声優支援に力を入れているクリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)では、新企画として子役向け声優ワークショップを展開しています。第1弾では現地レポートをお届けしましたが、今回は第2弾として、運営者であるNEWSエンターテインメント事務局長の今井さんと、ワークショップ企画・ディレクターの伊東さんのインタビューをお送りします。

今井誓子
株式会社NEWSエンターテイメント事務局長。スクール運営、レッスン周り全般を担当、自身もダンス講師を務め、子どもの力を引き出す教育方針、子ども本位のサポート姿勢には定評がある。本ワークショップでは運営の役目を担っている。

伊東貴光
声優のブッキング、音響監督など、音声制作の仕事を幅広く手がける。声優関連事業を強化しているクリーク・アンド・リバー社に2021年よりジョイン。声優業界全体に役立つ施策を計画中。本ワークショップでは、企画、ディレクションを担当している。

声優業界の発展と、子役の活動範囲の拡大を狙って

——NEWSエンターテインメントとC&R社のコラボで、子役向けの声優ワークショップが実現したそうですね。企画はどのようにして持ち上がったのですか。

伊東:C&R社では、声優を支援する事業により力を入れて拡大していこうとしています。声優業界にプラスとなることをいろいろ展開していきたいと考えているところです。そんな折、NEWSエンターテインメント様では、子役の活動の幅を広げていきたいという課題があるというお話を伺いました。舞台や映像以外の活動領域を考えているということでしたから、何かシナジーが生み出せるのではないかと、始まりました。

今井:C&R社さんとえいば、エンターテインメント業界で非常に「顔が広い」企業として知られています。エンターテインメント以外にもクリエイティブな人材を支援するということで、様々な事業を手がけていらっしゃいますから、デジタル、アナログ、いろいろなことができるのではないかなと思いました。

——伊東さんは、幅広い分野の音声制作、声優のブッキング、音響監督などでご活躍されてきましたが、C&R社にジョインされたのはどうしてですか。

伊東:仕事の幅を広げるためです。個人で知り合える人の数には限りがあるもので、新しいプロジェクトが立ち上がっても、自分の仲間内で人を探してしまいます。もちろんそれでもクオリティの高いものはできるのですが、既知の範囲から外に出て可能性を広げたいと考えました。今井さんもC&R社について「顔が広い」とおっしゃいましたが、本当にその通りで、今は一緒に仕事ができるクリエイターや声優が一気に増え、作品作りでの選択肢も増えましたし、業界にも貢献できそうです。

——どのような貢献を考えているのでしょうか。

伊東:声優の仕事は、人気・実力ともに頂点にいる一部の人に集中しがちです。養成所や専門学校を卒業した「声優」は毎年誕生しますが、実力はあるのにツテやコネがないから仕事に恵まれないという人もいます。「顔の広い」C&R社で、そんな声優にチャンスを届けたいですね。業界全体としても多様な人材が活躍できることで活性化につながります。

声優の仕事は、幅広い業界に役立つ表現力を養う

——NEWSエンターテインメントで声優ワークショップを行うのは、初めての試みになりますね。

今井:はい。今回は参加者がとても喜んでくれて私も嬉しいです。声優になりたいという子の夢の実現を手伝えることはもちろん、女の子も含めて、声は変わりますから、その限られた期間の声にスポットを当てたいという思いもあります。声の演技、マイク前の演技というのは、映像での演技とは異なり、目に見えない「声」で全てを表現する必要があります。この表現力がつくことは子ども達の将来に大きく役立つと思います。

——声優ならではの表現力が、映像の仕事にも役立つのですね。

今井:はい。それだけではなく、子ども達がこれから成長して生きていく上でも役立つと考えています。私たちのスクールに通っているお子さん達の進路はいろいろです。タレントを続ける人もいれば、学校の先生になったり、伊東さんのような音響のお仕事をしたり、最近は、自分のお子さんをスクールに連れてきてくれる、親子二代でおつき合いさせていただける人もいます。私たちは子ども達の教育、特に情操教育に携わっており、タレントとしての技能だけを教えているわけではないのです。グローバル化が進む今の時代は、勉強だけできても社会で活躍できるとは限りません。声優ならではの技術を学び、表現力を身につけることで、どんな業界でも役立つ、自分自身を表現する力やディスカッションの力が育つのではないかと考えています。

前例のない子ども向け声優レッスン、楽しむことを第一に

——子ども向けの声優レッスンは、伊東さんも経験がなかったそうですね。どんな工夫をされたのでしょうか。

伊東:優しく、ソフトに教えることを心がけました。教える側の私たちが早口になったり大きな音や声を出したりすることはしません。声優は、一人でマイクに向かうことも多い仕事です。そのため、大人向けの声優養成ではメンタルの強化も重視され、厳しいレッスンが多いのです。しかし、お子さんのレッスンでは、声優の仕事を楽しんでもらうことが何よりも大切だと考えました。

今井:その点は本当に、皆楽しんでいますね。映像では体験することのないキャラクターに挑戦できて、新たな自分を発見できたという子もいますし、「楽しい」と皆言っています。台本もドラマとは異なるなど、慣れない点が多くて難しさもありますが、それを含めて楽しめているようです。年の離れた子が同時に受講するので、説明のしかたにも配慮していただいています。

伊東:小学生には難しい言葉を易しい言葉に言い換えて説明する方がよくても、中学生にはまわりくどくなることもあります。両方の説明のしかたを併用したり、個人向けのアドバイスの場合は、その人に合わせた表現をするなど、細かく考えています。

今井:私たちのレッスンも通常は学年別に行うので、こういう形は珍しいのですが、上の年代の子が、年下の子の頑張りを見て奮起したり、下の子が上の子の表現力に感心したり、お互いにいい刺激があるようです。

——伊東さんは、初めて子どもに教えてみて、大人との違いはありましたか。

伊東:マイク演技は皆さん初めてなので、最初は戸惑ったようですが、講師が実演してみせると、すぐにそれを取り入れることができるのには驚きました。しかもそこに、ちゃんと自分の演技を入れられるんです。指導したことをその場ですぐ取り入れることなんて、大人のワークショップでもそうそう出会わないことですから、子どもならではの柔軟さが素晴らしいですね。

今井:今回は特に、声優を目指したいと目標を持っている子ども達が揃っていることもありますが、子どもは素直ですから、自分の持っているものを引きだしてくれる人がいれば、本当に大きく成長できると思います。

今後は間口を広げ、声優を体験してみたいという子ども向けにも

——今後の展開はどのようになるのでしょうか。

今井:今回のようなプロを目指す子どものためのワークショップを続ける一方で、間口を広げ、タレントを目指しているわけではないけれど声優の職業体験をしてみたい、という子どもも受けられるようなプログラムも提供したいと考えています。子どものうちにいろいろな体験をすることは、将来を拓く力になります。

伊東:私もそうしたライトな層へのワークショップには興味があります。声優の楽しさをたくさんの方に経験してもらえたらと思います。プロを目指すような子については、初めは俳優志望なのか声優志望なのかで分けた方がよいかと思っていましたが、実際にワークショップを行って、分ける必要はないと考えています。声優も顔を出すことが一般的になり、俳優と声優の区別は以前よりも明確ではなくなってきています。両方の力があることは付加価値をもたらしますし、考えが柔軟で吸収力の高い子どものうちに、俳優・声優両方の訓練をすれば、両方とも実力がつくと思います。外国語を子どものうちに学習するようなイメージに近いですね。そうした実力ある人材を育てて、声優業界全体に寄与できればと考えています。

——今後が楽しみです。ありがとうございました。

株式会社NEWSエンターテイメント
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インタビュー・テキスト:あんどう ちよ/撮影:SYN.PRODUCT/