インターネット普及前の時代では、マーケティング施策の効果を検証するのに電話や直接の聞き取りなどでの地道な調査が必要でなり、多大なコストと労力がかかりました。一方で、インターネット時代のwebマーケティングにおいては、アクセス数やユーザー属性などの把握が行えることで比較的容易に効果の測定・検証を行えます。

それゆえに特にwebマーケッター歴がそこまで長くない方は、効果検証を重視して意識的に取り組むことをおすすめします。なぜマーケティング施策のやりっぱなしがいけないのか――。効果検証が不可欠な理由や、検証で用いる指標の重要性について解説します。

「やりっぱなし」はマーケティング施策において大敵

PDCAサイクルの画像

webマーケッターという職種の役割は、マーケティング施策を実行して成果を出すことです。それゆえに、特に成果が出た場合に、「現状の施策は正しかったから、継続すれば成果が出続ける」と判断して効果検証しないケースもあるでしょう。

しかし、結論としては、結果の良し悪しにかかわらず「やりっぱなし」はNGだと言えます。なぜならインターネットでのマーケティング施策は、コンバージョンや成約数など細かく効果の検証を行えるからです。施策が上手くいった場合も、結果が出なかった場合でもそのデータの蓄積が今後のマーケティング活動の糧になります。効果検証を行ううえでのもっとも基本的な考え方は、「PDCAサイクル」です。

PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取った業務管理の手法であり、マーケティングにおける基本とも言えます。計画から改善までを1つのサイクルとし、サイクルを継続して回し続けて検証することで施策における精度向上を図ることが目的です。マーケティング施策においても、多くのwebマーケッターが下記のようなPDCAサイクルを実践しています。

【マーケティング施策のPDCAサイクルの一例】
・P(Plan、計画):データ分析に基づいてセグメント(市場細分化)し、施策の計画を立てる
・D(Do、実行):複数のターゲットに対して、インターネット広告などの施策を実行する
・C(Check、測定・検証):購買・行動データに基づき、マーケティング施策の効果を検証する
・A(Action、対策・改善):データに基づき効果を分析し、より成果を高めるターゲティングを行う

上記のインターネット広告の施策の例のように、webマーケティングの特徴はデータによってどの施策でどんな成果を出せたのかが容易に把握できることです。たとえば、資料請求の際に登録されたメールアドレスを管理し、メールマガジンなどのプッシュ型の施策を実行してみるなど、反応があった顧客に対しては次の手を打つこともできます。つまり、マーケティング施策を続ける限り、PDCAサイクルの実践には終わりがないとも言えるでしょう。

効果検証ができない要因は不明瞭な指標のせい

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まだwebマーケッター歴が浅い担当者の中には、クリティカルな効果検証が行えていない場合もあるでしょう。マーケティングの効果検証が不十分になってしまう要因としては、指標の不明瞭さが挙げられます。マーケティング指標は、マーケティングの成否を判断するうえで不可欠です。また、施策の分析や評価を行ったうえで、次の手を打つ際にも重要な判断材料となります。失敗しがちなのは、「何となく」「直感的に」という具合に不明瞭なまま施策を行っているケースです。

一方で指標が明確になることで、その成否の判断や効果検証が容易になります。ではマーケティング施策を行ううえで、どんな指標を立案すべきでしょうか。一般的な指標としては、KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)やKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)があります。

KGIは、マーケティングなどのビジネス戦略の達成において、何をもって成果とするかの指標です。いわば施策において到達したいと考える最終的なゴール(目的)です。指標化するうえでは、半年後・1年後の理想像(目指すゴール)を見据えて設定しましょう。一方のKPIは、KGI達成のための各プロセスが適切に実施されたかを定量的に評価するための指標。つまり、「ゴール到達のために具体的に何をするか」の指標化したものであり、ゴール到達に向け日々追うべき指標は何かという観点で考えるのが基本です。

ちなみに、KGI/KPIの指標を立てる際には「SMARTの法則」が役立ちます。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(計測可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)の頭文字であり、具体性の高い隙のない指標を立案するうえで助けになる考え方です。

「何のため」という本質的な目的をブラさない

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マーケティング施策を遂行する際に、webマーケッターは数多くのツールや膨大なデータに接することになるでしょう。そのため、目的を見失い「何を達成するためにwebマーケティングを行っているのか分からない」「どこを目指しているのか分からない」という状況に陥るケースがあるので注意が必要です。

イソップ寓話に「目的意識の異なる3人のレンガ職人」の考え方という有名な話があるように、レンガを積む目的がただ何となくやっているのか、お金のためにやっているのか、建物を造るためにやっているのかで対応の意識レベルは大きく変わります。ただ、何となく作業に徹してしまうのはマーケティングにおいての大敵だと言えるでしょう。

つまり、「何を達成するためにマーケティング施策を実施しているのか」という本質的な目的を明確化し、その進捗・成果をはかるためのツール・データだけの活用に注力すべきです。マーケティングやPDCAサイクルを回すことによる効果検証の本質的な目的は、「価値の創出」です。上記のレンガ職人においては、建物を完成させることが価値であり、レンガを積んでいる作業自体に価値があるわけではありません。「価値創出」という明確な目的をブラさずに施策に注力することが大切です。

顧客への価値提供のためには効果検証が重要

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【「効果検証」についてのまとめ】

  • マーケティングを行う際には、PDCAサイクルを回して効果を検証するべき
  • 精度の高い効果検証を行うにはKGI・KPIなどの指標の設定が重要
  • 「価値の創出」というマーケティングの本質を見失わないようにすること

webマーケティングにおいて施策の「やりっぱなし」はご法度です。必ずPDCAサイクルを回して効果検証を行いましょう。効果検証を行う目的は価値創出です。成果を出すことがwebマーケッターの使命であり、効果の検証なくして「顧客に価値を提供する」という使命を果たすことはできません。そのためには、指標として「KGI」「KPI」を設定し、定量的に数値に基づいて効果の測定・検証を実施することが重要です。

また、複合的にデータを分析することで見えてくるものもありますが、その実行には高度なスキルが必要になります。また、膨大なデータに接していると本質的な目的を見失いがちになります。そのため、webマーケティング歴が1~2年くらいの方は、まずはシンプルに「何を達成するためにマーケティングを行っているのか」を明確化し、その進捗をはかるために必要なデータだけを注視しましょう。