クリーク・アンド・リバー社では、2013年7月、日本初のYouTubeのMCN (マルチチャンネルネットワーク)として「The Online Creators (OC)」をスタート。個人・法人問わず、あらゆるYouTubeチャンネルの成長やクリエイターの収益向上をサポートしています。

MCNについては浸透しつつある一方、「実際のところ、何をしてくれるのかよく分からない…」と思っている方も多いのでは?今回は責任者の髙木に、クリエイターにどんなサポートを提供しているのか詳しくお話をうかがいました。

  • YouTubeクリエイターやSNSインフルエンサーにおすすめの記事です。
  • クリーク・アンド・リバー社が運営するYouTubeのMCN「The Online Creators (OC)」について紹介します。
  • コンテンツ戦略や企画提案、アナリティクス分析、アカウント凍結のリスクから守るなど、クリエイターさんが抱える悩みによって様々なサービスを提供しています。
株式会社クリーク・アンド・リバー社
メディア・エージェンシー・グループ オンライン・クリエイター・ディビジョン
髙木 宏司(タカギ ヒロシ)

2006年クリーク・アンド・リバー社映像専門職社員として入社。日本テレビ朝の情報番組「ズームイン!!SUPER」を担当し、「ZIP!」の立ち上げメンバーとして活躍する。その後NHKを始め各局でディレクターや演出を担当。ONE MEDIAではウェブ動画の演出プランニングも経験し、ナショナルクライアントとのタイアップコンテンツの企画・制作を行う。現在はMCN事業の責任者として約280のYouTubeチャンネルの成長や収益向上をサポート。さらにプロデューサーとして、登録者数25万人を突破した「超十代チャンネル」や、資生堂の公式YouTubeチャンネルなど、複数のチャンネル運営にも携わる。

ショート動画時代の到来!「コンテンツ」にファンがつくTikTokと「人」にファンがつくYouTube

――昨年の9月にアメリカ国民のTikTok視聴時間の合計がYouTube視聴時間の合計を上回るというニュースがありました。YouTubeで活動しているクリエイターさんの中には不安に思っている方もいますが、この傾向をどう捉えていますか?

TikTokの盛り上がりについては悲観的にみているわけではく、クリエイターさんの活躍する場が増えていると捉えています。
YouTubeにおいても縦型ショートムービーの投稿が可能な「YouTubeショート」がスタートするなど、ショートムービーのマーケットはさらなる拡大が見込まれています。TikTokが盛り上がることで、そこから入ったクリエイターさんがYouTube側にも流れてきてくれるかもしれません。

先日YouTubeとTikTokでの横断的な活躍をサポートしていく「X(クロス)プロジェクト~YouTube×TikTok~」を、TikTok公認のMCNとして事業展開するstudio15株式会社と共同で立上げました。私たちYouTubeのMCNとしても、さらにやりがいを感じているところです。

――なるほど。ちなみにTikTokでバズったクリエイターさんがそのままYouTubeに動画を出し始めても上手くいかないことが多いようで、苦労している方が多いようですね。

TikTokとYouTubeではアルゴリズムも戦略も異なりますからね。
TikTokと同じような動画を投稿していきなり伸びるのは難しいと思います。そういった方々には、私たちからYouTubeのノウハウを提供しています。

――そもそもの話になりますが、既にTikTokで人気のある方がこれからYouTubeをはじめるメリットはあるのでしょうか?

シンプルに「チャレンジしてみたい」という方は多いです。
YouTubeをはじめるメリットとしては、ご自身のブランディングになるのが大きいかなと思いますね。

――そういえばインフルエンサーの方から「ファンをつけたいと思ったらYouTubeだ」という話をよく聞く気がします。プラットフォームの特性上、TikTokはコンテンツ自体にファンがつきやすい一方で、クリエイターさんに対してファンがつきづらいそうです。

YouTubeは個人が強いプラットフォームなので、人にファンが付きやすいということはあると思います。
「チャンネル登録者数が増える=その人自身が何をやろうとそれだけの人が見てくれる、応援してくれる」という土壌を作りやすいのだと思います。まあそうなるまでは、簡単ではないのですけどね。

――ちょうど2日前ぐらいに「TikTok CREATOR AWARD 2021」(※2021年12月8日(水)開催)のLIVE配信をみて気付いたのですが、TikTok上で大人気のクリエイターさんでも「この人の肉声聞いたの初めてだな」って人がたくさんいたんです。なんかそこで一気に愛着が湧いたんですよね。加工されていないその人自身を見られたというか。
対してYouTube上ではクリエイターさんの肉声や、加工前の喋りが当たり前にあると気付いたときに、YouTubeの必要性って結構高いと思いました。

たしかに2つのプラットフォームを比較すると、YouTubeの方が発信する側の「その人らしさ」が切り取られ過ぎない傾向がありますね。発信者の人となりが表に出てくることによって、ユーザーとの距離感が近くなるということもあると思います。
YouTubeにはコミュニティ機能といって写真とテキストだけを投稿できる機能もありますし、ユーザーとコミュニケーションが取りやすいという点で、優れているかもしれないですね。

提供する相手ごとに、いま一番必要なサービスを。

――クリーク・アンド・リバー社のMCNが提供しているサービス内容について、詳しくお聞きできるでしょうか?一般的には他のクリエイターさんとコラボしやすい、企業案件を受けやすいなどがあると思います。

それらの2点は勿論あります。
加えてYouTubeのアナリティクスを分析し、コンテンツ戦略のアドバイスをします。
最も人気なのは「どうやったら視聴者数やチャンネル登録者数を伸ばしていくことができるのか」という根本的な部分のサポートですね。

私たちも日々たくさんのYouTubeクリエイターさんとお話していて、「動画をアップしてもなかなか伸びない…」という悩みを抱えている方は本当に多いんです。
そこで一緒に(過去にアップした動画の)振り返りをしたり、これからの戦略を練っていき、二人三脚で1つのチャンネルを大きくしていきます。
「どんな企画をやればよいかわからない…」という方へは、YouTubeのトレンドに合わせて、次にやるべき企画も提案しています。

――簡単に言うと、動画の再生数をとるための作戦を練ってくれるってことですね。

あとはYouTube活動をやっていくうえで起こり得る、様々なトラブルやリスクからクリエイターを守るサポートもしています。
YouTubeはどんな動画をアップしても良いわけではなく、過激な動画をアップすると消されてしまったり、ペナルティ(※)を受けます。さらには動画内の使用楽曲などの著作権関係のトラブルがとても多いので、これらについても対応しています。

※YouTubeでは規約に反した動画を掲載すると運営に削除される。削除された回数が3回に達するとチャンネルがBAN(凍結)される

クリエイターさんが有名になればなるほど、アンチのユーザーも増えてきます。その中にはクリエイターさんのことを貶める意図で動画を転載して攻撃する人もいます。そうなった場合、クリエイターさんの代わりに私たちが運営に批判動画の削除をお願いしています。

クリエイターさんが大きくなればなるほど、私たちの役割が大きくなってきますね。YouTubeというプラットフォームのルールを守ってコンテンツを作るよう促進することもMCNの役割の1つだと思っています。

――アンチや炎上から守ってくれたりするんですね!ポリシーやガイドラインについてアドバイスをしてもらえるのって、地味に見えますがかなり助かります。

さらに現在では、クリエイターさんの収益モデルの組み立てについても支援させて頂いています。
普通は自分の動画についた広告が主な収益源になるのですが、実は広告以外にもマネタイズの方法ってたくさんあるんです。

たとえば生配信中のスーパーチャットであったり、グッズを作ってYouTube上で売るというマネタイズも増えています。そういった物販のお手伝いもさせて頂いていますね。

クリエイターさんがYouTubeの外でも収益を上げられるよう、日々研究です。一般的なMCNがカバーする範囲だけではない、クリエイターさんの様々な悩みを解決できるサポート体制になっています。

――物販の手伝いもしてくれるのは意外でした。

クリエイターさんの悩みはいろいろあるので…。
本当にクリエイターさんによって、一人ひとり悩みが違ったりするんですよ。撮影場所がないとか、動画の編集ができないとか。
クリーク・アンド・リバー社で映像制作ができるのは、他のMCNにはない強みだと思います。

――たしかに、プロの制作チームに動画を作ってもらえるのは嬉しいかもしれません。多くのYouTubeクリエイターさんは自分たちで動画編集をやるしかないですし、忙しくなってきたときに丸投げしてお願いできるのは便利ですね。

もちろん全員のクリエイターさんに動画制作のサポートを提供できるわけではないですが、必要なクリエイターさんには弊社の動画制作のリソースを提供させていただいていますね。

――あと撮影場所を貸してもらえるのって意外と助かります。都内って実は動画を撮影する場所が探しにくくて、オフィスを借りようとしても高いですし、自宅も部屋が狭いので撮影がしづらいんですよね。

この間は、クリエイターさんの撮影用にうちのオフィスを使ってもらったりもしました。

C&R社のオフィスでダンスしているクリエイターの紹介

クリエイターさんの悩みが増えれば増えるほど、それに合わせて私たちのサービス内容も充実していっている状態です。

――とにかくYouTubeクリエイターさんが自分のチャンネルを伸ばしていくうえで「いま一番困っていること」を助けてくれるんだと分かりました!

そうですね。クリエイターさんに一律で「これらのサービスを提供します」ではなく、それぞれのクリエイターさんにお話を聞いて、それぞれの方に必要なサービスを考えたうえで提供しています。

他社MCNとの違いは「事務所ではない」こと!だからクリエイターは縛られずに済む

――それにしてもMCNやYouTuber事務所って、浸透しつつある一方どうしても「ちょっとよく分からないし、どことなく怪しい」と思ってしまうのは、私だけでしょうか…。

どのMCNも情報を出しづらいというのがあるのかもしれません。まだまだこの業界は腹の探り合いみたいなところもあるので、なかなかサービス内容を具体的に公表しづらい雰囲気があるんだと思うんです。

クリエイターさんたちからすると「MCNとか事務所って、私たちから手数料をとる人たちでしょ?」という嫌なイメージがついているのも知っています。

――クリーク・アンド・リバー社のMCNもクリエイターさんから手数料をとるんですよね?

はい。ただし、その分「見合ったサービスを提供しなければならない」という責任を背負ってクリエイターさんたちと向き合っています。
サービスの内容に見合っていない法外な手数料を取っているとしたら、それはもちろん大問題ですから。

そう言われてみるとたしかに私たちのやっているMCNもこれまで表立ってやってきたわけではなかったりするので、そういう意味では警戒心を持たれてしまうのも、ある種しょうがないかもしれないですね。

――なぜこれまでクリーク・アンド・リバー社のMCNは表立ってやってこなかったんですか?

あえて隠していたわけではなかったのですが、他社と比べると規模感が大きいわけではなかったので、大きく活動をPRするという段階ではなかったということがあります。

あとは「○○に所属しているYouTuber」というイメージがつくことを嫌うクリエイターさんもいらっしゃるので、我々のように裏方に徹していて、MCNの色がつきにくい点がクリエイターさんにとって魅力の一つになっていたんですよね。
なので、無理にアピールして色を出していこうとはしていませんでした。

――少し答えづらい質問をさせてください。一般的なMCNの場合、クリエイターさんの名前を使って事務所の認知度を高め、それによってさらに大きな案件やクリエイターさんを獲得する狙いもあると思うんです。その中でクリーク・アンド・リバー社のMCNがこれまで裏方に徹してきたのはなぜなのでしょうか。

まず前提としてあるのが、他社のMCNと私たちのMCNが「事務所機能の有無」という点で異なるということですね。私たちのMCNは、事務所機能を持っていないので、私たちがサポートしているクリエイターさんは私たちのMCNに「所属している」という扱いにはならないんです。
それが「事務所の色がつかない」ということで、クリエイターさんにも好評いただいている点の1つです。

もっと詳しく話すと、あくまで私たちはサービス提供者なので「サービスに加入して頂く」ということになるんです。例えるなら携帯電話会社とお客さんのような関係でして、サービスに「加入」していただいているのであって「所属」ではないんです。

事務所ではなくマネジメントをしていないので、そのクリエイターさんの活動方針を決定したり、制限するようなことはしていないんです。実際、私たちのMCNに加入してくださっているクリエイターさんは皆さん「クリーク・アンド・リバー社に所属している」という言い方をされていませんね。

――ということは、事務所に所属しつつ、クリーク・アンド・リバー社のMCNのサービスを受けることも可能なんですか?

はい!実際にそういう形でご利用いただいているクリエイターさんもいらっしゃいます。

――そうなんですね!本当に裏方に徹しているんですね。

はい。それが他社のMCNとの大きな違いの1つですね。

ただ、これからもずっと黒子でいるというつもりはありません。私たちも8年以上クリエイターさんをサポートさせて頂く中で、少しずつ方針が変わってきました。現在の私たちは、クリエイターさんに良質なサービスを提供できる自信があるので、今後は自分たちのサービスをどんどん知ってもらって、より多くのクリエイターさんに利用してもらいたいと思っています。

登録者数何名から加入できるの?

――クリーク・アンド・リバー社のMCNは、かなりYouTubeクリエイターファーストなサービスだと感じましたが、具体的にチャンネル登録者数が何名のYouTubeクリエイターならサービスを受けられますか?

YouTube収益化の条件を満たして収益化ができている方であれば、どなたでも加入を受けつつけています。もちろん、誹謗中傷やYouTubeのポリシーに違反している方はお断りさせて頂く場合はありますが、チャンネルの規模感的には幅広いクリエイターさんが加入して下さっていますね。

――加入の敷居は高くないんですね。少ない方ですと、具体的にどれくらいの登録者数のYouTubeクリエイターさんが加入されていますか?

チャンネル登録者数1000人ぐらいの方から登録されていますね。

――逆に登録者数が多いチャンネルですとどのチャンネルでしょうか?

いくつかありますが、これって公表してよかったかな(笑)
私たちが関わっていることを公表するか否かについても、クリエイターさんの意思を尊重していますので。

ただ、サービスにご加入いただいているクリエイターさんの総登録者数は公表しています。全部で登録者数3700万人ぐらいですね。チャンネル数は280チャンネルぐらいの規模感です。

登録クリエイタードズル社
ドズル社(公表について了承済)
 登録クリエイター チェゴチャンネル
チェゴチャンネル(公表について了承済)

――たくさんのクリエイターさんが加入されているんですね。

いえいえ、他のMCNに比べたらまだまだ少ないので、もっと頑張っていかなければならないと思っています!日本初のYouTubeのMCN (マルチチャンネルネットワーク)として、ますますYouTubeクリエイターさんたちに愛されるブランドに成長していきたいです。

※クリーク・アンド・リバー社は2013年7月、日本初のMCN (マルチチャンネルネットワーク)として「The Online Creators (OC)」をスタート

――今回のお話はとても分かりやすかったのでたくさんのクリエイターさんに伝わると嬉しいです。様々な事情があってサービス内容や裏事情について話しにくい中、今回はいろいろと本音をお聞かせ頂いてありがとうございました!

The Online Creatorsのサービスを受ける

インタビュー・テキスト:小川 翔太/撮影:SYN.PRODUCT(Kan)/企画・編集:澤田 萌里(CREATIVE VILLAGE編集部)