韓国・富川市で開催された第29回プチョン国際ファンタスティック映画祭(BIFAN)において、串田壮史監督による短編映画『ラストドリーム』が、AI部門で最高賞となる「BEST AI FILM」を受賞した。英語音声による約10分間の本作は、脚本から演出、音響設計までAIが深く関与した、国内初の本格的AI映画として注目を集めている。
BIFANは、アジア最大級のジャンル映画祭として1997年にスタートし、ホラーやSF、スリラーなどの“ファンタスティック映画”を世界中から集めて上映・表彰している。今年のAI部門では、AIが意識を持ち始める時代を見据えた多様な作品が並ぶ中、『ラストドリーム』が詩的な映像表現と哲学的テーマで高く評価された。
審査員は同作を「宇宙の夢そのものであり、観る者を現実から解き放ち、時空を超える旅へと誘う」と評し、AIを通して生命と時間の本質に迫る深い洞察があるとコメント。作品の映像美と、まるで神の視点から人類の進化を見つめるかのような視座が、選考作品の中でも際立っていたと称賛した。
監督を務めた串田壮史氏は、AI映像の可能性について「映像作家は自身の記憶をスクリーンに投影する存在であり、AIはすべての人々の記憶の集合体。その両者が出会うことで、映像は作家性と社会性を一層深める」と語り、今後もAIとの協働による映像制作に意欲を示している。
『ラストドリーム』は、老舗映像制作会社ピラミッドフィルムが設立した新組織「PYRAMID AI」による初のプロジェクトである。PYRAMID AIは、生成AIを活用した映像表現の新境地を切り拓くべく、映像制作やAIプロンプト設計、生成支援などを行っており、同作はその先陣を切る作品として位置づけられている。
国内初上映は、7月25日に埼玉県川口市で開催されるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて実施予定。同映画祭では、PYRAMID AIが手がけた5本のAI短編映画が上映され、『ラストドリーム』もその一つとして登場する。
串田監督は1982年生まれ、大阪出身。ピラミッドフィルムに所属し、2020年の長編デビュー作『写真の女』では国内外の映画祭で40以上の賞を受賞。その後も『マイマザーズアイズ』(2023)、『初級演技レッスン』(2024)など話題作を発表し、AI映像表現における最前線に立つ存在として高い評価を得ている。




