キャラクターデザイン界のレジェンドがCREATIVE VILLAGEのインタビューに登場!
大手ゲーム会社でのキャリアを躊躇なく手放し2011年に起業、キャラクター専門の株式会社Studio Okanotionを設立。これまで数々のキャラクターを世に送り出してきた、岡野聡氏です。

実はそんな岡野氏もクリーク・アンド・リバー社に登録しているクリエイターのひとり。
当時の岡野氏は、エージェントを転職活動ではなく、人脈&案件の獲得手段とし、自身の事業に繋げるというアクロバティックな活用術をみせました。

「なぜ岡野聡はこんなにもエージェント会社を利用するのが上手いのか?」

全てのクリエイターに共通する、好きな仕事で生き残るための仕事術をお伺いしました。

岡野聡(おかの さとし)/OKN(おーけーえぬ)
武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒業。在学中からゲームの制作プロダクションで働き、その後大手ゲーム会社に転職
これまでに多数のゲームタイトルの商品開発にデザイナーとして参加。2006年に「岡野の概念」という意味の造語でスタジオ・オカノーションという屋号でフリーランスとなる。2011年に法人化。キャラクターデザインからものつくりのコンサルティングなどで活動中。
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リサーチとポップさを武器に。埋もれないデザインづくり

――岡野さんのスタジオで制作されたキャラクターやアニメーションは、ある程度の軸足や傾向がありつつも、クライアントさんの要望や時代にアジャストしてる感じがしますよね。

独立前に所属していたゲーム会社でのデザイン経験が活きていますね。ゲーム会社ってアクションゲームを作った後に、リズムゲームを作ったりするので、仕事によってスタイルを変えるのが癖になっています。だからクライアントさんの要望に応じて表現を変えるのがそんなに苦じゃないんです。

――キャラクターをデザインする上で意識しているのはどんなことでしょうか?

お客さんの目に止まるように、埋もれないポップなデザインにすることは常に意識していますね。

ポップという言葉自体は人気があるとか明るい・楽しいとか、そういう意味でしょうけど、埋もれないためにポップにするんです。そのためにはリサーチも行います。

――リサーチ、ですか。

たとえば大相撲展の仕事だったら、相撲のグッズにはどういうものがあるのか、両国まで調べに行くんです。

お饅頭がある、力士の手形のサイン色紙がある、団扇みたいのもある。それとは別に両国国技館で親方が手売りしているセンスのいい商品がある。

すると「じゃあ、それらのグッズの中間が空いてるぞ」と気付くことができる。そこにポッと良い塩梅の見た目のグッズを放り込めば、新しいお客様の層を創れるんじゃないか、とかね(笑)

加えて、ポップなデザインで目を引くように意識しています。

大相撲展のキャラクターグッズ

――クライアントにそういった提案をする機会も多いのでしょうか。

徐々にそうなってきました。独立した当初は来る仕事を納めるだけだったんですけど、40歳を超えたぐらいからですかね。自分で企画書を書いたり言われなくても提案したりするのも、アリだなと思って(笑)

30代半ばくらいでスタジオを立ち上げてから15年になりますが、仕事の領域を「キャラクターにまつわるモノやコト」にしようと決めました。そこからはゲームの仕事もあれば、クリーク・アンド・リバー社さんとご一緒させてもらった深夜のテレビアニメーションもあれば、という感じで幅が広がっていきました。

転職だけじゃない!岡野流エージェント活用術

――――岡野さんは個人として活動されながらクリーク・アンド・リバー社との付き合いも長いですね。

そうですね、もう長い付き合いですね。

このCREATIVE VILLAGEも、実はけっこう前から読んでいます。他のクリエイターが何を考えているのか知ることができて面白いです。他分野の方のインタビューを読むと知らないことを勉強できますし。

最近は前田さんのインタビューを拝読しました。『勝てるデザイン』という本を出版されている。凄いかっこいいなぁって(笑)。確かに「方程式を作る」とか仕事では必要だよなぁと思いながら読んでました。

――読んで頂いてありがとうござます!クリーク・アンド・リバー社に会員登録をされたのは起業される数年前だそうですね。

はい。転職や企業勤めは考えていませんでしたが、案件獲得のためのエージェントを調べてたらクリエイター専門のエージェントとしてクリークさんを知って登録しました。

いくつかお仕事を紹介してもらって何回か通うようになってくうちに、とある飲み会の場で映像のプロデューサーと出会う機会があって。

試しにアニメの企画書を持っていったら同席された女性のプロデューサーの方に気に入って頂けて、フジテレビの部長に繋いで頂いて、そこからはトントン拍子でしたね。

深夜のティーン向けアニメとして採用されて、バラエティー番組のワンコーナーみたいな感じで、1年半くらい続けさせてもらいました。

ふりぃきぃ~はいすくーる
▲岡野さんが演出・アニメーションを担当されたアニメ「ふりぃきぃ~はいすくーる」

――キッカケ作りをお手伝いできたのは嬉しいですが、岡野さんの行動力がすごいです(笑)10年以上の付き合いの岡野さんから見て、今のクリーク・アンド・リバー社はどう見えてますか?

いやぁ、立派なビルだなと(笑)。

――(笑)
そもそもクリーク・アンド・リバー社は転職支援だけでなく、クリエイターのキャリアを生涯にわたって、幅広いスタイルでサポートするのが目的の会社です。
なので、岡野さんとの関係性はクリーク・アンド・リバー社が描く理想的なクリエイターとの関わり方なんです。

クリーク・アンド・リバー社さんの理念の一つに「クリエイターの生涯価値の向上」ってあるでしょ。

実際に僕はテレビの仕事で知的財産を得ることができて、その知的財産を今でもSNS等で活用させてもらったりしています。
自分の書いた企画書がメディアに載って、著作権も保持させてもらってるというのは、クリエイターの価値向上に繋がっていますよ。

単発の仕事だけでなくレギュラーの仕事もあったり、制作だけでなくアートディレクションまでさせてもらえたり、ありがたいです。未だにお世話になってます。

――そこまで言って頂いて恐縮です。ただ現状、クリーク・アンド・リバー社はその理念をまだまだ世間に伝えきれていないような気がするんです。クリーク・アンド・リバー社のエージェントとクリエイターは、どのようなコミュニケーションをとっていくべきなのでしょうか?

そうですね、やっぱり「無駄なことをしてみる」ことじゃないですかね。

面談時間が30分あったら5分延長して無駄話をしてみる。クリエイター側も「今度テレビの部署のエージェント紹介して下さい」とか全然言ってもいいですし。セミナーに行ったら自分の名刺をいろんなエージェントに配るとか。

どんな話でもいいんですよ。「僕このゲーム好きだったんですよね、今日この開発者の方に会えて嬉しいです」「ところで、何かゲームの仕事ないですかね?」みたいな(笑)

――なるほど(笑)

無駄なことというか、雑談ですね。そういうプラスアルファな話を、ちょっとだけはみ出してやってみたり提案してみる癖をつけておく。

クリーク・アンド・リバー社さんには多彩なバックボーンを持たれているエージェントさんが多いので雑談がしやすいですよ。どんな雑談にも乗ってくれます。

キャラクター作りは「納品したら終わり」ではない!

――岡野さんのキャラクター論をもう少し教えて下さい。例えばクリーク・アンド・リバー社の公式キャラクターを作るとしたらどんなご提案をされますか。

突然ですね(笑)

うーん…、そうですね、まず1番最初に頭に浮かぶのがあのマークですよね。筆でバッと書いたような物凄い勢いのあるマーク。
あのマークを参考にしながら、代表の方が会社を興すきっかけになったアフリカの村落での体験をもっと上手く表現できないか…という視点で考えていくと思いますね。

――クリークのロゴに足がついただけでソニックに出てきそうなキャラクターになりますよね(笑)

確かに、なるほど…あのロゴマーク動かしてみますか、どっか谷みたいな所を滑らせてみるとか(笑)

でも、実はその一瞬だけ面白いって思われて終わるんじゃなくて、ちゃんと継続するキャラクターにしたいんです。

――どう継続して親しんでもらえるかを真剣に考えているところに岡野さんのキャラクター愛を感じます。

納品した後も、キャラクターの評判についての動向は見守るようにしていますね。
1年経ってちょっと可能性がありそうなら「あのキャラクターいい感じになってますよね、次の一手打ってみませんか?」とメールしてみたり、依頼されていないのに企画を持っていってみたり(笑)

最近の仕事で言えば、私が制作に携わっていた『暴れん坊天狗』というタイトルが、ファミコン版の発売から約30年の経てSwitch版が出ると連絡がきました。

ファミコンの『暴れん坊天狗』はパッケージがゲーム画面で正式なイラストがなかったのですが、30年ぶりにお声がけ頂いて、タイトルの「顔」になるイラストをしっかり気概を込め目標を立てて制作しました。そしたら発売日の告知Twitterがトレンド入りしまして、ちょっとしたお祭り状態になってました(笑)

暴れん坊天狗・イラスト

――岡野さんはただキャラクター作って終わりではなく「ユーザーがそのキャラクターとどう触れ合ってくれるのか?」みたいなタッチポイントも合わせてご提案されてることが多い印象です。

そうですね。「このキャラクターはどう親しんでもらえるか?」という予想は常に自分の中にあるんです。
自分の好みとは別に「周りの人はこう感じる」を考えたり、リサーチするのが癖になってますね。

「好きな仕事で生き残る」若手クリエイターがやるべきこと

――若手クリエイターは、まだ自分が提案できる立場でもないし、下積み状態で結構苦しい人も多いです。岡野さんのように好きなことで仕事をしていくには、何をするべきなのでしょうか?

好きかなのか得意なのかは自分でも分からないのですが、たとえ怒られてもいいからプラスアルファを提案し続けることです。提出するものにプラスして、「あの、こんな企画もあるんですけど…」って。そこで上司やクライアントに「バーン!」ってひっくり返されてしまってもいい。そういう一見無駄な努力を重ねることです。

――その企画書にかけた労力は無駄じゃないということですね。

はい。必ず活きてくると思います。
自分がやったことって絶対に忘れないんです。5年後や10年後に「あのアイデアをもう一回リメイクしてみよう」とか「別のメディアに持っていったら、クライアントの反応が違うんじゃないか」とか。
その瞬間は無駄に思えますが、長い人生で考えると、どこかで活きてきます。

なんだか、偉そうに色々お話しさせて頂きました。今後もっと海外でも仕事も増えるかもしれませんので今はまだ道半ば、勉強中です。でもエージェントとは良い関係を築くといいですよ。

――なるほど、こちらもすごく勉強になりました!本日はありがとうございました!

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インタビュー・テキスト:小川翔太/撮影:Taesoo Kang/企画・編集:澤田萌里(CREATIVE VILLAGE編集部)