2024年のアニメ制作市場は、前年を4.0%上回る3621億4200万円となり、過去最高を更新した。帝国データバンクの調査によると、テレビ、映画、動画配信など複数のプラットフォームで需要が堅調に推移し、元請制作では二次利用を含むライセンス事業が好調だったことが市場を押し上げた。大型作品やヒット作を手がけた制作会社では売上高が大幅に増加し、市場全体の拡大をけん引した。一方、制作コストの高騰やアニメーター不足が顕在化し、特に元請・グロス請では利益率の悪化が目立ち、赤字や減益を含む「業績悪化」の割合が60.0%に達した。
元請・グロス請の平均売上高は27億4900万円で4年連続の増加となったが、制作本数の増加や版権収入の拡大にもかかわらず、人件費や外注費の急騰が収益を圧迫した。フリーランスや下請スタジオへの外注増加も、業界全体の人材不足によりコストが高止まりし、制作工程の内製化による維持費の上昇も負担となった。専門スタジオでは平均売上高が17年ぶりに4億円台を回復し、受注増が続くものの、紙ベースの制作工程を残す企業では業況が悪化し、分野による二極化が進んでいる。
2023年のテレビアニメ本数は300本と過去10年で最少となり、配信市場へのシフトが顕著になった。動画配信サービス市場は前年比51.4%増の2501億円と初の2000億円超を記録し、商品化市場も過去最高を更新。2024年には『負けヒロインが多すぎる!』『ダンダダン』などが話題となり、『劇場版 名探偵コナン 100万ドルの五稜星』がシリーズ最高の興行収入を達成した。2025年は『【推しの子】』『薬屋のひとりごと』など注目作が続き、京都アニメーションは放火事件後初の完全新作『CITY THE ANIMATION』を放映するなど復興への動きもみられる。
海外取引では、米国との契約が最多ながら減少傾向にあり、中国も同様に低下した一方で、韓国や台湾との取引が増加している。外注先は中国から韓国・台湾へと多様化し、ベトナムやフィリピンなど東南アジアとの関係も拡大している。
調査対象のアニメ制作会社は2025年7月時点で293社と前年から減少し、小規模事業者の廃業や経営統合が進んだ。東京都に集中しており、特に杉並区や中野区、練馬区が多い。従業員20人以下の企業が半数以上を占めるが、全体の従業員数は1万3492人と前年より9.9%増加した。
市場の拡大が続く一方で、低賃金や長時間労働、不公正な請負契約などアニメーターの労働問題は深刻化している。欧米では労働搾取によるコンテンツ排除の動きが強まっており、改善が進まなければ日本アニメが国際市場から排除される可能性もある。持続的な成長には、賃金水準の引き上げや労働環境の適正化、技術継承に向けた取り組みが急務となっている。



