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映画『星ガ丘ワンダーランド』監督 柳沢 翔さん

2014年のエイプリルフールに公開された、Googleとポケモンのコラボフィルム『Google maps Pokemon challenge』を監督。1日で1500万再生を記録し、その年に世界でもっともシェアされたエイプリルフール動画として注目されました。資生堂のウェブムービー『High School Girl ? メーク女子高生の秘密』も2015年10月の公開からわずか1ヶ月で800万再生を記録するなど、監督した作品が次々と話題を呼んでいる柳沢 翔さん。CMを中心に映像監督として活動してきた柳沢さんにとって、初の映画監督作品となるのが『星ガ丘ワンダーランド』です。その公開に際し、本作の撮影のことなど、お話を伺いました。

 

■ 日本初となるマイケル・ジャクソン公式MVの制作手法は、大学時代から手掛けていたコマ撮り

IMG_4385多摩美術大学の油絵科に在籍していた時に、友達と皆で個展を開こうとして銀座のギャラリーを探したらすごく高くて、クラブで展示することにしました。自分たちでイベントを開催して絵を展示したんです。そこでイベントを盛り上げるために、即興で絵を描くライブペイントをやって、その模様を撮影するようになりました。そのうち、2時間ほどのライブペインティングの映像を2分くらいに圧縮したら面白いものができて。そのメンバーでいろいろ作っていたのが映像に興味を持ったきっかけでしたね。その時のメンバーは後に、YouTube JAPANがスタートする時にオープニング映像を作った輪派絵師団というチームになっていきました。

当時のメンバーで映像を作るのがとても面白くて、ライブペインティングを圧縮した映像を作るのと同じ考え方で、少しずつ被写体を動かして撮っていくコマ撮りにも没頭していきました。

2013年にマイケル・ジャクソンの公式サイトにも掲載された『BAD25 T-flip animation』も、まさにコマ撮りでした。

1000人のマイケル・ファンを集めて、1人1人に少しずつ違うポーズを取ってもらって撮影したのですが、地下駐車場での撮影はかなりハードでした。と言うのも、地下駐車場は人が長時間いることを想定して設計されていないので、空気が回らなくて、1時間くらいで気持ち悪くなってしまうんです。耳とか鼻を触ると、排気ガスで真っ黒になるような環境に、徹夜で3日間いましたからね(笑)

そこに1000人のファンを代わる代わる迎えて少しずつ撮影するのですが、機械で風を送っても効かない広さで、人が倒れるんじゃないかという熱さでした。そんな中でもファンの方たちは情熱が凄くて、誰一人途中で帰らないんです(笑)コマ撮りで繋げて「Bad」の曲に合わせたダンスの動きにすることで、マイケル・ジャクソンが本当に多くの人に愛されていたということが伝わる作品になりました。

 

■ 公開からわずか1ヶ月で800万再生!資生堂のウェブムービー制作の舞台裏

IMG_43712015 年に公開した資生堂のウェブムービー 『High School Girl ? メーク女子高生の秘密』は「メークの楽しさ」を若い方に伝えるために作られたものでした。僕たちの世代からすると意外なことに、今の高校生にとっては国内の化粧品ブランドよりも海外のコスメ、韓国のコスメがシェアを広げているとのことでした。
そこで、資生堂側で女子高生を集めてヒアリングをしたら「女装男子が流行っている」という声が挙がったそうです。実際に女装の写真集や女装姿で接客するカフェもあって、本当に流行っているんですよね。
そして女装男子でムービーを作って欲しいとオーダーを受けた時に、そのままでは面白くないから「1クラス全部が、女子だと思ったら男子だったというのはどうですか?
例えば、女子高だと思って入ったら男子校だった!みたいな」と提案したことが、制作の始まりでした。
1カットで見せたら面白いんじゃないかと考えて…さらにメイクの過程を逆再生にしたら、あまり見ない映像になるんじゃないかなと。そこで、1人の男の子をメークで女の子に変身させるのに、どれくらいの時間がかかるのか確認したら大体2時間とのことでした。撮影に参加する男の子は6人いたので、それだけで12時間ですよね。その間ずっと止まっていてもらうことはできないので、メークをどうにか1時間に短縮してもらって1カットで撮影することにしました。

実際の撮影は壮絶のひとことで…特に出演してくれた学生の子達の頑張りには頭が上がりません。よく考えたら慣れない撮影現場で照明をたかれて、女の子に変身させられて、カメラの前で6時間動くなって、ひどいことしちゃったなぁと(笑)。
結果的には反響が大きく、YouTubeで2015年10月に公開してから約1ヶ月で800万回を超える再生回数となり、良いムービーに仕上げることができました。
2015年11月にはドイツ・ベルリンで開催された広告専門のジャーナリストが選ぶ広告賞「エピカアワード」でグランプリも受賞しています。

 

■ 絵コンテで脚本を作っていった『星ガ丘ワンダーランド』

これまで様々なCMを手掛けてきて、制作では自分の個性を出せますが、基本的に受注仕事なんですよね。自分の中でゼロ発信の仕事をしてみたい!という気持ちが大きくなっていって、いろいろなところに企画を提案していく中で、今回の映画『星ガ丘ワンダーランド』はスタートしました。

(C)2015「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

(C)2015「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

脚本を作る作業は、本当に苦しみました。
セリフの行間を状況描写で書いていくのですが、全然上手くいかなくて。次の日に読み返しても、何のシーンを書こうとしていたのか思い出せないほどで(笑)
途中から、いつものやり方で絵コンテで描いていくスタイルに変更しました。
進みが早いし、新しいひらめきを付加しやすかったんです。絵コンテで描いたアイデアを脚本担当の前田浩子さんに渡して、彼女がそれを元にストーリーを考えて、また僕が受け取って絵を描いて…というやり取りで作っていきました。脚本に関しては、前田さんが舵を取ってくれましたね。

実際の撮影では、例えば陽の光をどう取り入れるかなどについてはカメラマンとコンテを共有して進めていきました。こういう画角で、こういう速度で、カメラをこう動かしたいということは分かっていたので、それに対してカメラマンがフレアをどう入れるかとか、暗いところから、だんだん光が入って来るというのも設計してくれて、事前に予測ができたのでやりやすかったです。カメラマンとの繋がりが強かったので、スムーズに進めることができました。

(C)2015「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

(C)2015「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

逆に撮影の中で予測できなかったことも沢山ありました。主演の中村倫也くん、菅田将暉くんの演技は、良い意味で予想と違って面白かったですね。彼らの方からアイディアを出してくれて、汲んでくれているから、自由に演技をしてもらったら、殴りかかる場面などは菅田くんと中村くんの力あってこそのシーンになりました。そういう時はカメラワークも変わっていって。役者さんのお芝居に対して変わるというのはCMの世界ではあまりないので、とても新鮮でしたね。
CMは1カット1~2秒で、いかに強烈な印象を残すか、という作り方です。最大でも30カットほどなので、ミリ単位の計算と調整をするのは、それほど難しいことではありません。でも、それを映画にはできないし。逆に映画の感覚でCMを作ると緩い、どっちつかずな画になってしまうので、そこは切り替えが難しかったですが、CMと映画、両方に携わることができたのは貴重な経験になりました。

 

■ “監督タイプ”と“作家タイプ”を見極める

IMG_4377ものを作る人には、監督タイプと作家タイプがいるなぁと日頃から思っていて。
監督タイプは、チームとして動いて、自分が考えていることをスタッフに託して、スタッフから出てくるアイディアを吸い上げてより良いものにする人です。その利点は自分がイメージしているモノより、さらに良いものができる可能性が高いことだと思います。

作家タイプは、自分の頭の中を完全に再現してくれれば良いと考えている人で、要するに、全部自分でやらないと気がすまない。

監督タイプと作家タイプ、両方とも突き詰めれば良いものができると思いますが、作家タイプの人が監督タイプの作り方をしたり、監督タイプの人が作家タイプの作り方をしても上手くいかないと思うんです。
僕は作家タイプということが最近分かってきました。いろいろな人と話しながら、アイディアを提案している体裁ですが、心の中では「俺が考えていることの方が面白い」と思っているんです(笑)他の人の意見を理解しているようでいて、結局は聞き入れていない(笑)自分で手を動かしている方が思い付く人も、人に託して思い付く人もいるので、これから制作に携わりたいという方は、それを見極めることが大切だと思います。
適したタイプと逆の作り方をしても、2~3年は続けていけますが、暫くするとアイディアが出てこなくなります。僕が所属しているTHE DIRECTORS GUILDには、チームとしてブレストを重ねて、素敵な作品を創る監督タイプの方が多くて、本当はそれが正しいんです(笑)。
でも最近はこういうタイプがいてもありかな?と思っています。


■作品情報

『星ガ丘ワンダーランド』
3月5日(土)より、全国ロードショー

(C)2015「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

(C)2015「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

出演:中村倫也 新井浩文 佐々木希
菅田将暉 杏 市原隼人 木村佳乃 松重豊
監督: 柳沢翔 脚本:前田こうこ 柳沢翔
製作:「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会
企画・制作:アルケミー・プロダクションズ
制作プロダクション:スタジオブルー

配給:ファントム・フィルム

■オフィシャルサイト

http://hoshigaoka-movie.com/

profile

柳沢 翔(やなぎさわ・しょう)

1982年 神奈川県鎌倉生まれ/2005年 多摩美術大学 美術学部 絵画学科 油絵科卒業/2011 THE DIRECTORS GUILDに所属/【バイオグラフィー】油彩画で培われたアートセンスとアニメの技法を使ったファンタジックな映像表現で、CMを中心に活動する映像監督。2004年、油彩画家として現代芸術家村上隆主催のアートコンペ(GEISAI3)にて銀賞受賞。受賞作家としてルイヴィトン、フェンディ等のレセプションパーティーにて作品展示。グラフィティアートに日本画を織り交ぜた作風で活動後、CMディレクターに転身。2009年アジア太平洋パシフィック広告祭フィルム部門にて24歳でグランプリを受賞。2013年にマイケル・ジャクソンのアルバム「BAD25周年を記念して日本のファン1000人と「REVIVING MJ」を制作。MJの公式ホームページにて特集される。 2014Googleとポケモンのコラボフィルム「Google maps Pokemon challenge」を監督。エイプリルフールに公開され、一日で1500万再生を記録。その年に世界でもっともシェアされたエイプリルフール動画として記録される。2015年 ポケモン、任天堂、Niantic Labが共同で開発したゲーム「POKEMON GO」の海外用コマーシャルがyoutubeで全世界合計2700万再生、資生堂のウェブムービー 「High School Girl ? メーク女子高生の秘密」が公開一ヶ月で800万再生と、いづれも監督した作品が話題を呼んでいる。

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