TBSテレビとWOWOWが共同で開発した映像伝送ソフトウェア「Live Multi Studio(LMS)」が、第51回放送文化基金賞の放送技術部門を受賞した。公益財団法人放送文化基金が主催するこの賞は、放送文化や技術分野で優れた業績を挙げた個人や団体を表彰するもので、専門家や有識者による審査のもと授与される。

LMSは、2024年3月に無償提供が開始され、同年11月より有料プランが導入された。一般的なインターネット回線を使いながら、放送品質の映像伝送を可能にする独自プロトコルを採用しており、開放ポート不要の簡便な接続、超低遅延伝送、制御信号の送受信などを特徴としている。TBSが取得した特許技術「Multi Latency」(特許第7431207号)を活用した独自機能も搭載し、リモートプロダクションやスマートフォンによる簡易中継といった幅広い用途で導入が進んでいる。

今回の受賞理由としては、従来、遠隔地にあるカメラの操作などで問題となっていた制御信号の遅延を、独自開発の伝送方式によって克服した点が高く評価された。これにより、海外で行われるスポーツイベントの中継でも、国内から現地機材のリモート操作が可能となり、制作効率の大幅な向上が実現している。実際に「世界陸上オレゴン」や「デビスカップ」などの中継においても活用され、その技術力と実用性が評価される結果となった。

LMSは現在、放送業界を中心に利用が広がっているが、その性能の高さから、VTuber事業、メディアアート、イベント配信、さらには機器の遠隔制御など、他業界からの関心も集まっている。WOWOWおよびTBSは、今後もアップデートを重ね、さらなる機能強化を図るとしている。

このほかLMSは、2024年日本民間放送連盟賞 技術部門で最優秀賞を受賞したほか、第1回テクニカルディレクションアワード デジタルサービス部門銀賞、映像情報メディア学会 技術振興賞(進歩開発賞)など、多数の技術賞を獲得しており、業界内外で注目を集め続けている。