一般社団法人クリエイターエコノミー協会は10日、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)と共同で実施した2025年版国内クリエイターエコノミー調査の結果を発表した。2024年の市場規模は2兆894億円に達し、2021年比で約1.5倍、年平均約15.5%のペースで拡大している。生成AIの普及が新規参入を後押しし、創作活動の効率化が進んだことが成長の要因とみられる。
同調査では、グッズ販売や動画投稿に関わる広告、スキルシェアなどが市場全体の約7割を占め、引き続き成長を牽引していることが判明した。また、法人化するクリエイターの増加や、エンターテインメント・メディア産業との連携が進むことから、これらを含めた潜在市場は約14兆5,866億円と推計された。現行市場の約7倍規模にあたり、国内経済への影響力が急速に拡大している。
報告書では、成長を支える三つの要因を挙げている。第一に、作品ではなく「誰が作ったか」に価値を見出す“クリエイターベース経済”の台頭だ。ファンがSNSなどを通じてクリエイター本人を支援する動きが強まり、収益機会が多様化している。第二に、生成AIの活用が創作や販売支援ツールに取り入れられ、創作のハードルを下げている。第三に、誹謗中傷などに対する法的支援やガイドライン整備が進み、活動環境が整いつつある点が挙げられる。
生成AIに関しては、アドビとnoteの両社へのインタビューも実施された。アドビは「Adobe Firefly」などを通じ、AIを創作支援ツールとして広く提供している。Noteの加藤代表は、AI普及によって投稿数が増える一方、創作量が増すほど「人間らしさ」が差別化の鍵になると指摘した。両社とも、AIはあくまで補助的な役割にとどまり、最終的な作品の価値はクリエイター自身に依存するとしている。
一方で、AIの学習データをめぐる著作権や倫理課題も浮上している。アドビは学習データを厳格に管理し、商用利用時のリスクを低減。noteは、クリエイターが自身の作品をAI学習に使用するか選択できるよう取り組みを進めている。両社とも、透明性を重視した制度設計が今後の鍵になるとした。
同協会によると、クリエイターエコノミーは今後も従来の出版、音楽、アニメなどの分野と連携しながら拡大を続ける見込みだ。個人発の創作活動が企業活動やIPビジネスへと発展することで、国内の新たな成長産業として定着する可能性が高いとみられている。
調査は2025年6月から9月にかけて実施され、文献調査と企業インタビューを通じて市場動向を分析した。レポート全文は三菱UFJリサーチ&コンサルティングのウェブサイトで閲覧できる。



