タリーズコーヒー「おとぎの森公園店」のインテリアデザインが、2025年6月14日に富山市で開催された「富山アートディレクターズクラブ2025」デザイン審査会にて準グランプリを受賞した。この取り組みは、富山県高岡市を拠点に活動するデザインスタジオ「ROLE」が監修し、地元の若手職人たちとの共同制作により実現したものである。環境循環をテーマに据え、地域の伝統工芸と廃材を活用した新たなデザインが高く評価された。

店舗の目玉のひとつとなっているのが、レーザー加工によって生まれたアルミ・真鍮・銅の端材を再利用し、伝統的な金属着色技術で仕上げたアートフレームである。この作品は、翔南産業が提供した端材を用い、モメンタムファクトリーOriiが着色、よしひさ建材がフレームを手がけた。B1サイズのフレームに組み合わされた端材は、まるでパズルのように再構成され、アップサイクルによる美しさと技術の融合を示している。

また、注目を集めたのが「ふきわけ鋳造」という高度な技術を用いたペンダントライトだ。異なる金属を同時に鋳型へ流し込み、曖昧に混ざり合うことで唯一無二の模様を生み出すこの技法は、般若鋳造所が鋳造を担当し、モメンタムファクトリーOriiが仕上げた。タリーズのマグカップをモチーフとしたライトは、型の中で偶然生まれるミルクのような模様が特徴である。

さらに、漆芸吉川が手がけた金箔・銀箔・白檀を用いたウォールライトや、モメンタムファクトリーOriiが着色を施したビビットカラーのルームサイン、FUTAGAMIが鋳造した手触り豊かなドアハンドル、佐野政製作所の真鍮・ブロンズ製マグネットなど、細部に至るまで高岡の職人技術が活かされている。これらのアイテムはいずれも、手で触れて楽しめるインタラクティブな要素を備えており、来店客との新たな接点として機能している。

店舗は2025年4月にオープンしたばかりで、新高岡駅にも近く、県内外から訪れる多くの人々に伝統工芸の魅力を伝える拠点となっている。タリーズコーヒーとしては北陸初となる公園内ドライブスルー併設型店舗でもあり、高岡おとぎの森公園の豊かな自然に調和するデザインが特徴だ。

また、同店は「ベビーファーストプロジェクト」にも参画しており、絵本の設置やミルク用のお湯の提供、「こどもごちめし」への協力など、子育て支援の観点からも地域に貢献している。

デザインを手がけたROLEは、高岡市を拠点としながら、地元の伝統工芸と先端のクリエイティブを融合させる活動を続けている。これまでにも再生紙を用いた市役所職員用名刺の制作など、環境とデザインの両立を実現する数々のプロジェクトを展開してきた。代表の羽田純氏は、企画力と地域資源を活かした表現力を武器に、地域内外の企業や行政と協働しており、今回の受賞はその姿勢が実を結んだ形である。

地元職人と共に生み出されたデザインが高く評価された今回の受賞は、富山の伝統工芸の魅力を全国に発信する大きな一歩となった。廃材という新たな素材に命を吹き込んだインテリアは、サステナブルな社会を目指す現代において、まさに未来志向の地域資源活用の好例といえるだろう。