一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)は4月30日より、第2回「アニメ業界実態調査」を開始した。今回はアニメ業界では初となる職種別の技術継承に関する調査を実施する。
前回の調査は2023年から2024年にかけて行われ、アニメ業界従事者の働き方に関する実態が明らかになった。その結果は2024年3月にレポートとして公開され、労働時間や収入の問題に加え、業界における知識や技術の継承がうまく機能していないという深刻な課題が浮かび上がった。これを受けて、今回は技術継承の実態に焦点を当て、各職種ごとの状況を把握することが目的とされている。
アニメ業界では長年にわたり、人材育成が現場任せで行われ、体系だった育成システムは確立されてこなかった。現場の経験を通じて技術を学ぶというスタイルが主流であったが、近年は人手不足が深刻化し、このままでは高品質なアニメーションの継続的な制作が困難になるとの危機感が広がっている。今回の調査では、現場でどのように人材が育成されてきたのか、その方法や課題を明らかにし、持続可能な育成体制の構築に向けたヒントを得ることが期待されている。
調査の設計には、東京大学先端科学技術研究センター特別研究員で公認心理士の青木瑛佳氏、中央大学理工学部准教授の竹内文乃氏、そして株式会社七夕研究所など、統計調査の専門家が協力している。これにより、幅広い年代や職種に対応した、実態に即した調査が可能となった。
調査期間は4月30日から5月31日までで、対象はNAFCA会員のうちアニメ業界に従事する者とされている。Webアンケートツールを用いたオンライン調査形式で実施され、現場の声を幅広く集める方針だ。
NAFCAは2023年4月に設立されたアニメ業界団体で、プロデューサー、監督、アニメーター、声優など多様な立場のメンバーが所属している。「アニメに未来があることを信じたい」をスローガンに掲げ、業界の持続可能性を支えるための取り組みを進めている。今回の調査もその一環として位置づけられており、調査結果は今後の政策提言や育成施策の基礎資料として活用される予定である。
多くの関係者の協力を得ながら進められる本調査は、アニメ業界の将来を左右する重要な取り組みといえる。NAFCAは、現場で働く人々の貴重な経験や意見をデータとして可視化し、技術と人材の持続的な継承を支える体制づくりを目指している。