子育てや介護などの事情のために、フルタイムで働きたくてもそうすることができない人がいます。その中には、泣く泣く退職を選ぶしか残された道がなかったという人も少なからずいるでしょう。

しかし、通常の勤務時間で働けなくても時短勤務制度を利用することで、今の仕事を続けられる可能性があります。

この記事では、社会保険労務士監修のもと、時短勤務が法律でどのように定められているのかを解説します。

記事監修
菅田 芳恵|社会保険労務士・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー・産業カウンセラー

グッドライフ設計塾 代表 
証券会社、銀行、生保、コンサルティング会社勤務後、独立開業。49歳から2年間で社会保険労務士やファイナンシャルプランナーの資格など7つの資格を取得。現在は13の資格を活かして、コンサルティングや研修、セミナーの講師、カウンセリング等幅広く行っている。最近では企業のハラスメントやメンタルヘルスの研修、ワークライフバランスの推進、女性の活躍送信事業等で活躍している。
http://goodlife21.com/

時短勤務とは?

時短勤務とは所定労働時間を原則として6時間とする制度です。改正育児・介護休業法では「短時間勤務制度」として規定されています。

一般的な会社では、8時間勤務することが労働契約の内容となっているでしょう。
もっとも、育児をしている人の中には8時間勤務することが難しい人も少なくありません。そのような人達でも働ける環境を用意するため、時短勤務が制定されています。

時短勤務が生まれた背景

時短勤務制度は、フルタイムで働くことができない人が職を失うことで生じる、労働人口の減少に対処するために設けられました。

時短勤務制度が設けられていなかったときは、「仕事」と「育児」どちらを取るか二者択一を迫られるケースが多くありました。
どちらか一方に偏る生活を強いられてしまい、仕事と家庭のバランスを取るのが難しくなってしまいます。

仕事と家庭の両立は、女性だけでなく多くの男性も同じように願望をもっています。その希望をかなえるために、近年、企業に時短勤務制度が導入されることとなりました。

短時間勤務制度の法律について

これから、短時間勤務制度の法律について解説していきます。

短時間勤務制度の導入は義務

育児や介護のために仕事を辞めるのではなく、労働者が仕事と家庭のバランスを取れるよう支援することを目的として定められたのが、「育児・介護休業法」です。この中に、短時間勤務制度に関する説明が記されています。

事業主は短時間務制度を導入することが2009年に義務付けられました。当初対象になったのは従業員が101人以上いる企業のみと限定的です。

その後2012年の法改正により、従業員数100人以下の事業主にも導入が義務付けられるなど制度が拡大。

さらに2017年にも法改正があり、従業員からの申し出があった場合には、事業主は労働時間短縮の要求に応じるよう明記されました。
加えて、家族の介護や育児が必要な従業員に対する配慮として、時間外労働を免除する制度の導入も義務化されています。

短時間勤務制度の利用条件

短時間勤務制度は、労働者であればだれでも利用できるというものではありません。
利用するには一定の条件があり、以下の条件を満たす必要があります。

  • 条件1:3歳未満の子どもを養育している労働者であること
  • 条件2:1日の所定労働時間が6時間以上であること
  • 条件3:日雇い労働など、日々雇用される労働者でないこと
  • 条件4:短時間勤務制度の適用期間に育児休業をしていないこと
  • 条件5:労使協定で適用除外のケースに含まれていないこと

1~4の条件をクリアしていても、5番目の条件を満たしていないと、短時間勤務制度を利用できません。
労使協定による適用除外条件には次のようなものがあります。

  1. 雇用期間が1年未満でないこと
  2. 労働日数が1週間に2日以下でないこと
  3. 業務の性質もしくは業務の実施体制を考慮し、短時間勤務制度の導入が難しいと認められる場合

3番目の条件は事業主の主観が入る可能性もありますが、客観的に見て制度の導入に問題はないと見なされれば利用が可能です。

また、時短勤務制度は正社員を対象にしたものと考えがちですが、上記の条件をクリアしているのであれば、フルタイムで働いている人だけでなく、派遣やパートタイムで働いている人でも利用できます。
「自分は派遣社員だし関係ない」「自分はパートだから短時間勤務制度を利用できない」と決めつけず、しっかりと制度を理解しておきましょう。

企業独自の短時間勤務制度の導入

短時間勤務制度は国が法律として定めているものです。そのため条件を満たせば、誰にでも取得する権利があります。

ただし育児・介護での時短勤務には利用期間に制限があります。そのため、独自の措置を設けて、働きやすい環境づくりを整えている企業もあります。
いくつか事例をご紹介しましょう。

育児の場合
育児の場合、時短勤務は「子供が3歳になる誕生日の前日まで」取得が可能です。
子どもが3歳になったらフルタイムで職場に復帰しないといけません。

そのため勤める企業によっては、子どもが3歳を超えても時短勤務を認めている場合があります。

詳しくは関連記事「時短勤務はいつまで取れる?フルタイムに戻すタイミングの見極めについて」をご覧ください。

介護の場合
介護の場合は時短勤務制度以外の措置を講じることも法律で認められています。
たとえば、「フレックスタイム制度」「時差出勤制度」「介護サービス費用を助成する制度」などです。
介護は育児と異なりいつまで続くかわからないため、長期的な休みを必要とするケースが多くあります。
法で定められた制度だけでなく、労働者のワーク・ライフ・バランスをより質の良い状態に保てるよう、独自で介護のための制度を設けている企業があるのです。

時短勤務は請求しないと制度が利用できない

事業主は、条件を満たす労働者が利用できるよう短時間勤務制度を導入することが義務付けられていますが、そのことを労働者にはっきり明示して周知させる責任もあります。
しかし、制度を明示したうえで当人が請求していなければ「請求がなかったために時短勤務をさせられなかった」と言い訳することが可能です。
仮に条件を満たす労働者がずっとフルタイムで働き、後になって時短勤務に変更されなかったと不満を事業主に伝えたとしても遅いのです。

「時短勤務制度の利用は、労働者が請求した場合のみ有効。労働者が自動的にその恩恵を受けられるというわけではない」ということを肝に銘じてください。
時短勤務をしたい場合は、利用する旨を事業主に伝えることを忘れないようにしましょう。

ただし、請求すればすぐに時短勤務ができるようになるとは限りません。仕事をどのように引き継ぐかなど、双方が納得できる形で制度を利用する必要があるからです。
できるだけ十分な時間的余裕をもって、早い段階で利用する旨を伝えるようにしましょう。

条件を満たせばどの企業でも時短勤務できる!

短時間勤務制度は法律によって定められているので、どの企業でも時短勤務が可能です。それで、育児や介護などのために、フルタイムで働くのが難しい場合、時短勤務を考えてみてください。ただし、満たさなければならない条件があるので、その条件を自分がクリアしているかどうかを見極めて、当てはまっているようなら積極的に請求しましょう。