書体デザインとテクノロジーの分野でグローバルに展開するMonotype Imaging Inc.(本社:米国マサチューセッツ州ウーバン)は、2025年のタイプトレンド「Re:Vision 2025」の一環として、AIと人間の創造性が交差する新たなプロジェクト「Human Types(ヒューマン・タイプス)」を開始した。

このプロジェクトは、Monotypeのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるチャールズ・ニックスとフィル・ガーナムが主導し、人工知能がタイポグラフィに与える影響と、人間の創造性が果たす役割を多角的に検証する試みとなっている。AIによる書体制作の可能性を探るだけでなく、テクノロジーがもたらす変革の中で、人間らしさがどのようにデザインに残り続けるのかに焦点を当てている。

プロジェクトには、Monotypeのクリエイティブ・タイプ・ディレクター、ジナ・オット、パートナーファウンダリBlaze Typeのマチュー・サルバッジオ、ブランディングエージェンシーMuccaとmuccaTypoの創設者マッテオ・ボローニャの3名も参加。それぞれが異なる視点から、AIと人間のコラボレーションに対する見解と経験を共有した。

オットは、AIが新しい表現の言語を生み出す可能性に注目しつつも、人間の直感と感情がデザインにおいて依然として不可欠であることを強調している。AIは創造を補完する存在であり、アイデアの深化や多様性を促進する一方、根本的な発想の源泉は人間にあるという立場を示した。

一方、サルバッジオはAIを「生徒」として捉え、β版のAIタイプデザインツールを用いて6種のフォントを共同制作した経験を語った。AIとの協働は有意義であったとしながらも、現段階では限界もあると指摘している。ツールとしてのAIは、今後さらに進化していく可能性を秘めていると述べた。

ボローニャはAIの知識と嗜好に対するユーモラスな見解を披露し、AIがもし個人の好みに基づいてフォントを提案したら、忘れられていたようなPapyrusのような書体が再び日の目を見るかもしれないと述べた。こうした想像は、AIの介在によって私たちの美意識や好みにも変化が及ぶ可能性を示唆している。

Human Typesは、AIをただのツールとしてではなく、人間の創造性を高めるパートナーとして位置づけている点が特徴である。デザインを構成する行為そのものが人間的な営みであるとするニックスの言葉に象徴されるように、本プロジェクトは、技術革新のただ中にあっても、人間性を中心に据えたクリエイティブな未来を提案している。

タイポグラフィの世界では現在、フォントの種類が爆発的に増加しており、適切なフォントを選び出すためのナビゲーションにもAIが役立つと期待されている。また、レタリングや個別最適化されたフォント体験の分野でも、AIの応用は新たな地平を切り拓きつつある。

Human Typesは、タイポグラフィにおける人間とAIの共創を象徴するプロジェクトとして、今後のデザインの在り方に大きな影響を与えるとみられる。興味を持った読者は、Monotypeの公式ウェブサイトでさらなる情報を確認できる。