映像業界では、撮影や編集といった本来のクリエイティブな作業よりも、資料作成や調整業務など「裏方業務」に多くの時間が奪われていることが明らかになった。エンタメ業界に特化したマッチングプラットフォーム「CAST+(キャスタス)」を運営する株式会社Virtual Wall(東京都港区、代表取締役・齋藤一篤)が、映像制作の業務実態について行った調査で判明した。
調査は2025年11月、幕張メッセで開催された「Inter BEE 2025」に来場した映像業界従事者122人を対象に実施された。その結果、最も負担が大きい業務として「撮影準備(香盤表・資料作成)」が72票で最多となり、「編集・赤入れ・修正対応」(54票)、「企画のすり合わせ・要件定義」(52票)が続いた。自由度の高い創作業務に充てられる時間は全体の約2割にとどまり、残りは事務処理や調整連絡といった周辺業務に費やされているという。
また、現場の改善要望では「コミュニケーションのスピードアップ」(43票)、「ギャラ基準や契約の明確化」(41票)、「情報の見える化・一元管理」(39票)が上位に挙がった。アナログな情報共有の慣習や分散したデータ管理に不満を感じる声が多く、効率化への期待が高い。
キャスティング業務に関しても同様の課題が浮かんだ。「返事が遅い」「条件交渉に時間がかかる」「タレント情報の整理が不十分」といった声が目立ち、いずれも連絡や情報管理の煩雑さに起因している。人と人の信頼関係を重視する業界文化の中で、デジタル化との折り合いをどうつけるかが今後の焦点となる。
Virtual Wallが提供する「CAST+」は、キャスティング業務を効率化するためのツールとして開発された。制作会社と芸能事務所をオンラインで直接つなぎ、候補者検索から進行状況の管理までを一元化できる。これにより、従来の調整作業を大幅に削減し、クリエイターが本来の創作活動に集中できる環境づくりを目指している。
同社は、今後も現場の声を反映した機能強化を進め、映像業界全体のデジタルトランスフォーメーションと生産性向上に貢献していく方針である。




