台北市は2025年、人工知能(AI)産業チェーンを中核とするスタートアップ支援政策を強化し、国際起業家向けプラットフォーム「Taipei Entrepreneurs Hub(TEH)」を通じた取り組みを本格化させている。市政府は台湾への海外スタートアップの誘致と産業連携を促進することで、台北をグローバルなAIおよび半導体分野のイノベーション拠点として確立することを目指している。
TEHは、台湾の堅固なサプライチェーンや製造基盤、台北の豊富な学術研究資源を結集し、海外スタートアップが台湾のエコシステムに迅速に適応できるよう支援する。2021年の設立以来、20カ国以上のスタートアップに支援を提供し、複数のクロスボーダー協業や台湾市場への進出を実現してきた。
2024年には、韓国のソウル産業振興院(SBA)やアクセラレーター団体のKAIA、フィリピンの「TechShake」、ベトナムの「ThinkZone Ventures」といった組織と覚書を締結し、アジア地域におけるスタートアップネットワークの拡充に取り組んだ。さらに、日本の福岡を拠点とする「FGN」やコワーキングスペース「The Company」と連携し、30社を超える日本の企業やメディアを台北に招致するなど、日台間のイノベーション交流にも力を入れている。
TEHは、ビジネスマッチング、資源の統合、投資連携といった進出支援をワンストップで提供し、国際スタートアップが台湾での事業展開を円滑に進められるよう後押ししている。こうした支援により、スタートアップが台湾の産業基盤と結びつき、製品の市場投入と事業拡大を加速する環境が整えられている。
現在、TEHが主催する国際的なAIスタートアップ向けコンテスト「AI+ Taipei Startup Pitch Contest」の参加者募集が行われている。このコンテストは、世界中のAIスタートアップにとって革新的な技術を披露する絶好の機会となっており、最終的に6組のチームが台湾に招かれ、「AIスタートアップDemo Day」で台湾の大手企業や上場企業、ベンチャーキャピタルと交流を図る。
このシリーズイベントを通じて、TEHは国際チームと台湾の半導体・製造・ハードウェア分野との連携を深め、技術提携、共同開発、資金調達の実現を支援している。フォーラムやDemo Day、マッチングイベントを通じて、台北は国際スタートアップにとって親しみやすく魅力ある都市としての地位を固めている。なお、「AI+ Taipei Startup Pitch Contest」の応募締切は6月30日となっている。
さらにTEHは、6月26日に韓国ソウルで開催される「Next Rise」の期間中、TIPS TOWNにて「Rock’n Taipei in Korea」プロモーションイベントを実施する。韓国最大のスタートアップコミュニティで行われるこのイベントでは、韓国のスタートアップ企業や投資家、産業関係者を招き、台北のスタートアップ支援体制や投資環境を紹介することで、韓国との国際連携強化を図る。台北市は今後も、AI産業を中心とした国際スタートアップの集積を推進し、アジアにおけるイノベーションの中心都市としての存在感を高めていく方針だ。