串田壮史監督によるSF短編映画『ラストドリーム』が、2025年7月に韓国・富川市で開催される第29回プチョン国際ファンタスティック映画祭(BIFAN)にて、世界初上映されることが決定した。本作は、AIによって映像・台詞・音楽のすべてが生成された日本初の実験的作品であり、同映画祭内の「Bucheon Choice: AI Films」部門に正式招待された。
この部門は、2024年に新設されたAI映画に特化した国際コンペティションであり、創造性と完成度を競い合う場として注目を集めている。昨年はフランス作品『Where Do Grandmas Go When They Get Lost?』が最優秀AI映画賞を、韓国作品『Snowfall』が技術功労賞と観客賞を受賞している。今年は、串田監督の手による全編AI生成の短編作品が、この革新の最前線で世界に初めて披露される。
『ラストドリーム』は約10分の短編SF映画で、言語は英語(日本語字幕付き)。物語は、最終戦争によって地球が壊滅した後、宇宙空間を漂う最後の人類が神秘的な岩と共鳴し、地球誕生から滅亡までの46億年の記憶を目撃するという壮大な内容となっている。監督はこの作品について「死にゆく魂は、走馬灯によって人生の意義を見つける」と述べ、人間の生死を照らす視点を、地球という存在に重ねて描いたと語る。パンデミックや戦争を経て“絶滅”を意識せざるを得なくなった現代人に向けて、「地球という存在の走馬灯は、私たちに何を見せるのか?」という問いを投げかける意欲作である。
監督の串田壮史は1982年生まれ、大阪出身。所属するピラミッドフィルムにて、長編デビュー作『写真の女』(2020)が東京国際映画祭やファンタジア映画祭などで高評価を受け、続く『マイマザーズアイズ』(2023)では「Jホラー第三の波」と称されるなど、国際的な評価を高めてきた。
『ラストドリーム』は、ピラミッドフィルムが設立した新組織「PYRAMID AI」の初プロジェクトでもある。PYRAMID AIは、生成AIを活用した映像制作やプロンプト設計、コンサルティングなどを手がけ、AIとクリエイターの協働による新たな映像表現の確立を目指している。同組織の技術と創作力が結実した本作は、日本におけるAI映画制作の新たなマイルストーンとしても位置づけられる。
映画祭は2025年7月3日から13日まで開催され、公式サイトではプログラムや上映情報が順次公開される予定。また、『ラストドリーム』の予告編もYouTubeにて公開されており、SNSアカウントを通じて最新情報が発信されている。AI映画の可能性を問う話題作として、今後の展開にも注目が集まる。