自分の提供できるスキルやサービスを時間制のチケットにして売買できるTimeTicket(タイムチケット)。個人間カーシェアリングサービスのAnyca(エニカ)。シェアリングエコノミーという共通点がある2つのサービスについて、タイムチケット代表の山本大策さんと株式会社ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部の宮本昌尚さんに対談していただきました。SNS上では交流があったものの、今回が初対面というお2人。お互い新しいインターネットサービスを作るために大事にしていることや、今後の可能性について伺いました。


山本 大策(やまもと・だいさく)
株式会社グローバルウェイ
1978年広島生まれ。法政大学社会学部卒業。
みずほ情報総研株式会社、フィードパス株式会社、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズを経て、株式会社レレレを設立。
会社設立後は、コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会えるサービス「CoffeeMeeting」、個人が気軽に空き時間を売買できるサービス「TimeTicket」を開発。これらのサービスを利用して出会った人たちは累計10万人以上。
2016年10月にレレレの全事業を株式会社グローバルウェイに譲渡。現在は、新規事業開発部署グローバルウェイラボの室長として新規プロダクト開発・運営に携わっている。

宮本 昌尚(みやもと・まさなお)
株式会社ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部
カーシェアリンググループ コミュニティ&PRマネージャー
外資系コンサルティング会社のITコンサルタントを経て、デジタルマーケティングに特化したコンサルティング会社に転職。
ソーシャルメディアの黎明期から、ソーシャルメディアマーケティングの戦略策定、運用などを実施。
その後、新規部門を立ち上げ、コミュニティの戦略策定からユーザーと共創した商品企画などを実施。
その後、DeNAに入社し、メディア事業部を経てオートモーティブ事業本部へ。

インターネットサービスにおけるコミュニティの価値とは?

山本 元々はSNSで宮本さんが紹介されていた記事を読んで、「コミュニティマーケティングって何だろう?」と思ったんですよ。Anyca自体は元々知っていて、Anycaってそんな取り組みしてるんだと。タイムチケットもユーザーさん同士のコミュニティを大事にしてる時期だったので、半信半疑で記事を覗いたら圧倒されてしまって。こんなにコミュニティの作り方を言語化して図解してる人がいるんだなと感銘を受けて、すごく参考にさせていただいて。で、今日直接宮本さんにお聞きしたかったのは「インターネットサービスにおけるコミュニティの価値は何だと思われますか?」ということです。

宮本 コミュニティって利用者との関係の中にいろんな価値があって、それをマーケティング上の価値に置き換えると5つあるなと思っています。1番よく言われるのが「顧客生涯価値(LTV)」で、コミュニティ内の人たちがたくさん買ってくれるということですね。それ以外にも他の友人を誘ってくれる「紹介価値」であるとか、SNSで発信をしてくれる「影響価値」とかですね。意外と見逃してしまうのが「知識価値」や「サービス共創価値」で、発信してくれる人たちと一緒にサービスを作っていくことができる、という価値です。

Anycaでは何か問題があったときに運営側に聞いていただくこともあるんですけど、利用者同士で問題を解決することもあるんです。このようなサポート機能も自然に発生していくところが、マーケティング上の影響としてはありますね。

山本 この5つの価値を知ったことで、やりたいことが明確になりました。タイムチケットも特にサービス共創価値のところで、利用者さんと一緒にサービスを盛り上げてサービスの価値を上げていくことがすごく重要で。このサービスを使っていることが自分にとってすごく嬉しいし、人生にとってプラスになると感じてもらえるようなサービスにしていきたいなと思っているので。

ライフステージが変わる瞬間に貢献できるのが嬉しい

宮本 タイムチケットは、販売側のスキルと買い手側のマッチングという側面もあると思うんですけど、サービス制作側として、こういうマッチングをしてほしい、などの思いはあるんですか?

山本 そうですね。作った側の人間の気持ちで言うと、売ってる内容はさほど気にしてないです。体験として提供したいのはまずホストとゲスト、売ってる人と買ってる人がいるんですけど、ホストが自由に作ったチケットが売れると言う体験。しかもそれがなるべく早く売れること。買う人にとっては、自分の悩み事とか今困っていることを助けてくれる人の時間を買って、その体験がすごく良いことであるという。ここがうまいマッチングになって、お互いが満足して良いレビューが書かれていれば、売ってる内容はそれほど重要ではないかなと。もちろんクレームが来たら掲載を止めるものもあります。

「タイムチケットでしかこういう体験できないよね」っていうのを増やしていきたいんですよね。同じようにスキルを売れるサービスって世の中にあるんですけど、タイムチケットはスキルを売るというよりはあくまで時間を売るというコンセプトです。なのでスキルシェアとは捉えてないんですよ。時間を売ってます、それが新しいですよねという。だから売るのは別にスキルじゃなくてもいいんですよ。ただ単に一緒にいますだけでもいいんです。

宮本 なるほど。Anycaもたくさんクルマがあって、安いから使ってもらうっていうのもアリなんですけど、できればそれよりは、これまで乗れなかったクルマに乗ってみるとか、オーナーとのつながりが楽しいとか、そういう風に使って欲しいなっていうのが個人的にはありますね。それがサービスとしての理念「クルマとの関係をもっと気軽で楽しいものにしたい」でもあるので。

山本 Anycaの利用者さんのレポートを読んでると、プロポーズするためにAnycaでクルマをシェアしてたりとかしますよね。何かそういう人生が変わるシーンに協力できるサービスっていうのはすごくいいなと。タイムチケットもこれから「フリーランスになりたいんだけどどうしたらいいんだろう」ということでフリーランスの先輩のチケットを買って、すごく人生が変わったみたいな事例もあったりして、ライフステージが変わる瞬間にサービスが貢献できてるっていうのはシェアリングエコノミーのすごくいいところで。やっぱり人と会って人生が変わるってすごく多いんですよね。

宮本 そうですね。偶然の出会いもたくさんあります。クルマをシェアしてるドライバーとオーナーで、ドライバーの会社にオーナーが転職したみたいなこともあるんです。そんなこと予想せずに出会ったのに、意気投合して仲良くなって転職したみたいな。

泥臭くやっていくからこそ他が真似できない価値が生まれる

宮本 僕らのサービスはコミュニティの力を使って品質をどう伝えるか、どう担保するかが重要だと思うんですが、タイムチケットさんではどのように対策されてますか?

山本 これもコミュニティの視点でいうとタイムチケットは「ゴールド認証制度」っていうのがあるんですね。認証の仕方はすごく泥臭いんですけど、売ってるユーザーさんと運営メンバーが直接会って、お話しして大丈夫そうだなと思った方につけてるんですよ。これは多分タイムチケットしかやってないんじゃないですかね。

――それがあるだけで買う方も安心ですよね。

山本 そうだと思いますし、むしろそういう人間味あふれる制度のほうが、スキルシェアのようなコンセプトのものには相性がいいのかなとも思いますね。

宮本 大事ですよね。Anycaも週に1回程度イベントがあって、今日もこの後50人くらい集まって交流会なんです。やっぱり他人のクルマに乗るってハードルがあるので、こういう人になら自分のクルマをシェアしてもいいなとか、こういう人のクルマに乗ってみたいなって思うのって、人と人とが会わないとわからない。僕らとしてはそういうコミュニティを作っていくのが大事だし、最後は個人間カーシェアの文化を作るのが目標でもあるので。

文化って僕らサービス側だけで作るんじゃなくて利用者の皆さんと一緒に作るものなので、利用者と接してないとわからないし、できないはずなんですよね。なのでこのサービスの中にはコミュニティも内包されてると思ってます。

山本 頭のいい人たちはおしゃれにネットマーケティングとかで一気にユーザーを集めようとかって考えるかもしれないですけど、意外に泥臭くイベントを細かくやっていくのは、他が真似できない価値を積み上げているし満足度が全然違うんですよね。そういうユーザーの方ってファンになってくれるとずっとリピーターになっていただける確率が高いので。でもこれができる人ってなかなかいないんです。タイムチケットとかAnycaとかはちゃんとその価値がわかってやってるっていうのは他と差別化できてるサービスだなという思いがありますね。

宮本 僕は利用者っていうよりもスタッフに近いなと思っていて。ファンチームっていうのが1個あるっていうイメージなんですよね。エンジニアチーム、デザイナーチーム、ファンチームみたいな。Anycaの専属スタッフは15人くらいなんですけど、ファンチームっていうのが30〜60人くらいいて。その人たちに「こういうこと知りたいんだけど」って言ったらすぐアイデアをくれたり、イベントで受付手伝ってくれたりする。そういう風に手伝ってくれる利用者がいるって考えると、15人だけで何かをやっているというよりももっと大きなことができるなと思いますね。

視野を広く持った上で「好き」を貫き続けたから今がある

山本 タイムチケットはフルタイムの会社メンバーとしては4名です。だけどアンバサダー制度があって、それを入れると全国に30名くらいいて。イベントのスタッフを手伝っていただいたり、オンラインで機能を早めにお知らせしてフィードバックをいただいたりしてます。

――会社メンバーはかなり少数精鋭ですよね。

山本 それぞれ複数の業務をこなして頑張ってます。僕のよくないところでもあるんですけど、元々自分がそういうタイプだったので(笑)。未だに全部に関わりますし。エンジニアにも基本的には全部やるように言っていて、「エンジニアだからこれやりません」っていうのはやっぱりちょっと視野が狭くなっちゃうんですよね。タイムチケットだけでのキャリアじゃなくて今後のキャリアを考えても。あまり早めに自分の領域を狭めることには僕は反対なんです、特にエンジニアにとっては。

宮本 僕もそう思いますね。Anycaもエンジニアが交流会に参加することがあるんですけど、利用者と接することで「この人たちのためにサービスを作っている」と感じられるし、その人たちの要望を聞ける場でもあるなと思っていて。幅を広げるっていう意味で利用者と接すると、自分の作ってるサービス自体を考え直す機会にもなるので。

――Anycaもタイムチケットも、自分の目で人が楽しんでいる姿を見れるっていうのは大きいですよね。

山本 その姿を見たいからずっとやってますね。人と人を会わせて、楽しんでもらう場を作ることが好きなんです。結局あまり学生時代から好きなものは変わっていないので、基本的にちょっとずつやり方を変えて、時代に合わせてやっているという感じで。宮本さんもそうだと思うんですけど、肩書きや収入を気にして好きじゃないものに手をつけるよりも、好きなものを突き詰めてやっていくほうが、最終的にはかけがえのない人材になるんじゃないでしょうか。

宮本 僕も好きなことしかできなくて、大学生のときも「授業に行きたくない」と思って過ごしていた関係で2年留年してるんですけど(笑)。でも僕自身その人にしかできないことがあればそれを発信して、僕の考えた事に共感してくれる人がいて、気づいたら人とつながっている環境になってきているんですよね。となると、やはり好きを貫き通していったほうが、他人から言われたやりたくない仕事をして誰かのコピーみたいになるより、いいと思いますね。

未来を見据えてそれぞれの文化を普及していきたい

――お2人の今後のヴィジョンはありますか?

宮本 私としては、今後、自動運転の社会になっていくだろうと想定しています。例えば郊外に住んでいて、朝起きたら、自動運転車に乗って会社に行く。会社についたら、「カーシェア」というボタンを押したらそのクルマはいろんなところを移動して必要な人に使ってもらう、みたいなことができるんじゃないかと。
個人間カーシェアが普及すれば、そういう社会が作れるだろうな、と思っています。ただそれって個人間カーシェアの文化がないとそもそもできないんですよね。1年前は個人間カーシェアの文化って全然なかったんです。「他人にクルマをシェアするなんてできない」感じだったんですけど少しずつ変わってきています。もし、自動運転社会になって、会社にいる間にクルマがぐるぐる動いててくれたほうが効率的なはずなんですけど、事前にその文化を作っておかないといきなりはできないので。最近はどんどんクルマ離れが進んでいたりもするので、個人間カーシェアの文化を僕らが作ることで変えていけるんじゃないかなと思ってます。

――若い人も乗りやすくなりそうですよね。

宮本 そうですね。クルマは好きだけど都内だと特に維持費がかかるから持てないという人も、Anycaだと色々なクルマに乗れるので。山に行く時はSUV、海に行く時はオープンカーみたいに、自分がクルマを所持しているときよりも多くのクルマに乗れて楽しいんです。そういった文化を普及させていきたいですね。

山本 タイムチケットとしては、具体例で言うとタイムコインっていうタイムチケット内で使える仮想通貨を発行して、タイムチケット内で流通させることを計画中です。インターネットってやっぱり面白くて、黎明期の話からいうと掲示板やホームページ、ブログをやったりSNSをやったり個人が発信して小さいメディアが分散していったのがこれまでの歴史で。

そしてこれからは個人的には経済圏が分散していくイメージなんです。小さい経済圏がいっぱいできてくる。それこそコミュニティですよね。タイムチケット内でも経済圏が完結して円とは違う独自の価値が動いてる、みたいな。だから、タイムチケットのユーザーはタイムコインにすごく価値を感じているっていうのができると、さらにコミュニティが結束して強いものになる。タイムコインだけで生活できるようになると、経済的に独立したすごい世界になれるんですね。それを実現させたいなと思いますね。

宮本 そうなってきますよね。それぞれ趣味嗜好というか、僕はアイドルコミュニティ、僕は野球コミュニティ、僕はタイムチケットコミュニティ、とそれぞれが好きなコミュニティにいて、その中で経済が回っていく形にどんどんなっている気がしますね。

山本 そうですね。タイムコインを作りたいっていう気持ちは、コミュニティに貢献してくれた人に時給つけるのって違うなって思うからなんです。ボランティア的にイベントでスタッフとかやってくれた方にお礼はしたいんですけど、お金払うのは何か違うよねっていう。そういうときにコミュニティだけで流通してるものだったら払いやすいなと。

――お金より気持ちが込めやすそうですよね。

山本 そうなんです。このコミュニティに貢献してくれてありがとうという気持ちが出しやすいんですよね、日本円よりは。そういうシーンをいろんなコミュニティが持ってて、そこに従来の通貨がハマってないっていう感覚がありますね。なのでこれからコミュニティの時代が来ることは間違い無いだろうなと思ってます。

コミュニティ内のハブになれる人が活躍する時代

――これから活躍するクリエイターとはどういう人だと思われますか?

宮本 利用者との関係を作っていて、その関係を仕事に生かせる人だと思います。関係ができてるだけだとマーケティング成果には結びつかないので。その人たちの声を開発に結びつけるとか。サービスやイベントを一緒に作るところに活かせる、ハブになれるような人っていうのがこれから重要になってくるだろうなと思いますね。

山本 前回インタビューしていただいたときに、これからは最短距離で自分の思ってるものを出せる人がいいだろうということで、それに加えて今日の話の流れで言うと、最短距離で自分の作ったものをシェアしつつ、且つシェアしたものを使っていただいたユーザーさんや協力者のコミュニティを大事にして、その人たちと一緒にサービスをどんどん良くしていくクリエイター。面倒くさがらずに色んな人と一緒にやっていける人っていうのが重要ですし、そういう人たちって応援したくなりますから。

――ありがとうございました。

インタビュー・テキスト:上野 真由香/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:CREATIVE VILLAGE編集部