株式会社電通クリエイティブピクチャーズは、映像制作における新技術「バーチャルプロダクション撮影」の普及と推進を目的に、芸能プロダクション・フラームと共同で短編映画2作品を制作し、2025年6月13日よりYouTube上で無料配信を開始した。作品のタイトルは『mopim(ムパン)』と『道子、未知満ちて。』で、主演はそれぞれ有村架純、鳴海唯が務めている。配信は8月31日まで、両社の公式YouTubeチャンネルで行われる。
今回の映画制作は、電通クリエイティブピクチャーズが所有する横浜市鶴見区の撮影スタジオ「FACTORY ANZEN STUDIO」に常設された大型LEDディスプレイを活用したバーチャルプロダクション技術を用いて行われた。この手法は、事前に撮影した映像をスタジオ内のLEDスクリーンに投影しながら撮影を行う「スクリーンプロセス」と呼ばれ、現地ロケーションに出向くことなく、リアルな映像表現を可能にするものである。
この技術にはさまざまな利点がある。たとえば、時間や天候の影響を受けることなく、同じシーンを必要なだけ撮影できる点や、海外や架空のロケーションをスタジオ内で再現できる点が挙げられる。また、背景映像が実際に目の前に表示されることで、俳優はより自然な演技を引き出される。さらに、移動や美術セットに伴う環境負荷の軽減にも寄与している。
有村架純主演の『mopim(ムパン)』は、百歳の誕生日を迎える老婦人が過去に伝えられなかった思いを亡き夫に伝えるため、若き日の姿に戻り最後の旅に出るという、静かで温かな物語となっている。脚本・監督は水落豊が務め、高井息吹による主題歌「moonlight」が作品を彩っている。有村は「10分の作品とは思えない映像の世界観に胸が高鳴った」と撮影を振り返り、技術と物語が融合した作品への手応えを語った。
一方、鳴海唯が主演する『道子、未知満ちて。』は、360度カメラカーのドライバーとして日常を過ごす女性が、ある出来事をきっかけに内面の変化を迎える様子を描いた作品である。脚本・監督は武井咲華が手がけた。鳴海は「スタジオで撮影されているとは思えないリアルさがある。新しい映像体験になると思う」とコメントしており、実際に運転しているかのようなリアルな演出に感動したと語っている。
電通クリエイティブピクチャーズは、今後もこうした先進技術を活用しながら、高品質な映像コンテンツの制作を通じて、人々の心を動かし、社会に良い影響を届けていくとしている。短編でありながらも技術と物語が融合した2作品は、未来の映像制作における新たな可能性を提示している。