「これまで」と「これから」を考え直す時期がある

仕事を続ける中で、できることも任される役割も増えてきた。

一方で、

このまま同じ仕事を続けていくのだろうか」
「今まで身につけてきたものは、この先も通用するのだろうか」
「本当は別のことにも挑戦してみたかったのではないか」
と考えてしまうことはありませんか?

人生の中盤に差しかかる時期に、これまでの生き方や仕事を振り返り、「このままでいいのだろうか」「これから何を大切にしていきたいのだろうか」と考えることは、「ミッドライフ・クライシス」という言葉で語られることもあります。

これは、誰もが経験するものであり、必ずしも大きな危機として現れるものでもありません。

積み上げてきたものを、この先どう生かしていくか」を考え始めるタイミングでもあります。経験を重ねるほど、これまで築いてきたキャリアや今の役割、生活のこともあり、簡単には方向を変えにくくなります。

だからこそ、すぐに「続けるか、辞めるか」の答えを出すのではなく、まずはこれまで何を積み上げてきたのか、その経験をこれからどう生かしたいのかを整理してみましょう。

キャリアを「経歴」ではなく「物語」として振り返ってみる

これまでのキャリアを振り返ろうとすると、

「10年間デザイナーをしてきた」「マネージャーを7年経験した」「営業から企画へ異動した」といった、職種や肩書を思い浮かべることが多いかもしれません。もちろん、それも大切な経験です。

ただ、これからのキャリアを考えるときには、「何をしてきたか」だけでなく、「その経験の中で自分は何を大切にし、どんな役割を担ってきたのか」まで振り返ってみる方法があります。それが、それが「キャリア構築理論」といった考え方や「ライフデザイン」といった手法です。

キャリア構築理論やライフデザインでは、これまでの経験を一つひとつの「物語」として振り返り、そこに共通するテーマを見つけていきます。

たとえば、同じ「デザイナーとして10年間働いた」という経験でも、

  • 新しい表現を試し続けてきた
  • 分かりにくい情報を整理して伝えてきた
  • チームが力を発揮できるよう支えてきた
  • 顧客の曖昧な要望を形にしてきた

など、その人が繰り返してきたことは違います。

職種や肩書が変わっても、自分が繰り返している役割や大切にしていることは、意外と変わっていないことがあります。

そこに、これからも生かせる自分なりの「キャリアのテーマ」が隠れているかもしれません。ここから、3つのステップで探してみましょう。

STEP 1|印象に残っている仕事を3つ選ぶ

まずは、これまで経験してきた仕事を振り返ってみてください。
「一番大きな成果を出した仕事」を選ぶ必要はありません。自分の中になぜか残っているものを選んでみましょう。

  • 気づいたら夢中になっていた仕事
  • 大変だったけれど、最後までやり切った仕事
  • 誰かに感謝された仕事
  • 「自分がいてよかった」と感じた仕事
  • 今でも時々思い出す仕事

書いてみましょう!

① 印象に残っている仕事
→ ______________________________

② 印象に残っている仕事
→ ______________________________

③ 印象に残っている仕事
→ ______________________________

選んだら、それぞれについて、「なぜ、この仕事が自分の記憶に残っているのだろう?」と少し考えてみてください。成果の大きさではなく、「面白かった」「悔しかった」「誰かの役に立てた」など、そのときに感じたことにも、自分が仕事で大切にしてきたものが表れています。

STEP 2|3つの経験に共通する「自分の役割」を探す

次に、選んだ3つの仕事を並べて見てみましょう。担当業務ではなく、その中で自分がどんな役割を果たしていたかを考えてみます。

たとえば、

  • 混乱している状況を整理する
  • 周囲の意見をまとめる
  • 困っている人を支える
  • 新しい方法を試す
  • 最後まで品質を守る

といったことです。
書いてみましょう!

 

Q. 3つの経験に共通する、自分の役割はありますか?
→ ______________________________

 

思いつかなければ、
・周囲から何を頼られることが多かったか
・問題が起きたとき、自然と何をしていたか
・どんなときに「自分らしく働けた」と感じたか
から考えてみてください。

「マネージャー」のような肩書ではなく、「整理する」「つなぐ」「支える」「形にする」のような言葉で考えると見つけやすくなります。

STEP 3|これまでの経験に「これから増やしたいもの」を掛け合わせる

ここまでで、自分が繰り返してきた役割や、大切にしてきたことが少し見えてきたかもしれません。
次は、これまでの経験をそのまま続けるかどうかではなく、「これから何を加えていきたいか」を考えてみましょう。

たとえば、

  • 人を支える経験を生かしながら、今度は「人を育てる」ことにも挑戦してみたい
  • 情報を整理する力を、企画や戦略を考える仕事にも生かしてみたい
  • 専門性を生かしながら、チームを動かす経験も増やしてみたい
  • 今までとは違う業界でも、自分の経験が通用するか試してみたい

というように、これまで積み上げてきたものに、新しく経験してみたいことを掛け合わせて考えます。

書いてみましょう!


これからも生かしたい経験や役割は?→ ______________________________
これから新しく増やしてみたい経験や役割は?→ ______________________________
その2つを組み合わせると、どんな仕事や働き方が考えられそうですか?→ ______________

すぐに具体的な職種名が出てこなくても構いません。「今までの経験を捨てて新しいことを始める」のではなく、これまでの自分に、次の経験を一つ足してみるくらいの感覚で考えてみてください。

「今の仕事を続けるか、辞めるか」だけで考えなくてもいい

たとえば、長く映像編集の仕事をしてきた人が、「このまま編集を続けていていいのだろうか」と考えているとします。
これまでを振り返ると、本人が特に手応えを感じていたのは、編集技術そのものよりも、素材の中から「何を伝えるべきか」を見つけ、関係者の意見を整理して一つの方向にまとめることだった。さらに、「これからは人と関わりながら企画をつくる経験を増やしてみたい」と考えたとします。

すると、

これまで培ってきた「情報や意見を整理して、伝わる形にする力」
×
これから増やしたい「人と企画をつくる経験」

という組み合わせが見えてきます。

そこから、企画やディレクション、インタビューなど、これまでとは少し違う役割も選択肢に入ってくるかもしれません。「編集を続けるか、辞めるか」ではなく、「これまでの経験に、これから何を掛け合わせたいか」と考えることで、次の選択肢を広げることができます。

最後に、自分の「キャリアのテーマ」を一文にする

ここまで振り返ったら、最後に一つだけ文章をつくってみましょう。

私はこれまで、____という場面で、____する役割を担ってきた。
これからは、その経験を____のために生かしてみたい。

たとえば、
・私はこれまで、情報や意見がまとまっていない場面で、整理して周囲が動きやすい状態をつくる役割を担ってきた。
・これからは、その経験をチームづくりや人を育てる仕事にも生かしてみたい。
というような形です。

これから10年のキャリアを、今ここですべて決める必要はありません。この一文は、将来を決める「目標」というより、次のキャリアを考えるための仮のテーマです。

求人を見るときも、「今と同じ職種かどうか」だけではなく、「自分がこれからも生かしたい経験を使える仕事か」という視点で見てみると、これまでとは違う選択肢が見つかるかもしれません。

これまでの経験は、次のキャリアの材料になる

キャリアを見直すことは、これまでをリセットすることではありません。
「この仕事しかしてこなかった」ではなく、
「この仕事を通して、自分は何を積み上げてきたのか」と捉え直すことで、同じ経験から見える選択肢は変わります。

これからも続けたいもの。
別の形で生かしたいもの。
そろそろ手放したいもの。

まずはその中から、次のキャリアにも持っていきたいテーマを一つ見つけてみてください。
それを今の環境で生かすのか、別の役割で生かすのか、違う場所で生かすのか。
その先に、これからのキャリアを考えるヒントが見えてくるはずです。

見つけた「テーマ」を使って、次の選択肢を探してみる

ここまで整理したら、見つけた言葉を手がかりに、実際の仕事を少し探してみましょう。

たとえば、
「人を育てることを増やしたい」
→ 育成・マネジメント・研修

「情報を整理して、伝わる形にする力を生かしたい」
→ 企画・編集・ディレクション

「人や意見をつなぐ役割を生かしたい」
→ プロジェクトマネジメント・ディレクション
というように、自分が見つけたテーマから、関連しそうな職種や仕事内容へ少しずつ広げてみます。

最初から「次の仕事」を決める必要はありません。
まずは気になる言葉で求人を見ながら、「自分の経験が生かせそうな仕事には、どんなものがあるのか」を知るだけでも、次の選択肢を考える材料になります。

もし、「自分の経験をどう言葉にすればいいか分からない」「どんな仕事につながるのか自分では判断しづらい」という場合は、第三者と一緒に整理してみる方法もあります。
自分では当たり前だと思っていた経験が、別の仕事では強みになることもあります。