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TOKYO MX 『5時に夢中!』プロデューサー 大川 貴史さん

マツコ・デラックスさんや岩井志麻子さんを初めとするコメンテーターの歯に衣着せぬ発言が、インターネットのニュースで取り上げられる等、話題に上ることも多い『5時に夢中!』(月曜~金曜 夕方5時から生放送)。同番組を手掛ける大川さんはTOKYO MXの新卒一期生として入社し、予算も人員も設備も足りない状況から、夕方5時の情報番組に新風を吹き込みました。「テレビのプロというより、素人がやっていると言われた方がしっくりきます」と言う大川さんならではの番組作りとは?!

 

■ “やりがいを見い出せなかった”営業から、チームプレーの制作へ

IMG_5911学生時代はずっと野球をやっていました。当時の運動部は先輩からの紹介で就職が決まるパターンが多かったのですが、なかなか決まらず(笑)どうしようかと思っていた時にTOKYO MXが新卒募集をしている情報を得て、応募しました。

1995年の開局前の採用タイミングで、94年4月入社なので、募集要項には「東京に新しい放送局ができる」とか「24時間のニュース放送局」というのがコンセプトとして書いてありましたね。

入社後は営業に配属されたのですが、営業と言っても、できたばかりの局で放送自体が始まる前で、その状況でお金を持ってくるというのは、新人の営業マンでは無理でした。デジタル化前は、特別な設定をしたり、アンテナを建てたりしないと見ることができないチャンネルでしたし、そういう中でやりがいを見い出せずにいた時期もありました。やることないからラッキーと、残業ゼロで5時ちょうどに帰るような日々でしたよ(笑)

そんな中、29歳の時に制作へ異動になりました。1人で取引先を廻る個人プレーの営業に比べると、もともと野球をやっていたこともあって、皆で1つの番組を作る制作の方が肌に合うと実感しましたね。自分の手掛けたものに対して面白かったとかつまらなかったとかリアクションがある…そういうことが自分にとって一番嬉しいんだなと思いました。

 

■ 『5時に夢中!』スタート時のモチベーションは怒り?!

制作に異動になってから、番組に対するものの考え方、発想など基礎を教えてくれた方はいましたが、TOKYO MXの小規模な設備と少ない予算で魅力的な番組を作っている経験者はいませんでした。面白く話題になる番組と言うよりは、放送枠を埋めることで手いっぱいな印象でしたね。
もともと番組制作がやりたかったわけでもない中、予算も少ない、人も少ない環境下で考えてやっているのに、番組制作をやったこともない人からいろいろと番組についてあれこれ言われることも多く、それが腹立たしくて、その怒りがモチベーションでした。それは、今でも同じですね。

IMG_5878そんな中でも夕方5時の生放送枠はいろいろなトライをしていきます。一番初めは、お金のない中でも、PVを流したり、ラジオに近い感覚で電話での楽曲などのリクエストを受け付ける『電リク! BEAT BOX! 』という番組がありまして、これが『5時に夢中!』のルーツになる番組でした。

その後もサテライトスタジオから生放送する『ゼベックオンライン』というティーン向け番組を放送していたのですが、その時間に東京のティーンはテレビを見ていないんですよね(笑)『夕焼けニャンニャン』みたいな発想で、アイドルに出演してもらいながら試行錯誤するものの、鳴かず飛ばずの状況でした。

そのうちに5時の生放送枠自体の終了が一度決まりました。その時に諸々のしがらみが切れたんです。それまでは、お金を入れてくれる制作会社の社長の愛人みたいな人が出演していたり(笑)したので、そのしがらみを断ち切って、初めて自分で選んだキャストでスタートすることができたのが『5時に夢中!』でした。『5時に夢中!』の立ち上げは放送開始の3週間前から。コンセプトから新しくして、ギリギリのところで準備しました。しかも『ゼベックオンライン』の生放送をやりながらです。出演交渉をして、岩井志麻子さんやマツコ・デラックスさんなどに出演してもらうことになりました。

マツコさんとの出会いは、本当に運とご縁です(笑)そもそも制作予算が少ないから、文化人の中で面白い人に出演してもらうというコンセプトでした。ここ1~2年くらいは、マツコさん初めコメンテーター陣の発言が頻繁にインターネットのニュースでも取り上げられるようになり、反響を感じる機会も多くなりました。マツコさんに関しては、こんなに引っ張りだこになった今では、普通にオファーしてもなかなか出てもらえないと思うので、ずっと前から一緒に番組をやっている僕らはラッキーだと思います。そして、今でも継続して出演してくれるマツコさんは、本当に義理堅い方だと感謝しています。

 

■ “なんちゃって”が一番面白い

『5時に夢中!』の内容は、予算の関係上、できることの選択肢が少ない中で何をするかを考えた結果です。昔はVTRでの情報の紹介も試みたのですが、例えばオリコンのランキングを紹介しようとしたらPVの素材を集めて編集するのに丸2日かかって、VTRにしたら1~2分です。それならインパクトのある面白い話をする方をスタジオに呼んできて、喋って頂いた方がテレビの生放送としても面白いし、効率が良いと気づきました。

(C)TOKYO MX

©TOKYO MX

そこで喋ってもらうにあたり、毎日変わるネタと言えばニュースなので、新聞のネタを使って話していくというスタイルが出来上がりました。結局、僕らは“なんちゃってテレビ”なんです。予算と人と設備が足りない中で始めた“なんちゃって”の感覚が一番面白くて、マツコさんがはまったのも、そこだと思います。全てが“ごっこ遊び”の延長なのだと思います。その日の新聞記事の切り抜きを貼り付けて、くるっと回転させて使うボードも「これ使ったらワイドショーっぽくない?」みたいな(笑)そういう悪ふざけ感は、番組の反響が大きくなった今でも満載ですね。
その延長線上で今みたいにインターネットを中心に反響が大きくなってきているので、テレビのプロと言われるより、悪ふざけの延長でやっていると言われた方がしっくりきます。

年末の企画「おママ対抗歌合戦」もそうで、苦し紛れな部分が多々あります(笑)スナックのママの歌合戦を大晦日にやったら面白いなと企画しました。作曲家の平尾昌晃さんに審査員をしてもらうんですが、平尾さんの年末のスケジュールを見せてもらったら、「レコード大賞」「紅白歌合戦」という錚々たるラインナップに「おママ対抗歌合戦」が入っていて、恐縮しました。ミスチルの桜井さんとか、メジャーな方が見ているという話も耳にしますし、スナックのママの人生経験がなかなか凄くて、制作側も驚くことだらけですが、もとは予算がなくて枠だけ2時間あるという中、試行錯誤して考えた企画です。おかげさまで、スナックも東京の一つの文化なので楽しみにしてくれる人も多いコンテンツになりました。7回も続いていますが、全て苦し紛れです(笑)

 

■ インターネットの時代に、どのように届け、話題を作るか

IMG_59063月31日に放送した『出張! 5時に夢中! in新宿スタジオアルタFinal~内藤聡子卒業SP~』は、新宿スタジオアルタ最後の公開生放送番組になりました。
もともと10年くらい前からアルタを使わないかと大学時代の先輩がアルタのご担当だったという事もあって、打診されていたのですが、その時は『笑っていいとも!』放送後に5時~また生放送というのは物理的に難しかったんです。そしたら『笑っていいとも!』の方が終了されて、ご縁があったから実現しました。そのことはニュースとしても取り上げられました。我々としては、黙ってやっていたら誰もMXなんて見てくれない、というぐらいの気持ちで話題を作っていかないといけないと考えています。そういう意味では、ネットの時代はラッキーだと思います。電波が届かなくてもネットになれば日本中、世界中で認知されるのだから、多少リスクがあっても話題性優先でやるべきだし、そうしないと認知度も上がらないし、ひいては視聴率に繋がらないと思ってやっています。
内藤聡子さんに代わり、アシスタントに就任した上田まりえさんにしても、日本テレビを辞めるタイミングでご縁があったということです。たまたま僕の場合は子供の頃から周囲の人間を大事にするようにしてきたので、それが活きたんです。学生時代の友人とか、夜遊び仲間からの情報とか繋がりを上手く活かせるようになりました。若いころから夜の街をふらふらして人間関係をつくってきましたが、そういうコネクションまでも活かせるとは思っていなかったですね。

 

■ “分からない人”を巻き込まないと商売にはならない

IMG_5940制作の世界は、大工さんやコックさんと同じで、職人さんの世界だと思います。いつ家に帰れるか分からないような厳しさはありますが、手に職がつけばどこに行っても食べていけるようになります。特にTOKYO MXの場合は、お茶くみから編集、ロケまで全てを経験するので、どこに行っても通用する人材になると思いますよ。

僕はテレビ番組制作の仕事をするにあたって、“一番のど素人であること”を意識しています。汚いより綺麗な映像の方が良いですが、僕は映像について細かく勉強もしたこともないし、特に情報のアンテナが高いわけでもない…でも、視聴者も同じだと思うのです。そういう人間の心が動くかが大事ですよね。もっと感度の高いクリエイターの人にはいろいろなこだわりがあるとは思いますが、テレビ番組の制作にあたっては、分かる人には分かるじゃダメで、分からない人を巻き込まないと商売にはならないですよね。若い時は、自分のこだわりで頭がいっぱいになりがちですが、その先にある、そうでない人たちを振り向かせて初めて商売だから、そこまで頭に入れて勉強した方が良いと思います。やりたいことをやるというのは趣味で、それは家でやれば良いこと。その道でプロとしてやっていくには大衆を相手にしないといけなくて、そこを頭に入れておかないとただの自己満足でしかないということだと思います。子供からおじいちゃんおばあちゃんにまで分かりやすく、面白いものを提供することが自分の仕事だと思って、毎日生放送をやっています。


■番組情報

TOKYO MX 『5時に夢中!』
月曜~金曜 夕方5時から生放送
http://s.mxtv.jp/goji/

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profile

大川 貴史(おおかわ・たかし)

1972年東京都出身。立教大学卒業。
1995年東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)入社。
営業局を経て、2001年報道制作局(現・編成局制作部)へ。
編成局局次長兼制作第二部長(現職)。
2005年より「5時に夢中!」のプロデューサーを務める。
現在、「5時に夢中!」「バラいろダンディ」「淳と隆の週刊リテラシー」「週末めとろポリシャン♪」のプロデューサー。
立教大学野球部出身。

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