株式会社書泉が2022年より開始した復刊プロジェクト「書泉と、10冊」「芳林堂書店と、10冊」が、累計40作品・65,000冊以上の復刊という成果をあげ、いまもなお勢いを保ちながら継続している。この取り組みは、株式会社アニメイトホールディングスのグループ会社である書泉が、入手困難となった名作を手頃な価格で届けることを目的に、志を同じくする出版社と連携して実施しているものだ。
この復刊企画の原点には、「惚れ込んだ本は、できるだけ多くの人に読んでほしい」という本屋としての矜持がある。書店員たちが心から推薦したい作品の中には、流通の関係で絶版となり、古書市場で高値がついてしまっているものも少なくない。そうした作品を、より多くの人に届けたいという思いが、本企画の根底にある。
また、ビジネス的な観点でもこの取り組みは意義深い。本は全国どこで買っても定価が変わらないが、「ここでしか買えない本」があれば、書泉や芳林堂書店を目的地に選んでもらえる確率が高まる。出版社と直接買取契約を結び、販売価格も協議の上で設定することで、粗利の改善にもつながっている。販売する側が自信を持って推薦できる商品を並べることが可能になるのだ。
当初は書泉と芳林堂書店の店舗およびオンラインでの限定販売に留まっていたが、現在はその枠を超えて、様々な広がりを見せている。たとえば『中世への旅 ~騎士と城~』は、書泉での復刊をきっかけに、出版社が全国流通を実現した。『殉教カテリナ車輪』では複数書店との共同販売を実施し、『キハ82物語』は鉄道分野に強い旭屋書店と連携することで、地域特性に合った展開を行っている。
さらに、企画から文庫化に至った例もある。飛鳥部勝則著『堕天使拷問刑』は、芳林堂書店の復刊企画で4,985冊を売り上げた後、文庫化され全国発売となり、紀伊國屋書店新宿本店の文庫ランキングでも上位に名を連ねた。
復刊の枠を超えた取り組みも進行中だ。たとえば書籍化されていない作品を著者との協力で編集し、書き下ろしの新作を加えて文庫サイズの同人誌として発行する試みも始まっている。飛鳥部勝則の「フィフス」や篠たまきの『観音異聞』はその一例で、文学フリーマーケットへの参加を通じて、出版の原点である「本を作って、売る」ことの喜びを再確認しているという。
今後の展望として、書泉と芳林堂書店では、復刊タイトル100作品を目指し、その節目に「書泉・芳林堂書店と、100冊」と題した大規模な売場展開や全国POPUP書店の実施を計画している。具体的な時期は未定だが、構想はすでに動き出しており、SNSや出版社との連携も一層強化されている。
プロジェクトの歩みはまだ始まったばかりだが、過去の名作を掘り起こし、新たな読者のもとへと届けるこの活動は、出版業界において重要な挑戦となっている。株式会社書泉が手がける次なる一冊に、多くの読者が注目している。