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「自分らしさは、人と違う見せかたを徹底的に検証することで生まれる」各業界からオファーが絶えないグラフィックアーティスト・ステレオテニスさん

2018/09/04 デザイン

アーティストや企業とのコラボレーションなど、幅広いジャンルでグラフィックやイラスト、様々な手法を用いて活躍するステレオテニスさん。80年代のノスタルジックな時代感覚と、現代のリアルさを共存させたデザインが唯一無二の特徴として各業界から引っ張りだこの存在です。
今回はそんな彼女に、キャリアスタートのキッカケから仕事に対するポリシーなどを伺いました。

ステレオテニス
グラフィックアーティスト・イラストレーター
ノスタルジックな時代感覚を、イラスト表現やグラフィックなど様々な手法を用いて作品へ取り入れ、
なかでも80年代グラフィックのトーン&マナーを現代に落とし込む作風を軸とする。

リヴァイヴァルでありながら時代に沿って刷新していくデザインが特徴。

多岐にわたるコラボレーションやグラフィック提供を行い、電気グルーヴ、木村カエラ、DISH//、ももいろクローバーZ、きゃりーぱみゅぱみゅ、ハローキティ等、様々なアーティストとのコラボレーションやツアーグッズも手がける。

テレビ東京「怪奇恋愛作戦」エンディングやポスター、PARCOバレンタイン広告、GAP、31アイスクリーム、TOYOTA vitsなど、様々な企業とも積極的に取り組み、ジャンルを超えて活動を行う。最新では2018年東京ガールズコレクション春夏のキービジュアルを担当。
Twitterアカウントは@microhitomi
Instagramアカウントは@stereo.tennis

デザイン事務所に属しながらフリーランスとしても活動

――現在のような仕事をするキッカケなどはありましたか?

学生の頃にクラブなどでVJをしていたので、それが一応発端ですね。
初期衝動的なことだと、小学校高学年くらいの頃からCDのジャケットや雑誌で好きなページを切り抜いてスクラップしていたんですね。特にピチカート・ファイヴのCDジャケットや、ミュージックビデオを見ては「将来こんな作品を作るような仕事に就きたいな」と思ったりしていました。

――幅広いジャンルで活躍されていらっしゃいますが、キャリアのスタートはどのようなお仕事だったんですか?

元々は京都の美術系大学でグラフィックを専攻していて、「design plex」などのデザイン雑誌が流行りだした頃で、より具体的にデザイン全般に興味を持ち、グラフィックにまつわることをやってみるようになったんです。卒業後はデザインのアルバイトをしたり、Webデザインの会社でデザイナーとして働いていました。当時並行してフリーランスでグループを作って活動もしていて、少しづつフリーランスでの仕事依頼が増えてきました。

――学生時代の活動の延長から仕事と両立されるってすごいですよね。

当時は周りのデザイナーも仕事を持ちながらフリーの仕事を両立させている人が多かったんです。だから私も最初から両立することにして、フリーの仕事をやるうちに人との繋がりも増え、アパレルや音楽関係の人から依頼が来るようになって。2005年ごろ上京しました。

80年代モノに対する世間の捉えかたが変わってきた

――ステレオテニスさんの作品は80年代カルチャーの要素が特徴的ですが、初めから80年代のトーン&マナーは意識してたんですか?

今思うとそうですね。たた、以前とは自分の中で捉え方が変わってきていて。昔は色使いが好きとか、ゴチャっとした感じの違和感がカッコイイ、奇抜でオシャレ、とかそういう感覚があったんです。でも今は、映画でも音楽でも80年代のリバイバルって定番化してるじゃないですか。私は80年代をテーマにしてずっとやっているけど、ここ最近私が世の中に出すものが抵抗なく浸透していくのを見ると、受け取る人たちの感覚が変わってきてるのかなって思うんですよね。80年代を知らない若い子達も、リバイバルだとしても80年代に触れると新鮮でありどこか懐かしいとか、癒されるとか見ていて楽しい感覚なんじゃないか、と思うところに注目していて。

なので、作品を作るときも受け手側の感覚の変化を前より強く意識するようになりました。単純に懐かしいっていう気持ちを想起させるんだけど、現在進行形の流行を追う人々が、私のデザインを見て「あ、かわいいな!」という新しい感覚の発見が増えてると思います。

他人の作品との差別化を意識して自分の中で徹底的に追求する

――ご自身の感覚と現在進行形の流行などが混ざって、落とし込んだ結果こういう作品になった、みたいな具体例はありますか?

2018年東京ガールズコレクション春夏のキーヴィジュアルですね。

テーマが「Be Yourself」だったので、私なりに解釈して「周りに合わせたりしなくていい、自分の好きなことを続けていくことが私らしさにつながる」というコンセプトで作り始めました。東京ガールズコレクションって女の子の祭典だけど女性のためだけじゃないから、黒を多用したり、あえて女性らしさを抑えたかったんですよね。

――このヴィジュアルを見て懐かしさを感じながらも、東京ガールズコレクションの目的の1つである「最先端の流行を紹介する」ということをふまえて新鮮な感覚が取り込まれているのがわかります。各クライアントのリクエストに応じながらも自分らしさを出すために気をつけていることってありますか?

相手がオーダーする意図はもちろん入れます。作家性は求められますが、
クライアントが何を求められてるかはしっかり聞いて反映します。そこからは「どうすれば人と違う見せかたをできるか」、例えばただ簡単に80年代をモチーフにした他の表現方法と一緒にならないように、というはすごく意識します 。とにかく引き出しをたくさん持って、自分の中で「本当にこの表現方法でいいか」っていう検証をトコトンするんですよ。

――どうやって検証するんですか?

パターンをめちゃくちゃ作ったり、一旦作ってからすごく時間を空けて客観的に見るようにしたり。そうすることで自分が本当に新しいと思ったらそうだし、違うと思ったらやり直したり、その時間がえらい長いですね。配色はこれで新鮮に見えるかなとか。流動的に数十パターンとか枝葉に分けて作っていくんで、一度でバンと作るより、こういう要素入れてみたらどうだろう、こういうのやってみたかったな、みたいな感じで作りますかね。その作業が楽しかったりもするし、手を広げ過ぎて収集がつかなくなることもたまにあります(笑)。

――たくさんのパターンを作る上でのアイデアの源やインプットはやっぱり80年代ものが多いんでしょうか。

それは80年代に限らずですね。古本やイラスト、漫画、映画、あらゆるものを見て良いなと思ったらストックしています。みんながやってる手法ではありますが、良いものは受け継いでいきたいと。あとは「いいな」って思う感覚を常に新鮮なまま持ち続けたいので、常に学び続ける姿勢でいることも意識してますね。

初めて作品を立体化して変わったこと

――これまでのキャリアの中でターニングポイントだった仕事を選ぶとしたら、どのお仕事ですか?

最近オープンしたイクスピアリ内のプリクラ機専門店のクリエイティブディレクションです。私の作品を初めて立体にして、架空の街みたいなものをテーマにしました。メイクができるカウンター席や看板など、自分の世界観を立体にしたことで見る人たちの反応も変わったんです。ヴィジュアルで見ると「懐かしいね」「カワイイね」で印象は終わるのですが、触れられるようになったことで見る人達の中の視覚的な情報の時代感が取っ払われたというか。

――立体にしたことで何故受け手側の感覚が変わったんですかね?

目で見るだけの視覚情報じゃなくて「体験させた」っていうのが大きかったのかもしれません。見るのと体験するのとでは、受け手の人たちの感覚が変わるんだとわかったのは自分の中でターニングポイントでした。

今までのキャリアが通用しないところでチャレンジしてみたい

――今後やりたいことはありますか?

最近は2つあって。1つは最初にお話したように、80年代に対する感覚をもっと深めていくこと。ただブームで終わる80年代リバイバルではなくて、受け手の人たちのその懐かしい気持ちがどこから来てるのかを探りたいです。時代が進んで、ハイテクノロジーになればなるほどローテクノロジーが必要とされるっていう不思議な関係があるじゃないですか。その中で私の役割はローテクの感覚、エモーショナルな感じを突き詰めていきたいですね。

2つめは、地方で今までとはまた違った新しいことをしてみたいんです。東京だとクライアントもたくさんあるし自分が活かされる場は多いんだけど、今は自分単体でこれまでと違ったことをするのが楽しくなってきていて。例えば80年代表現という得意な分野だけに縛られず、地方だからこそ生まれるアイデアと一緒になって自分が解釈して出せるものがあるのかなとか。直接誰かの役に立てる機会も多いと思うので、自分がやってきたことをベースに還元できることがあったら新しい手応えを感じられそうだなと。東京以外で活動することで、今でやったことのないことにチャレンジ出来たら良いなと思います。

――では最後に、クリエイターを目指す方々へのアドバイスをお願いします。

会社に属していてもフリーランスでも、自分の作品や好きなものを貫いたほうが良いと思います。「もうこれしかない!」って思えたら強みになるし、それを見つけるほうが大事。ちょっとでも「いいな」って思ったら、周りを気にしないで、いいと思ったらそれをずっと続けていくほうが、私の経験上からもよさそうです。

インタビュー・テキスト:上野 真由香/撮影:SYN.product/企画・編集:市村武彦(CREATIVE VILLAGE編集部)