動画配信サービス「ABEMA」が制作したオリジナルバラエティ番組『国境デスロード』が、第51回放送文化基金賞において、エンターテインメント部門の奨励賞を受賞した。

この賞は公益財団法人 放送文化基金が主催し、放送文化の発展と向上に寄与した優れた作品や人物を顕彰する目的で1975年に創設された。今回の第51回では、2024年4月1日から2025年3月31日までに放送・配信された作品を対象に、ドキュメンタリー、ドラマ、エンターテインメント、ラジオの各部門で最優秀賞、優秀賞、奨励賞が選出された。

受賞作の『国境デスロード』は、2024年12月から全8回にわたり放送されたドキュメントバラエティ番組である。演出を手がけたのは、TBSの番組『不夜城はなぜ回る』などで知られる大前プジョルジョ健太氏。番組では同氏が自ら世界各地の国境地帯に足を運び、命を懸けて国境を越える人々の現実に密着。その背景にある社会問題や個人の事情に焦点を当て、なぜ彼らが命の危険を冒してまで移動するのかを描いた。

シリーズ最終話では、移民の往来が絶えないメキシコとアメリカの国境地帯を取材。「世界一忙しい国境」とも呼ばれるこの地域では、政治情勢の影響を受けた生活の不安定さが浮き彫りとなった。トランプ前大統領の再選が取り沙汰される中、移民たちは「国境が1日だけ開く」という噂にすがり、“トランプの壁”に向かって突き進んでいく。その過程を記録した映像は、視聴者に大きな衝撃を与えた。

番組の総合演出を務めた大前氏は、「チームで取り組んできたことが形となって現れ、非常に嬉しい。取材に協力してくれた皆さんに深く感謝したい」とコメント。「ニュースで見る『移民』や『不法滞在』という言葉が、顔や名前のある存在として感じられるようになれば」と語った。

「ABEMA」は2016年の開局以来、オリジナルバラエティをはじめ、ニュース、アニメ、スポーツ、恋愛リアリティショー、将棋、麻雀など多彩なジャンルを配信し続けている。今後も「ABEMA」ならではの映像表現を追求し、クリエイターと視聴者双方にとって魅力あるコンテンツづくりを進めていく方針だ。