3DCGキャラクターのモデリングです。VTuberモデリングを実施する方法には、大きくゼロから3DCGのキャラクターを制作する方法と、VTuber制作ソフトを活用し、既存のパーツを組み合わせて制作する方法の2種類があります。

前者は、キャラクターのイラストを作成した後、モデリングを行って3D化し、VTuberの動きをキャラクターにトラッキングさせるために専用ソフトを活用してキャリブレーション(規格や基準に合わせるための作業)を行う手順が一般的です。一方、後者は、専用のソフトやアプリに搭載されているモデルをカスタマイズし、3DCGキャラクターを制作してVRMファイルに書き出した後、専用のソフトでキャリブレーションを行います。

VTuberモデリングの制作ツール

ゼロから3DCGのキャラクターを制作してVTuberのモデリングを実施するためには、おもに3つのツールが必要です。

1つ目は2Dでイラストを制作するためのツールで「Photoshop」や「CLIP STUDIO」などが挙げられます。2つ目が2Dのイラストを3DCG化するためのツールで、「Maya」「Blender」「3dsMax」「ZBrush」などが代表的です。そして、3つ目は「FaceRig」や「3tenePRO V2」など、キャリブレーションを実施するためのツールが必要になります。

一方、VTuber制作ソフトを活用する場合は「VRoid Studio」などのツールが一般的です。また、「Mirrativ」や「REALITY」「カスタムキャスト」「SHOWROOM V」など、スマホだけでVTuberを制作できるツールも多数提供されています。

決してハードルは低くはない人気VTuberの存在

VTuberモデリング_VTuber戦国時代

VTuberの市場規模は今後の成長が見込まれる反面、個人・法人を含め市場への参加者が増えています。そのため、VTuberであれば誰もが成功するというわけではありません。YouTuberの格差があるようにVtuberも戦略なき制作では太刀打ちできない時代だと言えるでしょう。成功のチャンスをつかむためにも、まずは人気VTuberの動向を把握し、今後のVTuberモデリングに必要な要素を学びましょう。

VTuberはすでに戦国時代

VTuberの中には、すでに数百万人のチャンネル登録者数を誇るケースもあります。中でも、もっとも有名なVTuberが「キズナアイ」でしょう。

VTuberモデリング_キズナアイ
出典:YouTube/A.I.Channel

「キズナアイ」は2016年からVTuberとして活躍しており、チャンネル登録数は2022年8月現在で307万人に到達しています。歌って踊るのはもちろん、ユーザーの悩み相談や絵を描くなど、活動の幅が多岐にわたる点が特徴です。

VTuberモデリング_ミライアカリ
出典:YouTube/Mirai Akari Project

次に紹介する「ミライアカリ」は、初音ミクのデザイナーが公式イラストを制作したことでも知られているVTuberです。2017年ごろから活動をはじめており、特徴的な決めポーズとセリフ、また自撮りアングルの視点で配信を展開することが多いため、ユーザーとの距離が近いVTuberと言えるでしょう。

また、最近はVTuber専門の芸能事務所が登場しており「にじさんじ」の「月ノ美兎」など、人気VTuberを多数輩出しています。現在では1万人以上のVTuberが存在しており、まさに戦国時代に突入したと言っても過言ではありません。

VTuberのモデリングもコンセプト・独自性が重要

VTuberの需要は今後も拡大することが予想されますが、VTuberモデリングができる3DCGデザイナーが全員売れるわけではないでしょう。人気を集めるコンセプトや独自性がなければ、手塩にかけてモデリングしたVTuberが鳴かず飛ばすということも十分にあり得ます。VTuberのキャラクターを制作する際には、差別化できる要素を明確化し、独自性のあるモデリングを実現することが、今後の3DCGデザイナーには求められます。

VTuberの多様なニーズに対応できる3DCGデザイナーを目ざそう

VTuberモデリング_まとめ

【VTuber モデリングのまとめ】

  • YouTubeの市場ではVTuberの需要も拡大傾向に
  • 3DCGデザイナーの好機と言えるVTuberモデリング
  • VTuberのモデリングもコンセプト・独自性が重要

YouTubeの市場拡大に伴い、VTuber市場も大きく成長しています。VTuberモデリングには3DCGのスキルをいかんなく発揮できるため、活躍のチャンスと言えるでしょう。登録者数が数十万~数百万レベルのチャンネルもあるため、3DCGデザイナーにとっては夢のある市場だと言えます。

しかし、「キズナアイ」や「ミライアカリ」などを筆頭に、すでに1万人以上のVTuberがしのぎを削っている状況です。そのため、VTuberモデリングができるからと言って、すべての3DCGデザイナーが成功できるわけではありません。今後のVTuberモデリングにはコンセプトや独自性が不可欠であり、他のクリエイターと差別化できるスキルの習得が求められます。人気VTuberを生み出して、3DCGデザイナーとして大成するためにも、生み出すキャラクターの個性や制作時の情熱を大切にしましょう。