デジタル時代において、UIデザイナーは商品やサービスのユーザー体験を形作る重要な存在です。
しかし、その仕事内容は業界によって異なり、Web・アプリUIデザイナーとゲームUIデザイナーではその役割やスキルに違いがあります。

株式会社クリーク・アンド・リバー社(C&R社)のプロフェッショナルエデュケーションセンター(PEC)とゲーム制作スタジオ2DCG PlaNetStudio(以下プラネットスタジオ)が共同で主催するこのセミナーでは、UIデザイナーとして活躍するプロフェッショナルたちによるトークセッションで、Web・アプリUIデザイナーとゲームUIデザイナーの実態に迫ります。

この記事で得られる学び

  • Web・アプリUIデザイナーとゲームUIデザイナーの違いを知ることができる
  • 業界ごとのUIデザイナーの仕事内容を把握することができる
  • 自分に合ったキャリアパスのヒントを知れる

1.Web・アプリUIデザイナーvsゲームUIデザイナー ~実は違う!? 業界ごとの業務内容やキャリアとは〜


Web・アプリUIデザイナーとゲームUIデザイナー。同じUIデザインでも、その仕事内容やキャリアパスは一体どれほど違うのでしょうか?
今回、C&R社と2DCG PlaNetStudioが贈るオンラインセミナーでは、Web・アプリUIデザインとゲームUIデザインそれぞれに携わる登壇者たちが、自身の経験や知識を通じて業界ごとの特徴やキャリアパスについて語ります。業界のフロントランナーたちが「実は違う!?」と思う部分を解き明かしながら、どんな人がどちらのUIが合っているのかのヒントを教えてくださいました。

2.登壇者紹介


本末 英樹(もとすえ ひでき) 氏
株式会社フライヤー デジタルプロダクトデザイナー / 大阪成蹊大学芸術学部卒 / 人間中心設計スペシャリスト / グロービス経営大学院在学中

デジタルプロダクトデザイナーとして、Webサイトやモバイルアプリを含むサービス全体のUX設計とUIデザインを行う。他にもAdobe MAXやデジタルハリウッド、Schooなどで講師も務め、著書に『現場のプロがわかりやすく教えるUI/UXデザイナー養成講座』がある。
本末氏

筒井 大尊(つつい ひろたか)氏
株式会社フライヤー リードプロダクトデザイナー / 立教大学現代心理学部2016年卒 / 神奈川県鎌倉市在住

デジタルプロダクトデザイナーとして、Webサイトやモバイルアプリを含むサービス全体のUX設計とUIデザインを行う。社外ではFigma Community Adcocateとして、デザイン/開発サービスである「Figma」のローカルコミュニティリーダー(湘南地区)を務める。

筒井氏

小林 圭介(こばやし けいすけ)氏
株式会社クリーク・アンド・リバー社

株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント、アークシステムワークス株式会社にて主にパブリシティ向けのデザイン制作を経験。その後2021年C&R社入社。
現在はノンゲーム、プロモーション周りの業務領域の拡大に向けた営業活動と社内のチームビルディング等のマネジメントに携わる。

小林氏

3. UIデザイナーについて

UIデザイナーってどんな仕事?

本末 まず初めに、UIデザイナーの職種についてお話しさせていただければと思います。UIというのはユーザー・インターフェース(User Interface)の略でソフトウェアやマーケティングの領域を扱います。例えば、LPやWebサイト、ゲームや家電など、最近はメタバースやVRなど色々なところでUIデザイナーが活躍できる機会がどんどん増えています。

UIデザイナーの活躍領域

4. 本末氏、筒井氏によるWeb・アプリUIデザイナーのお仕事事情

Web・アプリUIデザイナーの実際の流れ

本末 それでは、Web・アプリUIデザイナーはどのような人間関係の中で、どのような役割を担うのでしょうか。
例えば50人くらいの会社の場合、色々な部署の方と直接やりとりを行うことが多いです。その中で、よくあるUXデザインのフレームワークとして5階層に分けたモデルの中の戦略から表層まで広範囲にわたって行います。リサーチをし、インタビューの後にアンケートを取り、ニーズを捉えてから実際に作り込むところまで、弊社ではデザイナーが全てにわたって対応しています。

またWeb・アプリUIデザイナーとゲームデザイナーでは関わる領域も異なってきます。ゲーム制作のプラネットスタジオさんで行っている楽しさや可愛さなどのクリエイティビティに優れたものとは異なり、ソフトウェアに関しては使いやすさなどがとても重要です。特に事業会社でソフトウェアデザイナーをやるにあたっては、短いスパンで開発が繰り返されます。その中でも広範囲にわたって、最初のリサーチから要件定義、アイディア出し、プロトタイピングやUIデザイン、仕様書作成、ハンドオフ、そしてエンジニアの方に組んでいただいたコードのテストはレビューまで一貫してデザイナーが携わる形になっています。

デザイナーの役割と範囲

Web・アプリUIデザイナーのスキルバランス

筒井 続いて、スキルベースで役割を紐解いていこうと思います。UIデザイナーに求められるスキルは、どんな領域にも関わらず、本当に沢山あります。そのため、ここではデザイナーの長谷川恭久さんという方が出されているスキルマップを活用することをおすすめしたいです。

プロダクトデザイナーのスキルマップを考えてみた/Yasuhisa Hasegawa
https://yasuhisa.com/could/article/product-designer-skillmap/

こちらはデザイナーの能力値チャートのようなものを自己評価するために作ってくださっていて、大きく「伝える能力・作る能力・分析する能力・設計する能力」という分類で自分の能力を判断することが可能です。例えば一番知らない状態を0だとすると業界をリードできるような状態を5として、自分の得意不得意を把握することができます。
もちろん一番大きく綺麗な12角形が最も良いと思いますが、人間なのでどうしても得意不得意があります。

そのため、例えば、スタートアップや人数が少ないデザイン組織の場合は幅広く能力が求められるのでチャートが丸に近い形になり、逆に大きい会社のデザインチームの場合は1つのものに特化した専門性を求められるため特定の角が大きく出た形になるなど、業界や会社の規模に合わせて求められる形状との照らし合わせや、あくまでスキルアップするための指標として使用していただければと思います。

プロダクトデザイナーのスキルマップ

プロダクトデザイナーのスキルマップ記入例

Web・アプリUIデザイナーのキャリアパス

筒井 最後にキャリアパスについてお伝えさせていただきます。かなりシンプルな道筋ではありますが、私自身はプロダクトマネージャーアシスタントからWebデザイナー、UIデザイナー、リードデザイナーのような形で進んできました。今後はプロジェクトマネージャーというプロダクトやサービスの責任者つまり意思決定をするポジションを目標として毎月を過ごしています。

Web・アプリUIデザイナーの方は、ひとまずはプロジェクトマネージャーやデザインマネージャーを目指す方がほとんどかと思います。その先は興味があれば組織作りを自身で行ったり、もう少し大きな会社で現状よりも尖った専門性を身につけて発揮したり、フリーランスとして活動したり、もっと稼ぎたいと思う方がいたり、本当に様々な道があるので自分が進みたいと思った道を選ぶことをおすすめします。

Web・アプリUIデザイナーのキャリアパス

5. 小林氏によるゲームのUIデザイナーのお仕事事情

ゲームのUIデザイナーってどんなもの?

それではWeb・アプリUIデザイナーとゲームのUIデザイナーは何が異なるのでしょうか?ゲームのUIデザイナーといえど、サービス系のアプリのUIデザイナーと大きく差はありません。ただし、ゲーム制作独自のものがあるためご説明させていただきます。

最初に、一言で言うとUIデザイナーが対応する範囲は案件や人によってそれぞれ変わります。Web・アプリUIデザイナーと違ってゲームのUIデザイナーは開発期間が非常に長いものが多いです。例えば、先ほどもお伝えしたUI・UXデザインの5段階モデルにおいてのビジュアルデザインだけでも1ヶ月〜2ヶ月以上かかります。そのため、世界観構築に携わる方もいれば、すでに出来上がっている設定に対してボタンやアニメーションを担当する方もいます。また、時と場合、時間とタイミングなどによって様々な対応範囲があります。

UIデザイナーの役割と範囲

ゲームのUIデザイナーのスキルセット

次にゲームのUIデザイナーに必要なスキルセットをご紹介します。まず開発現場で必須となるPhotoshop・Illustrator、最近ではモックアップと言われるトランジションや装飾アニメーション、ローディングアニメーションの動画サンプルに必要なためAfter Effectも必須スキルの一つに入っています。

それ以外では、Unreal EngineやUnityなどの開発ツールは、絶対どれか一つは触れるようになっておくことをおすすめします。また、絵に関して描けたほうが良いのかと不安に思われている方も多いのではないでしょうか。やはりアイコン制作に携わるため描ける人は多いですが、絶対に必要というわけではありません。

そしてこれはゲーム業界ならではかと思いますが、例えばスマホゲームやコンシューマーゲーム、ソーシャルゲームなどのハードウェアの違いや業界の違いによって求められるスキルセットもノウハウもかなり異なります。

またUI・UXデザイン全般において最近注目されているスキルとして、心理学があります。

ゲームUIデザイナーのスキルセット

ゲームのUIデザイナーのキャリアパス

それではゲームのUIデザイナーはどの範囲まで行うのでしょうか。これには大きく二つあります。一つ目は運営寄りのデザイナーで、毎月定期的なイベントが発生するようなソーシャルゲームやオンラインゲームの運営側のデザイナー。二つ目は開発寄りのデザイナーで、ソーシャルゲームやコンシューマーゲーム問わず開発に即したデザイナーです。

そこからリードUIデザイナーやシニアデザイナー、現場を束ねるマネージャー、人によってはプランナーやディレクターに転身される方もいらっしゃいます。

ゲームUIデザイナーのキャリアパス

6. 登壇者の方より

最後に、登壇者の方からトークセッションを通した感想をいただきました。

本末 英樹(もとすえ ひでき)氏

Web・アプリUIデザイナー、ゲームのUIデザイナー両方に共通することではありますが、デザイナーは比較的色々な人の間に入って情報整理を行うので、その延長線上でプランナーやディレクターに進む人が多いのはどこの業界も共通だと思いました。
特に最近はデザイナーに求められる領域がとても増えているので、どれを選択するか、自分がどれを行いたいかを決めるのが中々難しいと感じています。その中で、ご自身のやりたいことを見極めるのが大事になってくるのではないでしょうか。

筒井 大尊(つつい ひろたか)氏

本末氏の考えと同様に、私もキャリアについては毎月悩んでいます。自分の場合、苦手なところに目が行きがちなため、自己評価が低くなりがちです。しかし、そうではなく、得意なところを活かしていく先にこそ幸せなことが待っているような気がすると改めて感じました。もしも自分の得意分野がゲーム業界で活かせるのであれば、今までは無理かもと思っていた業界でも、チャンスや可能性を考えても良いと思いました。

小林 圭介(こばやし けいすけ)氏

私はお話を聞く中で知らない単語が沢山出てきたり、疑問に思うことがあったり、確かにWeb・アプリUIデザイナーとゲームのUIデザイナーは似ているところもありますが、異なる部分も当然あるので、もっとお互いに情報交換やコミュニケーションが取れると、より仕事が楽しくなると感じました。

7.まとめ


今回はWeb・アプリUIデザイナーとゲームのUIデザイナー、異なるデザイン領域で活躍するUIデザイナーの方々に、それぞれの仕事の舞台裏を熱く語っていただきました。
このオンラインセミナーを通して、Web・アプリUIデザイナーとゲームのUIデザイナーそれぞれの仕事の領域や、キャリアパスを描くことができたのではないでしょうか。このセミナーが皆さんにとっての助けとなり、未来のデザイナーの一員としての道を照らしてくれることを期待しています。