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「ロゴデザインはヒアリングで7割決まる!」グラフィックデザイナー・佐藤浩二さんインタビュー【前編】

フリーのグラフィックデザイナーとして独立から21年。自己流で経験を重ね、「ソフマップ」のVIなど、多数の有名ロゴを手がける株式会社コージィデザインの佐藤浩二さんがクリエイティブビレッジのインタビューに登場!

デザインをする上で欠かせない“ヒアリング”の重要性とは?独立してまもないデザイナーたちが陥りやすい失敗例と教訓を、自身の経験とともに語ってもらいました。

佐藤浩二(さとう・こうじ)


グラフィックデザイナー/(株)コージィデザイン代表
「ソフマップ」VI、「滋賀医科大学」VI、オムロン「sysmac」ブランドロゴ「大阪アーツカウンシル」ロゴなど、教育機関、行政、企業、商品ブランドなどのブランディングおよびロゴデザインを行う。日本タイポグラフィ年鑑2010年・2016年ベストワーク、DFA Design for Asia Awards ブロンズ、香港、ワルシャワ、ラハティの国際ポスターコンクールなど国内外で入選多数。

プロのデザイナーが作る“ロゴ”の価値について

――近年、「ロゴ」は、SNSのヘッダーに使われたり、YouTubeチャンネルに使われたりと、一般人にとっても手を出しやすく、コモディティ化してきたように思えます。この状況を佐藤さんはどう捉えていますか?

ロゴ=日常にあって当然のもの、かつもたらす効果を一般の方にもある程度、分かってもらえているということは好ましい状況だと思っています。

――一般人が作ったロゴのディテールが気になることもありますか?

気にはなりますね(笑)日常でもそういう目で見てしまうといいますか「ああ、このロゴは上手だな」とか「これはもうちょっとこうすれば良いのにもったいないな」と思うこともありますね。

――佐藤さんは普段から積極的に、ご自身のTwitterにて、ご自身のノウハウをシェアされていますよね。ノウハウを無料で開示することはデザイナーにとってはデメリットのように思えます。

若いデザイナーさんにもデザインに必要な細かい技術についてもっと知ってもらいたいという思いからです。スマホ1つでデザインできてしまう時代ですし、“ロゴっぽい“ものは誰でも作れるようになってきています。でも、本当はもっと良くなるのに、技術を知らないがために最後の詰めのところで失敗している場合があって……。


佐藤さんのTwitterアカウント・さとうコージィ COSYDESIGN Inc.より引用

――先ほどおっしゃっていた、「ディテール」の部分ですね。

はい。これらのノウハウは、まだPCや便利なアプリケーションがなかった頃にグラフィックデザイナーたちが築き上げてきた手作業の技術で、誰かが伝えていかないと消えてしまうと思うんですよね。これからはAIがロゴを自動生成する時代も来ると思うので、より細かい技術を理解してデザインできる人が増えて欲しいなと思っています。

――“手作業の技術”というのは、例えば、たった数ミリの修正に拘ることであったり、徹底的にデザインと向きあう姿勢のようなものでもあるのでしょうか。

そうですね。例えば、文字のカーブの部分の形をとるにしても、目の錯覚を矯正するように、ラインを削ったり膨らませたりするんです。これは並んだ全ての文字が、同じ太さに見えるようにしたり、見た目の違和感をなくす作業なんです。

――佐藤さんがデザインされた『ソフマップ』のデザインもそうですよね。

まさにそうですね。詰めの部分で見た目の質はかなり変わります。デザイン作業全体のプロセスの中では最後の最後ですが、やるかやらないかでかなり印象が変わります。これからも様々な発信を通して、プロのデザイナーが作るロゴにどのような価値があるのか分かりやすく伝えていかないといけないと思っています。

コージィデザイン

 

意外と見落としがちな“ヒアリングの重要性”

――この記事を読んでいる人の中には、グラフィックデザインを始めたばかりの方も多いと思います。佐藤さんがロゴデザインの仕事をする上で大切にしていることを教えていただけますか。

「自分が良いと思うデザイン」という視点だけで作っていては、うまくいかないので最初のヒアリングを大切にするべきだと思っています。ヒアリングを怠ってしまうと、お客さまからフィードバックをもらって作り直していくうちに、なにが正解か分からなくなって深みにはまっていくことがあるんですよね。

――最初の提案が上手くいかないと、そうなってしまうことが多そうですね。

私も独立してすぐの頃に経験しました。キャリアが浅いうちは単価も上がらないので、仕事を取るために試行錯誤して3案、5案ほど考えるのですが、技術面も未熟なので時間もかかってしまっていましたね。そのようにして、時間と労力を費やして渾身のデザインを提案するのですが、どれも響かない。その原因を考えた時、それは、ヒアリングが上手くできていなかったからではないかと気づきました。

――具体的にはどういうことですか?

お客さまから最初の要望を上手く聞き出せていないんです。最初にお客さまの話をきっちり聞いてゴールはどこなのかある程度、共有しておくことがスタート。共有した内容に対してフィードバックしてくれた言葉で大体の方向性がイメージできるんです。

――最初に方向性を握っておくんですね。

はい。お客さまはデザイナーではないので具体的な色や形とかデザインのイメージはできませんが奇抜なものか普遍的で万人受けなものか、そういう視点でいくつかキーワードを出していくと、「それは無い」とか「そう言う方向で」とか、ある程度の範囲でお客さまの考えていることを絞り込むことができるんです。こうした手順を踏んでから提案する方が気に入ってもらえる確率が上がると思います。

お客さまが会社をどうしたいのか、このブランドをどうしたいのか、この商品をどうしたいのか、その想いをぶつけてもらった上で提案するからこそ、「あ!伝えたことがこうなるんだ!」と腑におちるところがポイントだと思います。

――そのためには、友達ぐらいの関係性になって本音を聞き出さないといけないですね。

そうですね。知り合いではランチをしに行くとか、膝を突き合わせて話をするスタイルのデザイナーさんもいらっしゃいます。私の場合は最初からヒアリングに入っていくのですが、物腰柔らかくというか、お客さまが話しやすい雰囲気を作れるように意識しています。

――ヒアリング段階で聞いた内容がズレていたら、最後までズレてしまうと言うことですね。多くのクリエイターは技術ばかりに目が行きがちなので、見落としがちな視点ですね。

はい。どんなにテクニカルなデザインを作ったとしても内容が伴っていなければお客さまに響かないので、出だしが大事ですね。ロジカルにお客さまから聞いた内容を分解して、取捨選択をした上でまた再構築していきます。大体、削り落としていくと必要なキーワードが3つ~4つくらいになるんです。ヒアリングした内容から、そこまで削り落とせると、コンセプトになりうる本質を表現するワードが残ってくるので、それを表現できる形を考えていく。

コージィデザイン

――どのくらいの割合で工数を割いているのでしょうか。

ヒアリングからコンセプト、ラフスケッチまでで全体の7割ぐらいの工数を割きます。残りの3割の時間でPCに向かってデザインを作ります。1か月ほどの制作期間で、最初の2週間~3週間はアイデアだしとスケッチに充てるので、ぎりぎりまでPC作業に手をつけないことが多いですね。

――かなりロジカルな考え方で完成に近づけるんですね。初心者はもちろん、全デザイナーの参考になりそうなお話、ありがとうございました!

▶︎駆け出しデザイナーのロゴが評価されるには?グラフィックデザイナー・佐藤浩二さんインタビュー【後編】は、こちら。

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インタビュー・テキスト:小川 翔太/撮影:SYN.PRODUCT/企画・編集:向井 美帆(CREATIVE VILLAGE編集部)

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著者情報
株式会社クリーク・アンド・リバー社
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監修
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