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フジテレビ『バイキング』プロデューサー 山本布美江さんインタビュー 間違いは許されないからこそ1回1回が勝負

数々の人気バラエティを手がけてきた山本布美江さん。
現在はフジテレビで月〜金のお昼に生放送中の『バイキング』水曜日プロデューサーとして、生放送ならではの楽しさや大変さを実感していると言います。
幼い頃から抱き続けてきたテレビへの思いから今後業界で働きたい人達へのアドバイスまで伺いました。

山本 布美江(やまもと・ふみえ)
1975年生まれ。千葉県佐倉市出身。上智大学文学部教育学科卒業。
1997年フジテレビ入社。1年の現場研修を経て、バラエティに配属。以降、20年に亘りバラエティ番組の制作に携わる。
『ザ・ジャッジ!』『おまたせラグ定食』『あいのり』『最強運芸能人決定戦』などでディレクター及び演出を担当。
『人志松本の◯◯な話』『アイアンシェフ』『ワイドナショー』などでプロデューサーを経て、現在『バイキング』プロデューサー。
お台場の夏のイベントでは、熱中症対策のため『ミストマン』というイケメンユニットを結成、CD制作やステージ演出など5年に亘り総合プロデュース。

幼い頃からずっとテレビに関わる仕事がしたかった

幼い頃から私にとってテレビは身近な存在でした。おばあちゃんっ子だったので2人で過ごす時間が長く、ずっと家にいると自然とテレビを見る時間も長くなるんですよね。祖母との会話もテレビの話題が多く、野球や相撲、時代劇などをよく一緒に見ていて。

当時から思っていたのは、祖母のように高齢で動けず家にいる方や主婦の方、入院されてずっと病室にいる方などにとって、テレビを見ている時間は家族と過ごす時間よりも圧倒的に長いんじゃないかということ。
例えば仮に病室で1人で亡くなるというようなことがあったときに、もしかしたら最後に見るのってテレビなんじゃないか。そう考えると、テレビはパワーを与えたり元気づけたりできるすごい存在だなと。漠然と将来はテレビに関わる仕事がしたいという夢を抱きつつ、大学に進むと決めた時点でテレビ局に入る決意を固めました。

テレビ局といっても、入るならフジテレビしか考えてなかったんです(笑)。私がいつも見ていた番組は圧倒的にフジテレビが多かったし、どの番組も見ていて楽しい気分にさせてくれるのが大好きでした。

就職活動ではとにかく自己PRに注力。
学生時代に私はチアリーダーをやっていました。チアって一見華やかな世界に見えますが、私は常に人を持ち上げたり飛ぶためのサポートをしたりと、顔が見えないポジションでした。
でも、その役割はテレビ制作でも当てはまると思ったんです。
上で飛んだりヴィジョンで見えたりする人はテレビで言うとタレントさん。それを下で支えるのが自分の仕事として向いている、表に出る人を輝かせるためだったら何でもできるという少しの自信を一生懸命アピールしました。
念願叶ってフジテレビに入社し、1年の研修を経た後、元々の志望だったバラエティ制作へ所属することができました。

大変だけど鍛えられた「あいのり」

AD時代は『SMAP×SMAP』や『100%キャイ~ン』などを担当し、4年くらいがむしゃらに働き徐々にディレクターとしての仕事もするようになりました。
たくさんの番組に関わらせていただきましたが、特に鍛えられたのは『あいのり』。私の個人的な意見ですが、『あいのり』は制作側にとっては日本一大変な番組だと思います(笑)。

世界を周りながら撮影する大変さはもちろんあるんですが、それ以上に大変なのは本当に一切台本がないこと。ロケ地だけは撮影許可を取らなきゃいけないので事前にある程度決めますが、それ以外は何もなくて。現地に入ってから全てを決めて、テレビとしておもしろく作らなくちゃいけない。しかも人の気持ちをコントロールすることはできないし、誰かを好きになってくれとも言えるわけじゃない。

1回のロケで2週間くらい滞在する間にそれぞれのキャラクターを知ってストーリーを作ってっていうのは本当に大変でしたし、帰国後も素材は莫大にあるので編集作業はさらに大変。
でも、ディレクターとしては本当に鍛えられました。海外という慣れない土地で突発的なことに対して自分が判断を下し、たくさんのことを同時進行で回していく対応力が必要。だからこそ大変だけど、それを乗り越えられたという自信にもつながったと思っています。

後にはプロデューサーとしても『あいのり』に携わり、番組によってディレクターだったりプロデューサーだったりという期間を経て2009年からは本格的にプロデューサーへ。『堂本兄弟』や『アイアンシェフ』『人志松本のすべらない話』、『IPPONグランプリ』『おもしろ言葉ゲーム OMOJAN』『ワイドナショー』などを担当してきました。

女性目線で共感できる番組をしっかり作っていきたい

プロデューサーとして自分が手がけた番組の中で特に思い入れが強いのは、去年特番で放送した『本当にあった女の人生ドラマ』。レディースコミックを原作に、ドラマとバラエティの要素を合わせたものでした。
女性の人生って、男性よりも選択の意味が重い場面が多いじゃないですか。
結婚するしない、子どもを産む産まない、その他にも色々なパターンの実話をベースに“こういう人生を選んでもこういうトラブルがあるよ” “私の人生の方が幸せかも!”と思えるような、たくさんのケースを集めたら女性に共感してもらえるんじゃないかという手応えがあったんです。

やってみてすごくおもしろかったし、今までバラエティであまりお仕事しなかった女優さんとも初めてご一緒できて。撮影の合間に、演じている役が本当に自分だったらどうするかという話題で盛り上がったりして、とても楽しかったですね。
これからも女性に喜んでもらえる番組を作っていきたいと思っています。

テレビを見てる人って圧倒的に女性が多いんですよね。男性は「これを見せれば女性がおもしろがるだろう」と思いながら作っているわけですよ。
だから私が女性として本当に共感してもらえる、楽しんでもらえる番組を作っていかなくちゃ、という責任感もあるかもしれないですね。

間違いが許されないからこそ誰より勉強する

現在は『バイキング』の水曜日担当プロデューサーをしています。時事ネタを扱う番組なので、今までずっとバラエティ畑にいた人間としては、情報を扱うことに対して細心の注意を払うことを絶対的に意識しています。
出演者の方に自由に語っていただくには誰より自分が情報に対してしっかりしてないといけないし、間違いは許されないので時間がない中で毎週猛烈に勉強するんです。
いろんなプロフェッショナルの方に聞きまくって、正しい情報か、誰かを傷つけないかなど、そこまで見越した上で制作するので神経は相当使いますね。

ただ、もちろんあまり堅苦しくなってもおもしろくないので、週の真ん中水曜日ということもあり、ゆるい感じで見られるように意識はしています。
出演者の方もアンガールズさんや松嶋尚美さん、森泉さんなど和気あいあいとしているので、誰かが切り込むというよりもふわっとした空気感を保てるネタを選んでいますね。
生放送なので常に更新されていく情報に対応するのが一番大変ですが、逆にそれが一番のやりがいとも言えるかもしれません。

“アイデア”と“人を動かす力”を発揮するしかない

時間さえあれば国内外問わず旅行へ行きます。最近では傘のお祭りを見るためにポルトガルへ。
会社に篭っていても何も生まれなくて、自分にとって新鮮な場所で見たことのない世界を体験しないとアイデアは生まれないんですよね。
『あいのり』を作っているときもそうでしたが、世界各国へ行って、日本ではありえないことに遭遇する。そうやってたくさんの価値観に触れることは、偏った感覚にならないためにもすごく大事ですね。

今の時代はどんどん便利になっていて、自分が行かなくてもネットで行った気になれるし、実際に会わなくてもいくらでもコミュニケーションができちゃう時代ですが、やっぱり直接行ったり話したりすることってすごく大切だと思いますし、働く上での基本だとも思います。
特にテレビ業界ではコミュニケーション力があるかないかは重要です。番組作りは1人じゃ絶対できない、チームワークが命。特にディレクター職は自分の作りたいものをスタッフに伝えなくちゃいけないですから。

テレビ番組は、カメラさんや照明さんなどの技術スタッフ、セットや小道具などを用意する美術スタッフ、編集オペレーターさんやナレーターさん、そして出演するタレントさんなどなど、本当に多くの人たちが関わって作られています。
しかし、ディレクターやプロデューサーって、そういう方々と違って何の技術も持ってないんですよ。アイデアと人を動かす力しかない。番組に関わるプロフェッショナルな人達にいかに気持ちよく力を発揮してもらい、ひとつのものを作り上げてもらうかっていう作業でしかないんです。
だからこそコミュニケーション力が必要だし、自分が何も持ってないからこそ協力してくれる人をいかに増やしていけるかっていうことが大事だと思います。私もそういったことを先輩や周りのスタッフから学ばせてもらってきました。

ずっとこの業界で働いてきて、今でこそ女性が増えましたけど基本は男社会。
女性だからという理由で注目されることもあるし、下手をすれば男性より目立つ。

だから今まで1回1回必死に勝負してきました。

多少理不尽に感じることもありましたが、先輩が切り開いてくれた道があったから頑張れた部分もありました。
今では男性と遜色なくたくさんの女性ディレクターが活躍しているので嬉しいですね。
ただ、最終的には性別は関係なく人間力の勝負だと思います。自分から積極的にコミュニケーションを取っていけば、周りのスタッフは応えてくれるし助けてくれます。

私自身、AD時代に一緒に仕事をしていたカメラさんや照明さんとはしょっちゅう夜飲みに行ってコミュニケーションを取っていました。
そういう方々が今ではベテランになり、何でもやるよと協力してくれるのが本当にありがたい。昔から一緒にやってきた人達が今も頑張ってくれていて、ひとつひとつの関係がずっと続いているのは自分にとって財産ですね。

今ではテレビ以外のエンターテインメントもたくさんあって、エンタメ業界を目指すにしても、私が学生のときより選択肢がすごく増えていますよね。
でも私はテレビって無料で見られる一番のエンターテインメントだと思っているので、その素晴らしさを伝えていきたいですね。人の喜怒哀楽を刺激する繊細な仕事だし、影響力も大きい、そこを踏まえた上で頑張っていける人にテレビを盛り上げて欲しいと思います。やっぱり番組を作り上げる達成感、そしてそれに対して反響がいただける醍醐味が、テレビならではの魅力じゃないでしょうか。

(取材・ライティング:上野 真由香/編集:CREATIVE VILLAGE編集部/
撮影:TAKASHI KISHINAMI)

番組情報

『バイキング』
(毎週月~金・午前11時55分~午後1時45分放送)

坂上忍と各曜日MCが、毎回専門家や豪華ゲストをスタジオに招き、
今話題の時事ニュースや、芸能ニュース、さらには身近な出来事について、建前なしの本音で生激論を繰り広げていく、生ホンネトークバラエティ。

公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/viking/