ゲーム業界発展のため、業界に関わるみなさんに最適な学びや人との出会いの機会を生むことを目的にした交流会「Game Meets」。その最新回に、現在開発中の『幻想水滸伝 STAR LEAP』なども手掛けるゲーム会社MYTHRILの代表取締役・孟山嘉起氏と、デザイン会社KUUの代表取締役で『NieR Re[in]carnation』の開発などで知られる高木正文氏が登壇。

今回は、そんなお二人とイベントの主催を務めるクリーク・アンド・リバー社のゲーム事業部で活躍する木下を加え、立場の異なる3人それぞれの視点からゲーム業界の今や、主体性を持ってゲームづくりに取り組むことの大切さを語ってもらった。

対談者


孟山嘉起氏

ミスリル株式会社 代表取締役CEO
元々はゲームとは別業種に就いていたが、どうしてもゲームを作りたいという想いを捨てられず、2012年(27歳当時)にゲーム会社に転職。 プランナーとしてキャリアを始め、その後ゲームデザイナー、ディレクターなどを担当。 そして、2016年にミスリル株式会社を創業し独立。 現在、会社は従業員100名程まで成長。ディレクターとして幻想水滸伝 STAR LEAPの開発に従事。


高木正文氏

株式会社KUU  代表取締役
京都芸術大学 客員教授
新卒で株式会社スクウェア・エニックスに入社、フリーランスなどを経て株式会社サイバーエージェントへ。 2023年に株式会社KUU創業。コンシューマー・スマホゲームでのアートディクレクション・各種コンセプトアート制作をしつつ、京都芸術大学客員教授やセミナー登壇など講師としても活動中。

木下陽童
クリーク・アンド・リバー社 ディビジョンマネージャー
株式会社URS Games 取締役
2010年、株式会社クリーク・アンド・リバー社に入社。以降15年間にわたり、遊技機業界およびゲーム業界を担当し、同社クリエイティブスタジオの立ち上げと拡大に従事。現在は、インディーズゲーム『IZON.』のプロデュースを手がけるほか、ゲーム開発の受託営業、業界向け情報発信とコミュニティ運営を行う「Game meets」の責任者を務める。2025年4月には、株式会社クリーク・アンド・リバー社と株式会社バンダイナムコエンターテインメントが共同で設立した株式会社URS Gamesの取締役に就任。

「圧倒的にディレクターが足りない」。日本のゲーム業界の可能性と課題について

――まずはゲーム業界の今についてうかがいます。みなさんは現在のゲーム業界にどんな可能性を感じていらっしゃいますか?

高木:『Clair Obscur: Expedition 33』(フランスのゲーム会社Sandfall Interactiveが開発したRPG作品)のヒットが印象的でした。クレジットを確認すると外部パートナーも多数参加していたようですが、あのゲームは新しいチームかつ少人数で、全くの新規タイトルとして制作を開始した作品だそうです。それが結果として多くのユーザーに受け入れられることになりました。とても熱い話だなとワクワクしました。

木下:J-RPGに影響を受けた作品でもありますよね。

高木:そうですね。たとえば、昨今みられる多額の資金を投入したわけではなさそうな作品があれだけのヒット作になったことは、個人的には非常に嬉しく感じました。そういった意味でも、インディー作品への熱が非常に高まっているのは実感しています。最近は大型タイトルが開発中止になる事例も見られますが、これは逆に言えば、ミドル/ショート規模のチームが生き残っていける環境とも言えるかもしれず、であれば主体性を持ったクリエイターが活躍しやすい時代になっているのかもしれませんね。

孟山:おっしゃる通り、私も「主体性を持って取り組むこと」が、ますます重要な時代になってきたと感じています。これまで以上に、本当に面白いゲームを作らなければ、ユーザーの皆さんも評価してくれない状況になってきていますから。あくまで私の予測も含まれていますが、「面白いものをユーザーに届けよう」という企画が、大手ゲーム会社においても、それ以外の規模の会社においても、より通りやすくなってきているように感じています。

――クリエイターの熱量がゲームに反映されやすい状況になってきている、と。

木下:個人でもSteamなどのプラットフォームを通じてゲームを配信しやすくなった点は、非常にポジティブな側面だと感じています。そういった新たなチャンスがより多く生まれているように感じます。たとえば『8番出口』(KOTAKE CREATEが開発した日本のインディーゲーム)などは、ゲームがヒットした結果、映画化まで実現しました。

高木:あのゲームは作り方も面白いですよね。

――逆に、皆さんが感じている業界の課題は何でしょうか?

木下:スマートフォンゲームが普及した10数年ほど前と比べると、新規のゲームが売れづらくなっているという状況はあると感じています。

孟山:「これだったらヒットするだろう」というものが非常に読みづらくなっていますね。「こういう顧客層がいて、こういう需要があり、このIPなら勝てる」といった従来なら鉄板だった勝ち筋が見出しづらくなっていると言えます。むしろ、よりセンスのある個人に依存するゲームや、その人だからこそ見つけられた一筋のアイデアの光といったものに、成功の道があるような時代になってきているのではないでしょうか。もちろん、超優秀なゲームクリエイターであればそれでもヒット作を出せるのだと思いますが、多くの人にとってはギャンブルのように見える部分はあるのかもしれません。

高木:また、開発費が尋常ではないほど膨らんでいる、という問題もありますね。

孟山:そうですね。ゲーム開発の難易度が上がっていることもあり、多くのゲーム制作現場において迷走期間が長くなったりしていると聞きます。その過程で無駄になった予算が多く、結果的に開発費が膨らんでしまっているケースもあるはずです。

――なるほど。

孟山:そうならないためには、面白いものを作るチャレンジをしながらも、極力無駄なく真っ直ぐ作り上げられるディレクターやアートディレクターが必要です。ただ、市場にはそういった人材が圧倒的に不足しているのです。技術的にゲームを作れる、知識や技術、経験によって何かを生み出せるという人は数多くいますが、作品の全体像を描き、それに向けてプロジェクトを推進できるディレクターが、日本で制作されているゲームの本数に比べてあまりにも少ない。その結果、「誰が何のためにこのゲームを作っているのか」が曖昧なまま進行し、予算のボリュームに対して小さなゲームに終わってしまうのです。そういう意味でも、主体性を持ったディレクターやアートディレクターが育つ土壌を作ることが、日本のゲームが他国のゲームと戦っていく上で非常に重要なことだと考えています。たとえば今のmiHoYoさん(『原神』などを手掛ける中国のゲーム会社)のような予算をかけることはなかなか困難です。だからこそ、予算規模ではなく、アイデアとリーダーシップによって、戦っていかなければならないと強く思います。

高木:ソーシャルゲーム業界の場合、ここ10数年ほどで急速に成長した業界でもあり、ITベンチャーの側面も持ち合わせていたりして、ある意味ビジネス色が非常に強いゲーム業界とも言えますよね。実際、私もITベンチャー2社に在籍していましたが、それまでに経験してきたゲーム制作では出会わなかった内容に出くわすことが多く驚きました。そのような中、『原神』などが出てきたあたりから、ゲームとしてのクオリティがさらに向上し、ユーザーの目も肥え、「面白くなければ市場で戦えない」という状況が加速。それに伴い多くのゲーム会社が「沢山のキャラクターを出そう」「3Dグラフィックをものすごく綺麗にしよう」といった「クオリティアップ・バジェットアップ」をしましたね、これはビジネス色の強いゲーム開発ならではの考え方だったように思います。面白いゲーム体験を作る事だけでなく、数と質が上がることにより開発規模がどんどん肥大化しました。そのような中で、いちデザイナーとしてジョインしていると、チームに飲まれやすくなってしまう。せっかくクリエイティブのスキルがあっても活きてこない状態に。チームが大きいと特に主体性がないと力を発揮しづらいと言えそうです。そうした人材が足りないという課題は確かにあるように感じます。

木下:受け身ではない、主体的に動けるクリエイターが必要だということですね。

最初は受け身でもいい。主体的なクリエイターになることの大切さ

――受け身になっているクリエイターの方々にはどんな共通点があるのでしょうか?

木下:私の場合、日々さまざまな立場のクリエイターの方々と接する機会がありますが、細部にわたって明確に決まっていないと動き出せない方が増えているように感じています。たとえば開発案件の場合、「かっこいいドラゴンを描いてほしい」というオーダーがあったとして、その「具体的にどのようなドラゴンなのか」という問いに対する答えが、発注元にはない場合もあります。その際、主体的に動ける方は「では、このようなアイデアはいかがでしょうか?」と自ら提案してくださいますが、そういった方が数年前よりも少なくなっているように感じる機会が増えました。

――クリエイター間の「掛け算」にして返してくれる方が少ない、と。

木下:その方々の深層心理まで理解できているわけではありませんが、「責任を取りたくない」「失敗をしたくない」と考える方が多いのかもしれない、と感じることがあります。

孟山:確かに、それは私も感じる瞬間がありますね。主体的な人と受動的な人の最も分かりやすい違いは、抽象度の高いオーダーをしたときの反応だと考えています。丸投げされた方が嬉しいと感じる人は、その人のクリエイティビティが発揮しやすい環境を好意的に捉え、「よし、やってやろう!」という気持ちになるのだと思いますが、そうではない人は、手っ取り早く進めたいがゆえに、細かいところまで質問してしまう傾向にあります。

高木:裁量を任されることを面白いと感じるか、苦痛だと感じるか、その違いですね。

孟山:はい。もちろん、主体性を持てるかどうかには幼少期の経験や育った環境など、考慮すべき点は多岐にわたると思いますが、そういった部分は一旦置いて、多くの人に当てはまることをお話しするならば、シンプルに「主体性を発揮するための能力が身に着いていない」というのも一つの理由かもしれません。能力の高い人ほど抽象度の高い状態を良しとしますし、逆もまた然り、という話です。抽象度の高い物事に主体的に取り組むにはとても高い能力を求められます。もちろんゲームによって開発の難度に差があるとは思いますが、昨今求められるような面白いゲームを作るのは本当に難易度が高いです。もはや、これはゲーム業界の構造的な課題でもあります。たとえば将棋のプロ棋士やプロ野球選手などは、超人とも言える一部の限られた能力を持った方しかその職に就くことはできません。しかし、ゲームクリエイターの場合は、それが一般的な職業になってきたからこそ、特別な能力を持っていなくとも、専門学校などを卒業すれば制作の現場で働くこと自体は可能になりました。でも、現実問題としてはユーザーの期待に応えるためには、一歩先をいくための思考力や想像力、さらにいえば突き詰めていく上での忍耐力も求められてしまう、という状況があるのです。ゲーム制作の現場で割り振られた「なんとかこなせそうなタスク」をフォローされながらやるだけで精一杯という方が多いのではないかと思います。

木下:やるべきことはプロのアスリートと同じようなものなのに、仕事に就くためのハードルは低くなっている、という状況ですね。

孟山:そのような状況でも「なにくそ!」というマインドを持って取り組める方は、次第に能力をつけ、戦っていけるようになると思いますが、ほとんどの人にとってそれは難しいことでしょう。とはいえ、能力をつけないと主体性は出てこないものです。主体性が先か、能力が先かという話で言えば、能力が先だと思います。なので、まずは受動的でも構わないので、上司の期待に応えるということを全力でやっていけば、そのうち能力がつき、主体性も生まれてくるのではないかと思います。弊社でも実際、最初は主体性が弱かった人が奮闘する中で能力を身に着け、
他職掌と折衝しながら推進できるようになっていって活躍したりしています。

木下:なるほど。最初は受動的でも、続けていけば主体性が生まれてくる。今回の対談の答えのような気がしてきましたね(笑)。

孟山:そのためにも、まずは成果物においてその人の100点を出すことが重要です。ある若手の人が80点のつもりで「これならいいだろう」として作った成果物があったとします。ただ、それは上司やリーダーから見ると60点程度のものかもしれません。さらに、ゲームを待ってくれているユーザーの目線はそれよりさらに厳しいはずですから、40点にしか映らずに「微妙だな」という感想を抱かれてしまう。だからこそ、ユーザーの皆さんにとって価値あるものを提供するためには、まずは自分の100点を出す意識が必要だと私は考えます。100点というのは「自分としてはこれ以上ない」と言い換えられます。そこまで徹底していけば、能力は必ず上がるはずです。結果、自信も持てるようになりますし、仕事も楽しくなるのではないでしょうか。

高木:いわゆるゲーム会社の社員にとって、非常に参考になるお話ですね。一方で、フリーランスのイラストレーターなどでキャリアを積む場合も同様ですよね。フリーランスの場合はA社、B社、C社など複数の会社から依頼をいただいた際、それぞれ違う相手に対する成果物を作るし、それぞれで期待を超える必要があります。必ずしも次があるという保証があるわけではありませんから自ら動くことも必要ですし、やはり主体性を持つということは非常に重要なことですね。

自分が最初のひとりになって、「夢」や「やりたいこと」を伝えよう

――孟山さんと高木さんも、独立の道を選択するなど、主体的に動いてきた方ですね。

高木:私はさまざまな転職を経験し、フリーランスになった時期もありますが、最も最近ではKUUという自分の会社を立ち上げました。当時私は39歳で、勤めていた会社では執行役員に引き上げていただいたこともあり、大変感謝しています。しかし、40歳を迎えるにあたって「誰かのためではなく、自分たちのために働ける環境を作りたい」と考えたのです。その結果、自分で会社を作るという選択に至った、

孟山:私は高木さんとはまた少し違って、もっと幼い理由と言いますか……(笑)。「自分が考えた最高のゲームを作り、ユーザーに楽しんで欲しい」という思いを抱き続けた結果、今の道を選択しました。ゲームプランナーになる人は、最初は誰もがそれを目指してこの仕事を始めた部分があると思います。でも、それは本当に険しい道です。私の場合、それをなんとか実現するための選択肢として起業を選びました。当たり前ですが、ディレクターだからと言って、なんでも自分で決められるわけではありません。でも、すべて自分でお金を出して作れば話は別。その最もミニマムかつ王道の方法は1人でゲーム制作をすることでしょう。ただ、当時はなるべく大きな規模で作りたいと思っていましたので、その選択肢はなかった。そうなるとお金も多く必要だし、一緒にゲームを作る仲間も必要です。採用方針や組織形態も考えなければ、最高のゲームを作ってくれる仲間は集まらない。結果、「会社を作る」という結論に達しました。今思うと、当時は甘く考えていた部分もあり、ゲーム開発のバジェットがここまで一気に何倍にも膨れ上がるとは思っていませんでしたが、当初の計画より少し遅れながらもその夢に近づいている、という感覚はあります。

――お2人それぞれに、夢や大切にしたいことを実現するために決断したのですね。

高木:人生において重要な選択が何度か訪れますが、自分でそれを決断できるって大事にしたいし、楽しいと感じています。自由とはそういうことなんじゃないですかね。私自身、今とても充実していますし、日々楽しさを感じているところです。肌ツヤもよくなりました(笑)。

孟山:私はもう、圧倒的に肌ツヤが悪くなりました(笑)。というのも、私の場合、働いてくれる方々をマネージメントする難しさがありますし、さまざまな人々の期待を背負って、会社をしっかりと成長させなければならないと考えているためです。そこに対しては楽観的になれませんので、強い使命感を持って、自分ができる限界までやらなければならないと思っています。一方で、サラリーマン時代と比べても、非常に「恩」を感じる人が増えたな、とも感じています。まずは、私を信頼して力を貸してくれる心強い仲間。起業前から一緒にいる人や起業後にジョインしてくれた人も含めてたくさん近くにいます。その人たちの支えがあって会社を運営し、本気でゲームを作ることができています。心の支えでもあります。それ以外にも、信頼して仕事を依頼していただいている方々や会社、そしてゲーム待っていただいているユーザーの期待にも応えたい。日々「今日も全力で頑張っていこう!」という気持ちでいます。

――孟山さんが経営するゲーム会社・MYTHRILは100人規模の会社となっています。クリエイターそれぞれの主体性を反映させるために工夫されていることはありますか?

孟山:もちろん、作品として一本筋を通す必要はありますので、ただ個性を出してもらうだけではゲームは成立しません。ですが、その中でも、最初にお話ししたように、抽象度の高いタスクの振り方を意識している部分はあります。その人自身の個性を加えやすいように、重要なポイントだけを伝え、後は自主性に任せる、といった形ですね。もちろん、最終的なチェックはしっかりと行いますが。

高木:ちょうど私がMYTHRILさんからウェブサイト制作のお仕事をいただいたときも、いい意味で依頼の抽象度の高さを感じました。もちろん、皆さんと「こういうものがいい」「こういうふうにしてほしい」と様々にお話しながら進めていったのですが、あのサイトで表現されている世界観自体は、こちらから提案させていただき、かなり自由度高くやらせていただきました。

――MYTHRILという文字にカーソルを当てると画面が開いてアートワークが出てきたりする、とても作り込まれたサイトになっていますね。

高木:お仕事を受ける際には、弊社の役員3人でブレインストーミングを行うのですが、その中で出てきたアイデアでした。(オフィス移転に際してのリニューアルだったこともあり)「開く」というキーワードが、「未来を切り開く」ことにも繋がり、良いのではないかと思ったのです。

孟山:提案内容が非常に明確で、私自身が言葉にはしていなかったような想いまで汲み取っていただきまして。まさに主体性とはこういうことだと感じました。

――高木さんの場合は、クリエイターのみなさんとの協力作業、掛け算を大切にされているような印象も受けますね。

高木:そうですね。もしかしたら世間一般のクリエイターのイメージは、集中して巣にこもるようなものを想像されていたりするかもしれないですが、私たちが仲良くさせていただいている方々は、アイデアを出し合ったり、議論をしたりするのが好きな人が多くて、活発に議論してるんですよね。多様な人たちでわいわいとアイデアを出し合うような環境にあるのかもしれません。

――現在の道を選択してよかったなと思う瞬間はありますか?

高木:それは多々ありますね。私が立ち上げたKUUは食事の「食う」から取った社名ですが、そもそも、クリエイティブでものづくりをしてご飯が食べられるということ自体が、非常に素晴らしいことだと感じています。今それができているので毎日感謝しています。もっとすごくなるぞ!という野心を語り合う仲間もいますし、最高ですよ。

孟山:今、弊社で開発中のタイトルを楽しみにしていただいている方が世界におり、YouTubeやSNSなどで多くの期待のコメントをいただいています。そういったコメントを読んでいる時はまさに良かったと思える瞬間ですね。

――Gamemeetsの開催に向けて、最後に試行錯誤を続けているクリエイターのみなさんに伝えたいことがあれば教えてください。

木下:孟山さんがおっしゃっていた「誰もが最初から主体的である必要はない」というお話は、非常に素晴らしい内容だと感じました。もし仮に、同じようなことで悩んでいる方がいらっしゃるならば、「あなたが今置かれている状況は、何も不思議なことではありませんよ」と伝えたいです。そうした方々も、明日から期待値を超えられるように一つずつ努力していけば、そこから主体性が生まれ、キャリアが開けていくのではないでしょうか。流れのまま生きることをやめれば、きっと良いことがあるのではないかと思います。

孟山:自分のやりたいことを言葉に出して言ってほしいと考えています。「有言実行」や「不言実行」など、様々な言葉がありますが、私は個人的に「有言実行」が最も素晴らしいと思っています。日本では「不言実行」の方が格好良いと言われることもありますが、実際に言葉にするのは大変なことですし、言うことで周囲の目も変わります。その上で何かを成し遂げることこそ、格好良いと感じるのです。あとは、以前、サイバーコネクトツーの松山洋さんのnoteの記事で、「このゲームにかかわれて嬉しいです」という言葉に対して、「かかわるって弱くないですか?」と述べられていたことがありました。もっと「携わる」とか「手掛ける」という言い方の方が良いのではないか、という内容が書かれていたのです。このように、自分の人生に対してどのような動詞を当てるかということも、非常に大切な気がします。

高木:私のXのプロフィールを見てみてください。「ゲーム作りに携わるのが好きです」と書いてありますね……!

孟山&木下:(笑)。

孟山:モチベーションは、何かを始めてからついてくるものだと思いますので、自分のやりたいことを、ぜひ言葉に出して言ってほしいですね。

高木:今のお話、とてもよく分かります。私も言霊を大事にしています。自分の夢ややりたいことを言葉にして伝えること、馬鹿にできないな、と思うのです。それぞれがやりたいことを持ち、互いにプラスになることを言い合っていけば、ゲーム業界もより良くなっていくのではないでしょうか。誰かが言ったことに対して反応するのではなく、自分が最初の発言者となり、自分のやりたいことを言ってくれたら、非常に嬉しく思います。

ゲーム業界は今、大きな転換期を迎えている。しかし、今回お話いただいたように、クリエイター一人ひとりが自身のクリエイティビティを信じ、能動的に動くことで、さらなる発展と進化を遂げられる可能性に満ちているはず。

8/27(水)に開催するGamemeets nightでは、これからの時代に勝ち続けるゲームクリエイター像について、3人がディスカッションを開催!お楽しみに。

インタビュー・テキスト:杉山仁 企画・編集:向井美帆