こんにちは、CREATIVE VILLAGE編集部の澤田です。

10月13日(火)、16日(金)にFukushima Tech Create-ビジネスアイデア事業化プログラム-、
第2回ワークショップが行われました。キーワードは「繋がり・結びつき」
皆さん少しずつ自分の事業アイデアを共有し、フィードバックをもらう機会が出てきたようですよ。

<DAY2の講師は…>
平岡氏プロフィールDAY1に続き講師を務める、0→1Booster・平岡です!
前回の講義ではアイデアをビジネスモデルに落とし込むためのフレームワーク「リーンキャンバス」を紹介し、次のプロセス仮説検証の概要をお伝えしましたね。
今回はより具体的に仮説の検証方法をお伝えしていきます。採択者の方にはピッチの実演もしてもらいますよ。

仮説検証は「小さく、早く、安く」を繰り返す

仮説検証とは、これから提供しようとしているサービスが本当にお客さんの課題解決に繋がるかを追求するプロセスでした。
効率良く検証を進めていくには、いくつかのポイントがあります。

検証したい内容を一つに絞り、検証単位を細かく切って順番に検証する

“神”対応のコールセンターや独自の企業文化で知られるアメリカの通販企業・ザッポスは、サービス立上げ時のニーズ検証においても優れた事例を残しています。

仮説検証の事例靴の通販サイト「Zappos」
近所の靴屋で在庫の写真を撮らせてもらいWeb上に掲載することで「そもそも靴はオンラインで売れるのか?」を検証。注文が入ったら自分たちで靴を購入・発送したそうです。

この事例では「ニーズの有無」に絞って仮説検証をしていますね。
商材、サービス設計、WebのUIなど検証が必要な項目は他にもたくさんあったでしょう。しかし複数の検証を同時に行うと、何が結果の良し悪しに響いたのかわからなくなってしまいます。検証するポイントを絞ることで改善点が明確になり、効率良く改善サイクルをまわしていくことができますよ。

早く、安く、何度もつくる

仮説を検証するために試作品(プロトタイプ)をつくるときは、コストを最小限に抑えることをお勧めします。もし仮説が外れたとしても、またすぐに次の試作品をつくれるようにしておくためです。

まずは以下のように、身の回りのものを使って早く安くつくりましょう。

・紙や段ボールを組み立てる
・マンガや絵に描いてみる
・レゴブロックでつくってみる
・Webページを無料作成できるサービスを使ってみる
・営業資料にしてみる

アイデアや考えは発信してなんぼ。採択者の事業アイデアを一部公開!

皆さんの中にはすでに仮説検証に取り組んでいる方も多いかと思います。
せっかくなので、多くの起業家や経営者が集うこの場で一度アウトプットしてみませんか?

Sさん/個人事業主

まちづくり企業への就職を機に、大阪から福島の真ん中・双葉群楢葉町に移住して3年目。
現在は独立して、チャレンジする起業家・事業家の背中を押すことをミッションに新規事業の併走支援等を行っています。

僕は双葉群に若い人の“希望”になる事業や企業を作り出したいと考えています。
会社を辞めたとき、僕は楢葉町で育った友人に「いいなぁ…」と言われました。この言葉に「地方ではキャリアの選択肢がいかに限られているか」が表れていると感じたんです。

そこで、僕が設立するのは日本一のオーガニック・ノンアルコールドリンクのメーカーです。
レシピには地域の食材を取り入れます。販売中のクラフトコーラにも楢葉町の柚子を使っています。
そしてゆくゆくは地域内外の企業や学生を繋ぐネットワークを構築し、様々な価値を提供しながら人材交流を活性化していきたいと考えています。
駆け出しの起業家ですので、ビジネス面で改善できる点があればご指南頂ければ幸いです。

<会場からのコメント>
・オーガニック食品の専門家を一人ご紹介できます。
その方が経営されている企業では、有機栽培農家へのサポート事業や画像解析技術を用いた農作物のおいしさ見える化サービスを提供しています。調べてみてはいかがでしょうか。(Hさん)

Hさん/経営者

80才を越えてもなお現役の経営者としてがんばっております。
飯坂温泉で生まれ、その後58年東京住まいでコンサル業をしておりました。経営危機に直面した福島の同族会社を救うため8年前にUターン。会社の再建は果たしましたが、今度は妻が重度の認知症を発症し老々介護の戦いもして参りました。

今回の助成事業の命題である、現在人が戻らない浜通りをどうしたら再興できるか?
この問いに対して、東京住まいから福島に戻り仕事をしながら妻の老々介護で戦ってきた体験、私の過去の経験、ノウハウ、人脈を総動員して考えました。

そこで着想したのが、出た人が戻らず新たな人もなかなか来ない荒廃の浜通りに、介護や医療の配慮が行き届きより進んだローテクと最先端のハイテクを駆使した介護の理想郷を創る構想です。
2025問題で溢れ出る東京の介護難民にも多数来て頂き、更には移り住んで頂いて福島と東京の双方にとって大きなメリットをもたらす、福島介護戦略事業構想「ビバ福島ケア・プロジェクト/VFCP」を提案するに至ったのです。

お2人ともありがとうございます!事前予告なく募ったにも関わらず、素晴らしいピッチでした。
アウトプットをすると様々なリアクションやフィードバックがもらえますね。これがサービス改善の重要な手がかりとなります。詳しく見ていきましょう。

アウトプットして、ユーザーを見つける

前回の講義で、仮説検証には2段階のステップがあるとお伝えしました。
第1ステップ「課題やニーズの有無」検証するには以下のような手法があります。

・アンケート
・ユーザーインタビュー
・行動観察
・Web行動解析(Webサービスを構築する場合)

用途や目的に応じて、適切な手法を選びましょう。
今回は「アンケート」と「ユーザーインタビュー」を重点的に紹介します。

アンケート

ユーザーのニーズを知る手法として、真っ先に思い浮かべる人も多いでしょう。
Geogleフォームなどの無料作成ツールで簡単に作成できます。最近はインスタグラムで「AとBどちらが良い?」といった簡易アンケートを拡散することもあるようですね。
このようにアンケートは、母数を集めて大まかな検証をするには有効です。

ただしアンケートから得られる課題やニーズには限界があることも覚えておきましょう。
自動車の普及・大衆化を促進したことで知られるヘンリー・フォード氏は
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」という言葉を残しました。
これはユーザーは自分の欲しいものを本当にはわかっていないということを表しています。

アンケートは仮説として設定したニーズや課題をより強く感じている人を選り分けるために使うといいです。そして、その人達にインタビューを行いましょう。
そうすることでサービス改善に必要な情報を引き出しやすくなります。

ユーザーインタビュー

ターゲットユーザー層に直接ヒアリングし、一次情報にアクセスする手法です。
ただしアンケートと同じく、ユーザーの回答はあくまで表層的なものにすぎません。
インタビューで重要なことは、対話を通してその課題の背景を知ることです。

・ユーザー側に「きっと変えられない、分かってもらえない」という思い込みがないか。
・その思い込みは、どのような業界の仕組みや構造から生まれているのか。

これらのことを「知ろう」としてみてください。
インタビュー時はこれらの情報を引き出せるよう、臨機応変に質問を変更・追加しながらインタビュー相手の自由な反応を促します。
また深層心理はジェスチャー・表情・声のトーンに表れやすいため、聞き手側はインタビュアー以外に観察する人・記録する人も一緒に臨むといいですね。

インタビューは、自分たちのサービスをお金を払ってでも欲しいと思ってくれる人を見つける一つの手段です。話を聞く人数の目安は5~10名ほどと言われていますが、それ自体が目的になってはいけません。
アイデア~事業化のフローをまとめた書籍の中には仮説検証のHowToがより具体的に紹介されています。初期の仮説検証は書いてある通りにやるだけでスムーズに進みますよ。

参考書籍『起業の科学』『RUNNING LEAN』
▲起業分野で有名、且つ実用的な2冊

実際行われたピッチを見て、目標を再確認

最後に実際に行われたピッチと照らし合わせながら、ここまでの内容を振り返りましょう。
企業の人事・労務のデジタルシフトを推進するサービスをいち早く提供し始めた企業・スマートHRをご存知の方は多いと思います。YouTubeにあがっているCEO・宮田氏の12分間のピッチが参考になるので、ぜひ見てみてください。
宮田氏は前半の4分ほどで事業創造の動機~仮説検証~ソリューションに至る流れを分かりやすく説明しています。
スマートHR宮田氏の事業創造プロセス

人事労務の仕事を経験したことのない人にもソリューションの価値が分かるように、うまく数字を交えて説明している点も特徴的ですね。
このように聞き手に納得感や共感が生まれるピッチを目指して、これからのワークショップでも準備を進めていきましょう。
次回はツクリエ・熊谷さんを進行役に、グループワークを通して仮説検証を実践していきます。アイデアを発想するためのはテクニックなどもお伝えしていきますよ。

Fukushima Tech Create-ビジネスアイデア事業化プログラム-とは?
東日本大震災によって失われた地域の産業復興を目指す「福島イノベーションコースト構想」内のプログラム。独自技術を用いた起業や新規ビジネス創出にチャレンジする企業・個人をワークショップやメンター制度を提供している。

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