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『鋼の錬金術師』で目指した革新的VFXとは? 曽利文彦監督が新たな挑戦と、海外で学んだ映画作りを語る

2017/11/30 映画

第30回東京国際映画祭のオープニングを華々しく飾った、国民的人気コミックの実写映画『鋼の錬金術師』がいよいよ12月1日(金)より公開されます。メガホンをとったのは、『ピンポン』、『ICHI』、『あしたのジョー』など人気コミックを実写化し、3DCGアニメ『APPLESEED アップルシード』をプロデュースした曽利文彦監督。

ハリウッドに渡り、『タイタニック』のCG制作にも関わった経歴をもつ曽利監督は、常にワールドワイドな視野をもち、毎回ビジュアル革命を起こしてきました。今回挑んだのは、フルCGで描く鋼鉄のキャラクターに魂を与え、俳優とシンクロさせるという離れ業です。そんな曽利監督にインタビューし、原作もののアプローチ方法から、モーションキャプチャーなどの技術革新、海外で学んだ映画作り、そしてチャレンジ精神の根底にある熱い思いについて伺いました。

映画監督:曽利 文彦(そり・ふみひこ)
1964年、大阪府生まれ。1997年USC(南カリフォルニア大学大学院)映画学科在学中、ジェームズ・キャメロン監督『タイタニック』(97)のVFX を担当。
帰国後、2002年に『ピンポン』で映画監督デビュー。同作で第26回日本アカデミー賞にて優秀作品賞、優秀監督賞を受賞、第24回ヨコハマ映画祭にて新人監督賞を受賞。2004年、3DCG アニメ映画『APPLESEED アップルシード』をプロデュース。実写映画の監督作品に『ICHI』(08)『あしたのジョー』(11)などがある。

原作もののアプローチは内面をより重視

これまでいろいろな人気コミックを実写映像化してきましたが、キャスティングもアプローチ方法も比較的内面を重視しています。確かにエド役の山田涼介くんは、風貌からして日本人離れしています。でも、実は外見より内面的なものがさらに大事だと考えていますので、この役者さんだったらこんなふうに演じてくれるだろうというイメージや役者さんのオーラで決めることの方が多いと思います。

映画監督:曽利文彦もし、自分が監督した作品の役者さんが原作のキャラクターと似ているとしたら、それは役者さんの努力の方が大きいと思います。今回で言えば、エド役の山田くんやラスト役の松雪泰子さんという2トップがビジュアルリーダーでした。山田くんは、激しいアクションをこなさないといけなかったので、地毛を染めてもらいました。

実際、山田くんは現場で役者としての多才ぶりを発揮してくれました。屋根の上を25m疾走した後でバーンと飛ぶシーンがあるんです。おそらくビルの3階くらいの高さで7~8mはあり、下を見るだけで足がすくむんですが、彼は1回も練習せずに、いきなり本番で飛びました。一発OKでしたが、本当にびっくりしましたね。この人は何者なんだ?と。年齢とは関係なく男として尊敬できると思いました。まさに映画スターでした。

松雪さんは、ヘアスタイルから何からご本人の作り込みが素晴らしかったですね。いい意味で、松雪さんが先陣を切り、すごくコミックスを意識した外見とお芝居をしていただいたので、他のキャスト、スタッフも「やらなきゃ」と奮起しました。

でも、大泉洋さんの場合は違います。大泉さんから「外見を寄せますか?」と聞かれた時「今回はお芝居だけでシンプルに本質に迫りましょう」とお願いしました。タッカーという役はナチュラルに入ることが重要で、逆に作らない方がいいと思ったからです。つまりそれぞれの役柄でアプローチ方法は違います。

最大のチャレンジは、主人公とフルCGのキャラクターをシンクロさせること

映画監督:曽利文彦今回はアルをフルCGで描くことが最大のチャレンジでした。原作やアニメーションだと多少、表情をデフォルメしたりできますが、実写だとなかなか難しいと思います。今回は敢えて目も表情も全く動かしませんでした。

モーションキャプチャーは、スタンドインとしてオーディションで選ばれた水石亜飛夢くんが演じてくれました。当初、アルの声は別の方を想定していましたが、エドと兄弟喧嘩をするシーンのお芝居は見事な出来栄えだったので、そのまま水石くんにアルの声も担当してもらうことになりました。

もし、観客の皆さんがCGのアルに感情移入していただければ、実存という意味で、ようやくハリウッドに追いついて来た気がします。

『タイタニック』のCG制作で実感した日本とハリウッドの共通点と相違点

絶対海外に出ないといけないとは思いませんが、一度出てみると価値観や視点は間違いなく変わります。私は南カリフォルニア大学で映画学科を専攻しましたが、『タイタニック』のCG制作に参加して、ハリウッドの仕事の進め方が少し学べた気がします。一番感じたことは、ハリウッドも日本も個人個人のレベルはあまり変わりませんが、ハリウッドは組織になった時、すごい力を発揮するという点でした。

自分は日本人として参加しましたが、本当に人種は関係なく、日本人のスキルに対するリスペクトもちゃんと感じました。ただ集団の作り方、つまり組織力がすごくて、そこは日本との差が大いにあると思いました。映画はひとりじゃできないものですし、バジェットが大きくなればなるほど、組織化される必要があります。組織の作り方に関しては本当に学ぶべきところがたくさんありました。

やっぱり集団の力ってすごいと思います。例えば私は100人以上のスタッフと一緒に映画を作りますが、最終的に自分が想像のつかないものが出来上がったりするんです。つまり、私は指揮系統のトップにいますが、大勢のスタッフの一部にすぎない。それが映画作りの一番面白いところだと思います。

クリエイターに必要なことは最初から結果を想定しないこと

映画監督:曽利文彦映画作りには常にプレッシャーがつきものですし、すごく大変な作業だとも思います。ただ、出来上がった時の喜びとか充実感、満足感はそれを超えていくので、差し引きするとプラスになるんです。

今後クリエイターを目指す方にお伝えしたいことは、何事もまずはやってみるということだと思います。最初から結果を考えると怖くなってしまうし、尻込みもするので、私はまず「はい!」と手を挙げてやってみるということを信条にしています。

それは、山田くんがリハーサルなしで高所からジャンプしたことにも通じると思います。あとから本人に「怖くなかった?」と聞いたら「いや、怖いです」と言われました。「きっと下を見たら怖くなるし、考えると余計怖いです。ただ、僕がやらなきゃ現場は終わらない。だからやった後で考えようと」と彼は言っていて。まさにそういうことだと思います。

たぶん人生も同じで、やってみなきゃわからないことも多いですから、先のことをあまり深く迷い続けない方がいいと思います。悩んで時間ばかり経ってしまうより、まず行動することは重要だと思います。もちろん失敗することもありますし、やらなきゃ良かったと思うこともあります。でも、やらずに「ああ、やっておけばよかった」と後悔するよりよほどいいと私は思っています。失敗したらまたやり直せばいいことですから。

(取材・ライティング:山崎 伸子/編集:CREATIVE VILLAGE編集部/撮影:伊藤 尚)

作品情報

映画「鋼の錬金術師」

(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会



『鋼の錬金術師』は12月1日(金)、全国ロードショー

物語

全世界待望のファンタジー超大作、兄弟の絆を賭けた冒険が始まる!
運命に挑む兄弟エドとアル。幼き日に最愛の母を生き返らせようと、禁断の術を犯したエドは手脚を失い、アルは魂だけの鎧の身体になった。必ず弟の身体を戻す――そう決し、鋼の義肢、オートメイル(機械鎧)を身に着けたエドは、やがて“鋼の錬金術師”と呼ばれる存在となる。身体を取り戻す唯一の手がかりは、謎に包まれた「賢者の石」。伝説を求めて旅をする二人は、やがて国家を揺るがす恐大な陰謀に巻き込まれていく…。壮大な旅の果てに、待ち受ける驚愕の真実とは? 兄弟の絆を懸けた、超ド級の冒険がいま始まる!
<錬金術――それは、あらゆる物質を新たなものに作り変える魔法のような科学>

映画「鋼の錬金術師」

(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会

原作:「鋼の錬金術師」荒川弘(「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
監督・脚本:曽利文彦 脚本:宮本武史
出演:山田涼介、本田翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子、本郷奏多、國村隼 、石丸謙二郎、原田夏希、内山信二、夏菜、大泉洋(特別出演)、佐藤隆太、小日向文世、松雪泰子
配給:ワーナー・ブラザース映画

オフィシャルサイト

http://hagarenmovie.jp