Z世代にとってゲームは、単なる暇つぶしではなく、明確な目的を持つ体験へと進化している。その実態を示す調査結果を、Z世代向けクリエイティブカンパニーのFiom合同会社が公表した。運営するシンクタンク「Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)」が、全国の18〜24歳のZ世代300人を対象に実施した「Z世代のイメージが爆上がりしたブランドランキング」のうち、ゲーム業界に焦点を当てた第五弾インサイトサマリーである。
調査によると、Z世代がゲームブランドに求める価値は大きく二極化している。ひとつは、友人や家族と集まった際に確実に盛り上がれる「リアルなコミュニケーションを誘発する体験」、もうひとつは、日常から切り離され没頭できる「圧倒的な没入感による現実逃避」である。この二つの欲求を象徴する形で、任天堂とソニーが上位にランクインした。
最もイメージが良くなったブランドとして1位に選ばれたのは任天堂で、支持率は55%に達した。Nintendo Switchを中心とした任天堂のゲームは、ゲームスキルを問わず誰でも楽しめる設計が特徴であり、友人や恋人、家族と集まる場で「失敗しないコミュニケーションツール」として機能している。オンラインでのつながりが常態化したZ世代にとって、オフラインで同じ空間を共有し、笑い合える体験の価値はむしろ高まっており、その安心感と安定した面白さがブランド力を支えている。
2位にはソニーのPlayStationが入り、15%の支持を集めた。PS5が提供する高精細なグラフィックや臨場感のある操作体験は、スマートフォンでは得られない没入感を生み出している。タイムパフォーマンスを重視し、ショート動画に親しむ一方で、Z世代は「時間を忘れて何かに没頭したい」という欲求も強く抱えている。PS5の体験は、情報過多な日常から意識を切り離すための質の高いデジタルデトックスとして受け止められており、現実逃避の手段として評価を高めている。
3位にはスクウェア・エニックスが11%で続いた。長年にわたり培われてきたストーリーテリングと映像美は、ゲームを「遊ぶ」ものから「鑑賞し、感動する」重厚なエンターテインメントへと昇華させている。Z世代にとってRPGのプレイ体験は、長編映画やドラマを一気に楽しむ感覚に近く、その感動をSNSで共有し、ファンコミュニティで語り合える点も、ブランドへの愛着を強める要因となっている。
Z-SOZOKEN所長でFiom合同会社CEOの竹下洋平氏は、「Z世代はスマホゲームしかやらない、長時間のゲームはしないという見方は大人の思い込みだ」と指摘する。今回の調査結果は、Z世代のエンタメ消費が「手軽さ」から、「仲間と盛り上がれる確実な体験」か、「スマホでは代替できない極上の没入体験」へと移行していることを示しているという。
企業がZ世代の支持を得るためには、表面的な利便性や短期的な施策では不十分である。任天堂のように失敗したくない心理に寄り添うか、ソニーのように非日常へと没入させる体験を提供できるか。エンタメに対する根本的な欲求を見極めたブランドのみが、Z世代からの評価を大きく高めていくといえそうだ。
