2017年2月、3DBiz研究会開催の「新春公開セミナー」。テーマは、ずばり「VR/AR/MR&3D」。

長年3D映像やCG制作に関わってきたクリエイター、そして医療現場でいち早くVRやARを活用してきた最前線の医師が、実例をもとにリアルな講演を行いました。

VR(Virtual Reality【バーチャル リアリティ】:「仮想現実」)
コンピュータ上に人工的な環境を作り、実際にそこにいる様な感覚を体験できる技術。AR(Augmented Reality【オーグメンテッド リアリティ】:「拡張現実」)
現実空間を主体として付加情報を表示させ、現実世界を拡張する技術。

MR(Mixed Reality【ミックスト リアリティ】:「複合現実」)
CGで作られた人工的な仮想世界に現実世界の情報を取り込み、融合させた技術。

2017年2月16日(木)、東京都港区の東海大学高輪キャンパスにて、3DBiz研究会が開催した恒例の「新春公開セミナー」。今年のテーマは、クリエイティブ業界で今最も熱い「VR/AR/MR&3D」です。

これまで、長年3D映像制作に携わってきた3DBiz研究会と3Dコンソーシアムなどが一体となって3DVRのコンテンツを提供する「StageVR(ステージ ブイアール)」を開始しました。

4K、8Kの高解像度映像とハイレゾVR音響を組み合わせたサービスは、様々な分野での活用が見込まれています。3D・CG・4K・8K からVR、AR、MR。医療現場での積極的な活用が始まっている取り組みも含めて、実際の講演の一部をお伝えします。

3DBiz研究会開催の「新春公開セミナー」スタート

泉邦昭 氏(3Dコンソーシアム副会長)

泉邦昭

泉邦昭
2009年、ハリウッドで3D変換会社「StereoD社」を設立し、「アバター」「タイタニック」「アベンジャーズ」「スターウォーズ」など、多くのハリウッド3D映画に携わる。

3D制作に長年携わってきた泉氏は、その経験と実績を活かして「VRを世の中に広めたい」と話し始めました。

「VR進展の課題は3つ。1つは作り方によってはVR酔いを感じてしまうこと。2つ目は高品質のVRの実現には高額な機器や設備が必要になること。そして最後は、360°で見られる実写映像コンテンツが足りないということ」を挙げられました。

解決手法として提唱したのが「StageVR(ステージ ブイアール)」。「劇場などのステージ上に、生で撮影した映像を取り入れられる」というこのサービスは、「座席という定位置で鑑賞が可能で、スマートフォンで見られて既存の3Dカメラや映像が使用出来るので、既存のビジネスモデルの上に成り立たせることが出来る」ということでした。

「目指す世界は、リアルな世界を3DCGと融合させ、そのステージを遠隔地で再現できるようにする。そして、新しい表現芸術を生み出して、高品位のVRを実現・デザインしていきたい」と意気込みを話されました。


渡部健司氏(専修大学ネットワーク情報学部 特任教授)

渡部健司

渡部健司
CG、VFXのプロデューサー、ディレクターなどとして映画、CMなどで活躍。2015年制作のニューバランスの4K3D実写CG合成映像「WORK IN PROGRESS」は各方面から高い評価を受ける。

4K3Dでのコンテンツ作りに、果敢にチャレンジしてきた渡部氏。

この日紹介した「WORK IN PROGRESS」のメイキング映像では、4Kでの実写とCGの合成による新しい表現方法や演出への挑戦について語られました。

4K3Dシアターでの公開実績もある渡部氏だからこそ「VRというジャンルが盛り上がっているので、実写と3DCGを組み合わせはもう不可欠」と言う言葉には重みがありました。「WORK IN PROGRESS」では、まず「マクロ撮影への挑戦を行った」と。「3Dで臨場感や材質感を感じるような映像制作を目指した」と話されました。

また、「1ループ16秒で制作し、それを繰り返すことで制作の省力化に成功」という挑戦は、制作で重要となる時間とコスト削減の大切な手法と感じました。そして、「コンバージェンス(RGBの電子線からの一点集中)とパララックス(視点の違いにより対象点が見える方向が異なる視差)を再認識した」とも。

これで「実写で出来なかったことをCGで再現しよう」と、4K3Dでのコンテンツ制作の事例をどんどん作って進化させ、3DでのVR映像制作にも進出したいという意欲を語られました。


杉本真樹氏(医師、医学博士、国際福祉大学大学院医療福祉学研究科 准教授、
株式会社Mediaccel 代表取締役兼CEO、HoloEyes株式会社 取締役兼CEO)

杉本真樹

杉本真樹
1996年帝京大学医学部卒業。専門は外科学。カリフォルニア州退役軍人局Palo Alto病院客員フェロー、神戸大学大学院医学研究科消化器内科 特任准教授を経て現職。2014年Apple社Webにて世界を変え続けるイノベーターに選出。

医療分野では10数年以上前から、「OsiriX(オザイリクス)」という3Dに対応した医療用画像処理ソフトが無償で配布されてきました。

CTで撮影した人体内画像を活かすということが早くから取り組まれてきたために、「エンタテインメントの分野に比べてVRが進んでいる」と杉本氏。「視角だけでなく、感覚を刺激するのがVRで、3Dにプラス何の感覚を体験させるかが重要」と話し始められました。

医療の現場では、ベテラン医師が若手の医師たちに、VRのヘッドマウントディスプレーを使って情報共有しながら、手術前のカンファレンスを行っているということも。その様子が、実際の動画で紹介されました。事前にVRでの手術を体験することで、若手医師が緊張せずに手術に臨めるというメリットがあるそうです。

ウェアラブルのARデバイスが進んでいる事例として、使用者の網膜に直接レーザーを照射してAR映像を見せる眼鏡「RETISSA(レティッサ)」も紹介。

また没入型のホログラフィック3Dディスプレイシステム「Zspace(ジースペース)」によって、3DCGデータをPC画面などから飛び出させて見せることが可能になったり、マイクロソフトが開発したARのHMD「ホロレンズ」で、空間上に体内の一部をCGで表示して参加者が体験したりと、医療現場の最先端も紹介されました。

まとめ

今回のセミナーを通して、技術は日々とてつもないスピードで進化していることを改めて感じました。

3DCGがVRやAR、MRと結びつき、人間の五感に直接訴えかけられることを活かして、エンタテインメントの世界での新しい演出方法や見せ方をクリエイターが肉づけしていけば、この新しい技術はさらに猛烈なスピードで進化するということが分かる貴重なセミナーでした。

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